国際山岳看護師 小林美智子さんインタビュー

安心して着続けられるドライレイヤーは、私の登山に必要不可欠、国際山岳看護師・小林美智子さんインタビュー

国際山岳看護師と登山ガイドの資格を持ち、「山ナースガイド」として、登山を楽しみたい人たちをサポートする小林美智子さん。山岳看護師としての活動するなかで登山者にもっと知ってほしいと感じる汗冷えのリスク、そしてご自身が愛用しているファイントラックのドライレイヤー®についてお話をうかがった。

小林さん愛用のブラタンクトップ。「快適なので、身につけて実感してほしい!」

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すべての知識と経験が生きる職業

ライター西野俶子(以下、西野):
まず、山岳看護師という職業についてうかがいます。小林さんがお持ちの「国際山岳看護師」の資格ですが、登山に特化した看護師の資格ということですか?

国際山岳看護師小林美智子氏(以下、小林):
山岳看護師とは「山岳で医療活動をする看護師」のことをいいます。国際山岳看護師は、日本登山医学会が認定する国際的な制度で、私は2018年に資格を取得しました。取得にあたっては、山岳医療の知識だけでなく、登山や救助の技術・知識も必要となります。雪山やクライミングなども含めた総合的な登山技術、救助にあたってはロープワークなども求められます。現在、日本国内で認定を受けている国際山岳看護師は10名です。

山岳医療パトロールも随時行っている。怪我をした登山者に遭遇することも

西野:
看護師の要素に加え、ハイレベルな登山技術も必要な資格なのですね。登山は学生時代から山岳部などで活動されていたのでしょうか?

小林:
いえいえ、実は登山歴は7年ぐらいなんですよ。もともとは年に1回、夏に尾瀬に歩きに行くくらいでした。ただ、登山を始めてからは年間80日程度は山に入っているので、密度はかなり濃いと思います。

西野:
7年!それはとても意外です。

小林:
もとはバイクに乗っていて、国際ラリーに参戦したりトライアル競技もしていたのですが、家庭の事情などもあってできなくなってしまって。
山なら天気さえよければ1日でも楽しめると思ったんで、山岳会に入りました。
さらに山岳ガイドの澤田実さんのガイド登山で、登攀の技術を学び、どんどんクライミングにのめり込んでいきました。本当に…、当時はすべての休日を山に注ぎ込んでいましたね。2年目でマッターホルンに登りましたし、どんどん海外の山の経験を積んで、近い将来エベレストにも登るつもりでした。

2015年8月、マッターホルンに登頂。本格的に登山を始めて2年目のこと

西野:
登山への熱が一気に燃え上がる感じですね。その頃から山岳看護師になることが視野に入っていたのでしょうか?

小林:
移籍した山岳会に、国際山岳医の師田信人先生が在籍しておられて「ロープワークはある程度できるし、体力もあるし、看護師だし、山岳看護師になったらどう?」と勧めてくださったことはあります。
でもそのときは「そんな資格があるんだ」と思った程度で、自分がなることは全く考えていなかったです。考えるきっかけになったのは、けいさんの遭難、ですかね。

西野:
アルパインクライマーの谷口けいさん(2015年12月に大雪山系で遭難死)ですね?

小林:
女性のアルパインクライマーとして、あこがれの方でした。報告会でお目にかかったり、少しお話もさせていただいたりしていたので、本当にショックでした。
知っている方が山の事故で亡くなったのは初めての経験でしたので、他人事でないことが理解できて怖くなったのもあると思います。それまではひたすら上しか見ていなかったのが、立ち止まって考える時間が増えました。
周りを見たり後を振り返ったりするなかで、自分の登るべき山、登りたい山が「エベレスト」から「山岳看護師」へと変わっていきました。

西野:
「山岳看護師」が、自分にとっての「山」として見えてきたのですね?

小林:
もともと災害支援に携わる看護師として活動をしたり、救命救急医療の現場にもいましたので、山岳看護師は、看護師としても、クライマーとしても、これまでの経験や知識をすべて生かせる職業だと思いました。けいさんのおかげで、そのことに気付けたのです。自分が登るべき「山」を見つけることができたと思っています。

認定を受けてからも、訓練会などで技術や知識のアップデートは欠かせない

実はよく知られていない汗冷え

西野:
小林さんは、特定の病院に専属していない、フリーの「山岳看護師」として、富士山や北アルプスなどの救護所にも入られるのですよね?

