毎年3月に、ロングトレイル好きの友人と100キロほどのロングトレイルを夜通し走り、そのシーズンのロングレースに向けたギアチェックや自分の体の反応を確認するという旅をやっている。さて、今年はどこに行こうか。。。考えている時に、ふとトレラン雑誌の記事が目に留まった。知り合いのランナーKさんが、京都から三重の実家まで2日間に分けて、山越えで走って行った記録だった。そうだ、三重へ行こう!
大好きな叔母さんが三重県亀山市の関宿に住んでいます。
関宿は町並み保存されていて凄く歴史を感じる良いところ。過去2回一緒にロングルートを走った友人のSさんは大の歴史好き。東海道五十三次の47番目の宿場である関宿への旅は、歴史好きにもたまらないはず。しかも関宿の近くには”ひつまぶし”の美味しい「初音」といううなぎ屋さんがある。完走のご褒美はこれだ!
スタートは京都の出町柳駅。鈴鹿峠まではKさんが辿ったルートを進み(詳細はこちらのブログへ>>)、その先は「山と高原地図」にあるルートで関宿を目指しました。
当日は結構しっかりの雨。
15:00ごろから雨が止む予報だったので、出発を若干遅らせて13:00過ぎに変更。序盤は良く知った京都の山だし、鈴鹿山脈に入るまでは特に心配する箇所もないため、雨で良いギアテストができると思って、どちらかというとワクワクして出発しました。
私は冷えに弱いので、スキンメッシュのカップ付きタンクを着用し、その上に薄手の半袖&ラピッドトレイルのアームカバーをつけて、エバーブレスフォトンのジャケットを羽織りました。下はランスカにハイソックスでその上からフォトンのパンツを履いてスタート。
手袋はラピッドラッシュグローブの上にエバーブレストレイルグローブの2枚重ねです。
これで夕方ごろ雨が上がったら、夜の気温低下に備えて着替えようと、ザックにはメリノスピンライト ジップネックと寒くなった時のためにスキンメッシュタイツ、フラッドラッシュEXPグローブ、下着の換えをパッキングしていきました。
ソックスはどうせ換えても靴がびしょ濡れなら意味がないだろうと思い、替えは持っていきませんでした。
雨は思った以上に降りましたが、大津のコンビニにたどり着いた頃には上がっていたので、夜に備えて早々に着替えることにしました。
エバーブレスフォトンはレインウエアとして非常に優秀で、速乾性も優れているので、雨がやんでからコンビニにたどり着くまでには乾いていました。なので、着替えたあとに濡れたジャケットを羽織るという嫌な思いをせずに済みました。
メリノスピンライトは程よい保温性と調湿作用があり、汗をかいても冷たい感じがしません。コンパクトなので、100マイルレースなどでも保温着として使用しています。
また100マイルレースのレギュレーションに必ずあるのが、タイツなど足全体を覆う物。
でもパッキングを軽量&コンパクトにしなければならないので、使うかわからないのにあまり大げさなものは持っていきたくありません。でもいざ悪天候になった時、ちゃんと保温性がないとこれまた意味がありません。色々試した結果、スキンメッシュのタイツが最高です。
単体使用は想定しておらず、レインパンツとの組み合わせかランスカとの組み合わせで使用します。今回はランスカも濡れて冷たく感じたので、ランスカは脱いで、スキンメッシュタイツとレインパンツにしました。
そしてグローブも厚手のものに変えて、再出発です。
しかし、想定外にまた雨が降り始めました。そして山の中は結構蒸します。でもレインのリンクベントと前ジッパーをあけて温度調節をしながら、脱ぎ着することなく進むことができました。
若干汗ばんだり、濡れたりもしましたが、全く冷たい感じはなかったです。
50キロ地点の最後のコンビニで休憩と補給を済ませて外に出ると、風が強くなってきていてかなり寒い。寒いときは走るに限る! 容赦なく走ります。
紫香楽宮跡駅を横切るとき、Kさんが「ここからなら電車で帰れる・・・」みたいなことをつぶやいていましたが、休んだ後は身体の動きも悪いし、大体そういう気分になりやすいので、特に取り合わず、「もう電車はないでしょう」と適当なことを言って先に進みます。が、すぐ直後に汽笛のようなものが(笑)
その後の山中では、少しルートをはずしてしまい、少しエキサイティングな徘徊をしてルートに復帰しました。4人で「あっちはどうだ?」「こっちがよさそう」などと言いながら、元気な人が先にまわって様子を見に行ったり……。こういうの、なんだかワクワクするんですよね。映画「スタンド・バイ・ミー」みたいな冒険をしてる気分。
外したルートはほんのちょっとなんだけど、そういう刺激がみんなを元気にしたようで、足取りも軽くなりました。
しばらく走ると、三重県伊賀市の看板が!
