今年も昨年と全く同じ日に、ほぼ同じルートで羊蹄山にバックカントリースキーを楽しみにいった。
例年にないほどに大量のパウダースノーを仲間と味わい、大興奮!
雪山の中で過ごした最高の時間のなか、「大切なこと」に気がついた。
今回は友人のスザン、マーティン、マグナスに加え、去年来れなかったマーカスも参加。
マーカスはマグナスのお古のATスキーを借りて、ビーコンやショベル、プローブはガイドさんからレンタル。
そう、マーカスは滑るのは問題ないけど、シールをつけてスキーで登るのは初めて。バックカントリーは私たちと何度か行ったことがあるけど、その時はスノーシューで登っていたから、シール登行の経験がないのだ。
シールの着け方、ATスキーのスキーモードとウォークモードの切り替えの仕方・・・
出発の前には、基本的な操作を説明する必要がある。
そしていざ歩き出したら、脚を持ち上げちゃう。
「すり足にしないと疲れるよ」って、兄弟のマーティンやマグナスがアドバイスするんだけど、もちろん身内のいうことはあまり聞かない。
なまじ力があるからそれでも歩けちゃう。でも、後でへとへとになるのが目に見えている・・・。
そんな私たちのやりとりを見て、Niseko Powder Guideのケンジさんは、
「マーカスが初心者なら自分のすぐ後ろにつかせて」と言った。
ケンジさんは長いことアメリカに住んでいたので、英語もネイティブレベルで、マーカスにシール登坂のコツなどを教えてくれた。マーカスは、不思議なことにガイドさんの言うことは聞くのだった(笑)
ここ羊蹄山は昨年も良い雪だと思ったが、今年は雪の量も質も桁違いだった。
そして他のパーティーがいない。
つまり、先頭を行くガイドのケンジさんがずっとラッセルしなければいけないんだけど、かなり雪が深い。
ケンジさんは、ある程度マーカスがまともに歩けるようになったのを見て、シール登坂に慣れている人をケンジさんの後ろに2人置いて、その後ろにマーカスを入れるように指示。
なるほど、これだけ雪が深いと、ケンジさんがラッセルしてくれただけではまだ若干雪が踏み固められていないから、4番手ぐらいだと大分歩きやすく楽になるからだろう。
やがて急登にさしかかった。
ジグザグにトラバースしながら進んでいく際には、必ず鋭角に方向転換しなければならない。
このとき、キックターンという技術を使うのだが、なかなか習得できない人が多い。
練習すればすぐ出来るようになると思うけれど、マーカスのように初めての人にとっては、要求が高すぎるようだ。
こういうとき「そんなこともできない初心者を連れて行くべきじゃない」という意見を持った人も多いと思うし、日本はどちらかというと「まずはボール拾いから」的文化があって、実際にいきなりバットを振らせてくれない古い慣習がある。
でも、アメリカで学生時代を過ごし、向こうの風習に馴染んでいるケンジさんは、ちょっと違った。
ケンジさんは、キックターンが必要な場所で、キックターンをしなくても板をずらしながら方向転換できるように、方向転換場所で自分のファットスキーで地ならしをしながら進んでいく。
「まずやってみてよ、そのために手助けをするよ」というスタンスなのだ。
これは重労働だと思って「凄いですね」と伝えると、「この太い板なら楽なんですよ~」と笑ってくれた。
(とはいえ絶対に疲れる。お金をもらっているとはいえ、初心者のケアは大変な仕事だ)
おかげでマーカスも大きな苦労なく登れ、みんなと同じ経験を共有でき、最高のパウダーを堪能した。
ものすごく興奮していた。
ケンジさんは最後にマーカスに「本当によく頑張った! 誇りに思って良いよ。素晴らしい」と褒め称えてくれた。
私も凄く嬉しかったし、お礼を言うと、こんな答えが返ってきた。
「滑るのがメインだから、出来るだけみんなに楽に登ってもらえるようにしてるだけ。そして初心者も安全に楽しめるように手助けしてあげたいんだ」
そう、私も初心者だったときがあったのだ。
誰しも、何事にも「初めて」が必ずある。
そのとき自分にも、ケアしてくれた先輩方がいた。自分はそうやって人に恵まれ、色々なことにチャレンジする門戸を大きく開けてもらってきた。
そして、今の自分がある。
今回の北海道滞在中、ほとんどずっと雪が降り続き、稜線上はかなりの強風だった。気温もマイナス14℃~18℃ぐらいで大変寒かった。この羊蹄山に登った日だけ、少し寒さはましだったが、それでも麓でマイナス6℃。上はもっと寒い。
厳しい環境の中でのバックカントリーだったが、私はfinetrackのウェアリングのおかげで快適だった。そして、寒いおかげで雪は吹けば飛ぶようなパウダー。最高の滑走を楽しめた。
考えられたウェアは、厳しい環境の山行を安全に楽しめるよう手助けしてくれる。そして私たちの可能性を大きく広げてくれる。それはまるでケンジさんのガイドのように。
2018 チャレンジ応援プログラム始動!2018年は、トレイルラン世界シリーズ戦での年間ランキングTOP5という目標を掲げ、世界を連戦! |
マルチアクティビティプレイヤー
丹羽 薫
国内外の大自然と会話をしながら、マウンテンランニング・登山・バックカントリースキーと、その瞬間のベストな遊びで「完全な自由」を探求するマルチアクティビティプレイヤー。
その活動は同性から高い支持を集める。
また自他共に認める愛犬家の一面も。