小林:
はい。夏山シーズンは山岳救護所に常駐していることが多いです。3年前からは、山梨県から委託を受け、富士山吉田口五合目にある山岳救護所で勤務しています。ここは看護師だけで運営している救護所です。下山中に怪我をした方、体調が悪くなった方のほか、高山病になった観光客が運び込まれることもあります。
冬は八ヶ岳の赤岳鉱泉で、山岳医、山岳看護師の有志で医療活動を行っています。救護所では登山者だけでなく、登山者を引率するガイドさんや、山小屋のスタッフなど、山で働く方々の健康管理にも気を配っています。

夏は富士スバルライン五合目の救護所に常駐。登山者から観光客まで、年代も国・地域もさまざまな人が訪れる

西野:
お医者様や看護師さんが山に常駐してくれるというのは、登山者にとっては有り難いことですね。夏山シーズン、実際に救護所を訪れる方はどのような症状でいらっしゃるのでしょう?

小林:
高所なので高山病の症状を訴える方が多かったです。あとは、冷えで体調を崩される方も多いですね。

西野:
冷えですか? 夏山シーズンですよね。天気が激烈に悪い時とかに?

小林:
悪天候じゃない真夏でも、衣服が汗で濡れた状態で風に吹かれたりすると、冷えによる低体温症が起こります。水の熱伝導率は、空気の熱伝導率の24〜25倍。つまり、汗や雨などで濡れたウエアが肌に貼り付くと、乾いたウエアの24〜25倍の熱を奪うということです。風が吹いていればさらに熱が奪われ、体温が下がっていく…、ということになります。

西野:
たしかに真冬でなくても低体温症の死亡事故は聞きますね。

小林:
汗冷えなどで体温が下がり、深部体温が35度以下になった状態を「低体温症」といいます。人間の平均的な深部体温は37度ですので、たった2度下がっただけでも、命が危険にさらされている状況になります。
冷えにより血管が収縮し、血液の循環が悪くなると、血液によって運ばれていた酸素や水が脳に行き渡らなくなります。これが原因で脳が酸欠状態になり、意識障害が現れ、寒いから上着を着て身体を温めようなどの行動判断がうまくできなくなります。
また、体温をつくるのは筋肉なんですよね。寒くて身体が震えるのは、熱を産出しようとする筋肉の動き。しかし筋肉に酸素が行き渡らなくなると、震えることもできなくなってしまいます。

低体温症の説明をする小林さん。「低体温症」という言葉を知っていても、それを自分に起こりうることと考えている人は多くない

西野:
冷えって怖い…。体温は下がり始めると進行が速く、低体温症はあっという間に悪化すると聞いたことがあります。

小林:
そうなんです。たかが汗冷えと思われがちですが、低体温症が悪化すれば死に至る可能性があります。とても怖いですよね。
でも皆さん、その怖さをあまり理解されていないのかなあって思うことが多いです。ガイド登山のときなど、かなり厚着をして歩いておられて、休憩のときに「わぁー、今日はたくさん汗をかいて気持ちがいいわ!」という方がいらっしゃいます。
どのくらい汗かいているのか? ウエアは濡らしてないか? お客様に笑顔で確認しながら、実はヒヤヒヤしています。

西野:
初心者の方だと、汗冷えのことなんてご存知ないですよね、きっと。

小林:
登山の経験がある方でも、汗冷えの怖さ、汗冷えを防ぐ手段が分かってない方がいらっしゃいますよ。
9月に甲斐駒ヶ岳の黒戸尾根をパトロール中、岩稜帯で低体温症になりかけている登山者に遭遇したことがあります。数名で山麓から七丈小屋に向かう途中だったそうで、「身体に力が入らず動けない、寒い」と訴えられていました。お話をうかがっていくうちに、シャリバテと脱水に原因があると判明。行動食と水分を摂ってもらうことで、身体が熱を産出できるようになり、何とか自力で行動ができるようになりました。
その方は、アウターの下に厚手のダウンジャケットを身に着けていて、そのダウンが汗でびっしょり濡れていました。バテて動けなくなっているところに、濡れたダウンで体温を奪われ、身体がどんどん冷えていたんですね。

ずっと着続けられる安心感

西野:
汗冷えのリスクを抑えるウエアとして、定番のアイテムとなっているのが、ファイントラックのドライレイヤー®ですが、小林さんも使っておられるとうかがいました。

小林:
私が山に入るとき、季節を問わず必ず身に付けるのがファイントラックのドライレイヤー®です。
登山では「体温を守る」ことが重要。低山なら体温が上がりすぎないようにし、高所や寒冷地では体温を奪われないようにすることが大切です。ファイントラックのドライレイヤー®は、強力な撥水性を持つ極薄のメッシュ生地。汗は素早く放出することができ、生地の撥水性により濡れ戻りを防ぎ、肌をドライに保つことができるのが魅力です。