「おーついに三重県まで来た!」
ロングトレイルではいつも朝方に眠くなるのですが、今回は何故か夜9:00ごろから既に睡魔に襲われていました。単調なところで数回睡魔に襲われながら、柘植(余野公園)に向かうトレイルを走っているときのことです。
しばらく元気のなかったKさんが、別人のようにすごいペースで走り始め、みんなを先導してくれます。私もすっかり楽しくなって、一生懸命ついていきます。
「一体どうしたんだろう? もしかして拓植でやめる気じゃぁ・・・」
柘植(余野公園)に到着し休憩していると、Kさんが「ここから険しい鈴鹿山脈に入らず、東海道自然歩道で関宿まで行き、向こうで合流する」と言い出した。
やはりあの走りはラストランのつもりだったのか!
こんな時、「お疲れ様、じゃあそうしたらいいよ」と言うのも優しさなのかもしれないけれど、私は予定コースを走りぬいた3人の感動と、エスケープをした1人とのゴール時の気持ちのギャップを想像した。
体調が悪そうだったり、食べ物が尽きそうだとしたら、安全のためにもエスケープさせるか、万一に備え関宿の叔母の家で待機してくれている妹に車で迎えに来てもらうことを選択したと思うが、どうみてもKさんはまだ元気そうで、ただ疲れて集中力が切れているだけ。
それならみんなでこの先の険しい山も越えて、一緒にゴールしたほうが絶対いいに決まっている。感動の度合いが違い過ぎて、絶対にエスケープしたことを後悔すると思ったので、険しい山ならそれほど走れないし、ペースも落ちるから「ゆっくりいくので大丈夫ですよ!」と励ましてみんなで先に進んだ。
その先は私の大好きなパートでした。
手を使ってよじ登るような個所やロープの張った個所が沢山出てきて、全く眠気も襲ってこず、Tさんとどんどん先に進みます。
後方にSさんとKさんのヘッドランプがちらちらしていますが、稜線上は風が強く非常に寒いため、止まったらこっちが低体温症になりそうです。先に進んで、風の当たらない場所を見つけたらそこに身を隠して待つということを繰り返していました。
それでもみんなで一緒にゴールしたかったのです。
待たなきゃいけなくなることはわかっていたけど、やっぱり同じ感動を共有したかったのです。
そうして唐木山あたりでようやく空が白み始めました。
朝日が昇るのを稜線から眺め、4人でその美しさにしばし言葉を失いました。
Kさんもすっかり元気になっています。そして高畑山に到着したときのその眺望の良さに、すべて報われた気がしました。もう長い登りは無いという安堵感もありました。
快適な下りを楽しみながら、鈴鹿峠に到着!
そしてここからは、地図通りに関宿まで行く予定でした。が、そもそも山が好きな私にとって、ロードを長く走ってフィナーレを迎えるのは不本意……。
するとTさんが「山をつないで関ロッジまで出られるルートがある」と言うではありませんか!
立て看板の地図を見ても行けそうです。
Kさんは足裏に大きな水ぶくれが出来ており、痛そうでしたが、まぁロードを走るより山道の方が足裏にも優しいだろうと思い、また単に自分の中で山以外の選択肢がなかったので、特に相談もせず「いきましょ~」とまた山を登り始めました(笑)
結果は大正解!
低い山なのに凄く高所感のあるいいトレイルが続き、フィナーレを飾るにふさわしい山道で関ロッジに到着しました。
確か子供の頃に連れてきて貰ったことがあるなぁ・・・などとノスタルジーに浸りながら、今は閉館してしまった寂れた建物の横を抜け関宿へ。
東海道五十三次の宿場町の町並みが残る、味のある街道を叔母の家を目指して走ります。
そして4人で感動のゴール!
妹や甥っ子達、叔母が出迎えてくれます。
終わってみると100キロはあっという間。4人でワイワイ話しながら、眠気や寒さと戦いながら進んできた20時間は、信じられない早さで終わってしまいました。
みんな大きなケガなく最後まで走りきれたこと、様々な感動を共有できたことに感謝しながら、ご褒美のひつまぶしを頬張り、長かったような短かったようなロングトレイルを振り返る時間は格別でした。そこには、永い旅をともにした仲間の笑顔が輝いていました。
そして叔母の家に戻り駐車場の日めくりカレンダーに目をやると……。
「ここまでと思ったらそこまで」
ロングトレイルの醍醐味を象徴するかのような一言。
自分の限界を決めるのは自分自身。
ここまでと思わなければ、私たちはどこまでも自分の脚で旅することが出来るのかもしれない。
(ご褒美のビールとひつまぶし、そして共に走った仲間たち)
100kmの行程を一緒に駆けたレインウエアは、ヨコストレッチ130%の伸縮性で動きをじゃましない、finetrack独自素材の一着。雨風と寒さから身を守りながら、雨中の行動でも優れた透湿性を維持してくれます。
マルチアクティビティプレイヤー
丹羽 薫
国内外の大自然と会話をしながら、マウンテンランニング・登山・バックカントリースキーと、その瞬間のベストな遊びで「完全な自由」を探求するマルチアクティビティプレイヤー。
その活動は同性から高い支持を集める。
また自他共に認める愛犬家の一面も。