大自然はバリアフル(笑) それを超えるのが、おもしろい。
ありのままの自然に魅了され、引き寄せられてしまうのは、健常者であろうと障がい者であろうと関係ありません。
どうバリアを超え、楽しむか。簡単でないことは自然の醍醐味だし、それを超えた先にこそ息をのむような出会い、発見が待っていると思うのです。
私が子ども達との登山体験で知ってしまったのは、「大切な人たちと一緒に叶える、一生ものの時間」。そして、「今を生きてるという実感」。
自然の中にしかない空気、景色、音、温度、匂い、五感をフルに使って感じる体験を、大切な人たちと一緒に共有して楽しむことの面白さを、もっと多くの人たちにも知ってほしい。
そのためには、まずは私自身が「楽しまないと」(笑)と、調査も兼ねた体験をこれまで各地で行ってきました。
その中の1つが、長野県の「上高地」(2010年10月)。
上高地のシンボルスポットである「河童橋」までならスロープもあって日常用の車いすでも気兼ねなく行けます。
でも私が見てみたかったのは、そこから先の世界。明神池、大正池、徳沢、横尾。
普通の車いすでは難しい中で活躍してくれたのは、アウトドア用水陸両用の車いす「HIPPOcampe」(フランス製)でした。2009年のドイツの福祉機器展へ足を運び、見つけてきたものです。
仲間と一緒に楽しむためには、介助する側にとっても「最小限の負担」であることは必須です。乗り心地だけでなく、その点においてもこれほど扱いやすくアウトドアに適した車いすに出会ったことはありませんでした。
私たちの間では、「いかに楽(らく)して楽しむか」が合言葉に(笑)
とはいえ、自然に「障がい者割引き」はありません。
まだまだ自然のフィールドの経験が少なかった中での挑戦は、慎重に注意深く進めていきました。
山道で誤って手を離してしまわないよう、カラビナとロープでしっかり繋いでおきます。
急な坂道などではロープで引っ張りながらいきます。
子ども達だって友達とこんな風に楽しめるんです。
時々出てくる岩や細い道だって、HIPPOcampeがあれば簡単に乗り越えられます。
HIPPOcampeを後ろ向きにして引っ張る方法もその1つ。
こうすると、腕の力だけで押したりするより、格段に楽なんだそうです。
後ろ向きで乗ってる私も実は珍しい景色の楽しみ方をしてるのがわかりますか?
景色が後ろから変わってやってくるんです。
これも新しい発見でした!
私が、その先へ行って見たいといった世界は、やっぱり想像を超えてました。
静かに優しく迎えてくれた明神池。
道中にすれ違う人たちと交わす挨拶も嬉しくなりました。
「車いすで来れるなんて凄い!」
と驚きの声がかけられることも珍しくありません。
整備されてない道だけど、
だからこそ感じる自然の息吹き。
「大変でしょ?」
と聞かれることもしばしば。
その度に思うのは、簡単でないことこそが自然の醍醐味だし、それを超えた先にこそ息をのむような出会いや発見がある。アイデアや道具次第でそれを楽しむことはできる!ということ。
これは私が編み出した技。
HIPPOcampeの休憩姿勢、、です(笑)
座りっぱなしの姿勢から解放されて、大きな空を存分に拝みながら一息。
進むごとに変化する上高地の表情は、壮大で圧巻なものばかり。
風の音、木々の揺れる音にまじって聞こえてくるのは、自分と仲間たちの「おー!!すごーい!!きれーい!!」という、ついつい漏れてしまう声(笑)
子ども達も途中出会った野生の親子猿に興奮しあったり。
みんな一緒だから共有できる感動の数々が、全ての時間や体験を大切な宝物に変えてくれます。
自然から一番遠いと言われていた人たちが、自然を楽しむ選択肢はあります。
ただ、あと1つ必要なものがあるとすれば、
一歩踏み出す、ほんの少しの勇気、かもしれません。
いよいよグリーンシーズンが始まります!
「諦めなくていい」んです!
これからも私たちのモットーは、
【バリアフリーを超える。 想像を超える。 】
さぁ、家族や友人たちと、車いすで自然を体感しに出かけませんか?
一般社団法人「ata Alliance」代表
中岡亜希
障がい者や大自然を楽しむことを諦めかけていた人々、その家族・友人たちが、同じ時間、景色を一緒に楽しむための事業を展開。自身も、アウトドア用車イスに乗って山や森を楽しみ、夏はスキューバダイビング、冬は「Dualski」で雪原を滑走する。
http://www.ata.tours/