女性用アンダーウエアのラインナップも豊富なドライレイヤー®

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西野:
どんなに吸汗速乾性のあるウエアでも、汗をかけば肌にぺっとりと貼り付いて不愉快な上、身体が冷えますよね。あの「冷たいぺっとり感」がないのは大きな魅力です。

小林:
ずっと着用していても汗の臭いが気にならないというメリットもありますよね。ガイド登山や講習会に参加される方には、とくに初心者の方、年配の方こそ、安心して使える高機能ウエアとしてファイントラックのドライレイヤー®をおすすめしています。よい装備、よいウエアを身に着けることは、遭難のリスクを抑えることになります。

西野:
小林さんが考える、ファイントラックのドライレイヤー®の魅力、長所って何でしょうか?

小林:
そうですね…。「着っぱなしでいい安心感」です。登山は長時間歩き続けなくてはならないので、ずっと着用していても安全・安心なものが求められます。
登山中に汗をかいてウエアを濡らしてしまったとき、濡れたウエアを着替えるというのは、実はハードルの高い行為です。行動中、女性はとくに山の中で着替えるのは心理的に抵抗のある人が多いでしょうし、山小屋の中でも着替えのスペースが十分に確保されているとは限りません。肌に一番近いウエアがドライレイヤーなら、多少汗や雨でウエアが濡れても肌をドライに保ち、汗冷えのリスクから身を守ってくれます。

西野:
ドライレイヤー®は、長袖、半袖シャツやタイツ、下着類などさまざまなアイテムがラインナップされています。さらに温度域によりクール、ベーシック、ウォームの3種類があります。小林さんが愛用しているのはどのアイテムでしょうか?

小林:
1年を通じて使っているのは、現行のタイプだとベーシックにあたる、スキンメッシュ®のブラタンクトップとショーツのセットですね。着心地がよくて、匂いも気にならないので、気に入っています。
救護所や学校登山など長期で山に入る時は、替えを1セット持っていっても軽くてコンパクトになるので気になりません。
夏山では、ブラタンクの上に、スキンメッシュ®(ベーシック)の半袖と、現行のウォームにあたるアクティブスキン®の長袖を、行く場所の標高や用途によって使い分けています。
沢登りに行くときはもっぱらウォームですね。ウエアが濡れた状態で詰め上がって稜線に出て、長時間歩いて下山、なんてことが沢登りではよくあるので、夏でもウォームが快適です。

「コンパクトに畳めて軽いから、もう一つ予備で持っていくのも苦にならないんですよね」と小林さん。

西野:
沢登りでは濡れによる冷え対策とともに保温も重要ですから、ウォームは心強いです。冬、雪山でもドライレイヤー®は必須ですよね。

小林:
雪山登山のときも、上半身、下半身ともにドライレイヤー®を着用しています。私、ものすごく汗かきなんです。ラッセルなど運動量がものすごく多い時、かいた汗をすぐ放出してくれて濡れ戻りがないドライレイヤー®は、本当に心強い味方です。あと、ドライレイヤー®は生地の伸びもいいですから、脚の動きもスムーズでいいですよね。

プライベートではアルパインクライミングや沢登り、アイスクライミングなどを好む小林さん。沢登りではウォームが欠かせない

西野:
雪山は気温が低く強風にさらされるから保温が大切な一方、ラッセルなど運動量の多いシーンでは大量に汗をかきます。保温と汗処理に長けたウォームが使い勝手がよく、快適だと思います。

小林:
山っていろいろな状況が起こりうるじゃないですか。私は山に入ったら、自分のことだけでなく傷病者のこと、お客様のこと、山で働く人たちのこと…、いろいろな方に目を配らなくてはなりません。だからこそ、自分のことは常に万全にしたいんです。
山に入る時は常に、ファイントラックのドライレイヤー®。着っぱなしでいい、間違いのないウエアで、安心して山に向かい合えているのだと思います。

インタビュー終了後、熱心に新商品のチェックをする小林さん。「見ると欲しくなっちゃいますよね…」

小林美智子 (こばやし みちこ)

山岳看護師、日本山岳ガイド協会認定登山ガイド。2018年に国際山岳看護師の資格を取得し、現在はプロの山岳看護師として山岳地域での医療活動や、安全登山の講習会、ガイド登山などを行う。

西野淑子 (にしの としこ)

山岳ライター、日本山岳ガイド協会認定登山ガイド。関東近郊を中心にオールラウンドに山を楽しむ。著書に『東京近郊ゆる登山』(実業之日本社)。

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