finetrackのモノ創りは、『素材』を新たに開発するところから始まります。遊び手=創り手のひらめきを形にする糸や生地は、どのようにして生まれるのでしょうか? 世界No.1の繊維技術を誇る日本だからこそできる、素材からのモノ創り。ヒミツがいっぱいの現場の空気を、テキスタイル開発課・三宅毅に聞きました!
―― 現在の担当、携わっている年数、そして好きなアクティビティを教えてください
生地・素材の開発と生産、知的財産の担当をしています。商品企画や生産管理も並行して手掛けていた時期もありましたが、生地・素材は、関わってもう8年半になります。
アクティビティは、ちょっと珍しいですが、リバーSUPが好きでハマっています。主に海で乗るスタンドアップパドルボードですが、これで、リバーカヤックやラフティングと同じように川下りをするのが、リバーSUPです。
―― 素材開発というと工場にいるのかな?と思う方も多そうですが、実際には?
いつもは神戸の本社事務所にいて、大阪の繊維メーカーへ出向いて打ち合わせしたり、開発の過程では、国内各地にある糸や生地の工場や機能を付与するための染色加工場などに行くこともあります。
―― テキスタイル開発を手がけ、初めて糸や生地に触れた時、驚いたことや戸惑ったことは?
finetrackに入って驚いたのは、製品の素材ができるまでに、糸や生地や加工のそれぞれの部分で、細かいところまで掘り下げて、とことんまで創りこむこだわりでした。
―― 印象的だった素材開発はありますか?
当たり前の素材を作っていないので、それぞれに苦労させられるところがあって、思い出も沢山あります。なかでもフロウラップ™は、強度と軽量性を求め、表地を主流のポリエステルでなく加工の難度が高い薄手のナイロンを採用しました。そのために、量産に移る過程で予想しなかった事象が発生し、大いに悩まされました。
当社のみならず、関わる各社さん(繊維メーカー、編み工場、染色加工場)がそれぞれに知恵を出し合って、苦労して創り上げた分だけ、結果的に唯一無二の素晴らしい素材になりました。
―― 出来上がってきた素材を手にしたときの気持ちや、真っ先にすることは?
生地のカットを、引っ張ったり、水を垂らして撥水や吸水を観察したり、粗いものでこすって損傷の具合を確認したりします。
公的な試験データもあるのですが、残念ながら実際の使用状態が完全に反映できているものではありません。データとこれまで蓄積した知見と重ねあわせて生地を実際に触ることで、製品に使える生地なのか、おおよそ判別ができます。もちろん、そのあとにフィールドで必ずテストをするのが前提です。
―― 長く愛用している仕事道具はありますか?
うーん。あえて挙げるならば、竹尺ですかね。出来上がった生地の幅を測る時に使用しています。
―― 糸を紡ぐ工場、生地を編んだり織ったりする工場、生地や糸に機能性を付与する加工所など、どれも開発者以外は滅多に立ち入ることのできない聖域ですね。
繊維の業界は分業化が進んでいて、原綿から糸、生地、染め加工の各段階で、それぞれの工場の設備やそれを使いこなすためのノウハウの違いから、性能や個性的な特徴が備わってきます。生産現場には、社外の人間には一切見せていない企業ヒミツだらけの区画があったりします。
―― そんなヒミツの現場の様子を少しだけ教えてください。糸の工場はどんな所なんでしょう? 工員さんが糸を紡いでいる・・・なんていう光景は、現代ではもうないですよね?
紡糸の原理はそこからほとんど変わっていませんよ(笑)。ただ、動いているのは人でなく機械。現代では最終形態の糸巻きボビンまで、一連のラインでほぼ自動で綿から糸になります。また、ポリエステルやナイロンの原糸の場合は、溶かした樹脂を、麺やトコロテンのように、細い穴から押し出して、引き伸ばして糸にしています。工場によって設備や方法が異なっているので、ヒミツがいっぱいです。
―― 生地を編んだり織ったりする工場は?
ニット工場は、工場内に大きさが様々な編機が所狭しと並び、編機を中心に頭上には放射状に沢山の糸巻がセットされ、大きな木のようになっています。織物工場は、床に整然と織機が並んでいて、大規模な工場が多いです。織機はニットの編機よりもうんと音が大きくて、会話もままならないくらい。ニットと織物では設備も雰囲気も違っていて、もう違う業界という感じですね。
―― 糸から創るテキスタイル開発課ならではの特技や職業病ってあるんでしょうか?
衣料を扱うお店に行くと、どうしても生地を触ってしまいますね。大体素材の推測はつきますが、最近は天然繊維ライクな素材や織物風のニットなど、隣の領域を攻めるような生地が多く開発されていて、見分けづらいものも現れています。お店で製品を手にとって、裾を指でつまんだり、引っ張ったりしていじっている人は、繊維業界の人間かもしれません(笑)。
―― 素材開発において、心がけていること、大切にしていることは?
繊維業界には常識や定石のアプローチがありますが、それをなぞっているようだと、従来の枠からはみ出すような新しいモノは生まれません。以前ファインポリゴン®のキャッチコピーでありましたが、「常識を疑う」ということが、非常に大切だと思っています。
それと、いいモノを創るこだわりと熱意がメーカーや工場の担当の方にも届いて、一緒にモノ創りをしているという一体感は、finetrackの文化として守っていきたいです。
―― 最近、注目している素材やニュースはありますか?
具体的にお教えすることはできませんが(笑)
例えば、自己修復のガラスやナノファイバーや、高強力繊維など、これまでにない原材料のアウトドアに役立つ可能性に注目しています。
―― 最後に素材の「創り手」目線でのおすすめの商品とその理由を教えてください
ずばり、ドラウト®ポリゴン3です!
独自開発のシート状立体保温素材「ファインポリゴン®」を、汗の処理能力に長けたL3ミッドレイヤーのコンセプトに取り込んで、保温と同時に素早く汗処理する機能をもった稀有なアイテムになっています。
ダウン製品と比べてムレ感の少なさは歴然、手放せない一着です。家族にも着せています。
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