DRY LAYERING ドライを重ねる 5レイヤリング

投稿者: 相川 創

CATEGORIES
スタッフの遊び記録
ACTIVITIES

■コース日程: 2016/08/11-08/14
上越・巻機山北面 五十沢(いかざわ)本流は、徹底的にえぐられた花崗岩ゴルジュの沢。
花崗岩が、どうしてこんなに複雑に侵食されるのだろう、と思うほど深く・狭く浸食され、非常に美しくて、非常に容赦のない沢であった。

実はこの沢を訪れるのは3回目。一回目は、取水口上の中部ゴルジュの入り口にある直線水路を越えることができずに敗退。2回目は、入り口で瀑流を見てやめた。わかっていたのは、この沢は水量が多くては全く勝負にならないということ。

今年は例年にないほど雪渓が消えるのが速く、水量が少ないことが期待された。水の少ない9月が適期とは思うが、水の温さも考えたら、今年の8月はチャンスではないか。そう考えて、3度目の正直で、再び五十沢に向かうことになった。

■コース日程:
8/11:2合目取水堰堤で減水待ち
8/12:2合目取水堰堤(7:20)-大窪沢出合(12:30)-本谷沢(巻機沢)出合(15:30)
8/13:本谷沢出合(6:45)-下カケズ沢出合(14:30)
8/14:下カケズ沢出合(14:30)-永松沢出合(11:20)-三石山・永松山間稜線(15:50)-牛ヶ岳(18:40)-2合目取水堰堤(22:50)-登山口(23:50)

当初は3泊4日の計画だった。
が、前日の昼に60mmほどの大雨が降ったのがどう出るか。
8/11の朝、準備を済ませて、2合目の取水堰堤に続く登山道を歩く。が無情にも、中部ゴルジュ入口の滝は瀑流となっていた。
この状態では、勝負にならない。仕方ないので、堰堤の上で昼寝しながら減水を待つことにした。
後続の大阪わらじの会のパーティが、入り口の滝にトライするものの、ダメ。彼らは、登山道をたどって中部ゴルジュをパスし、4合目からトライするようである。
結局15:00過ぎまで川を眺め、朝より20cm程度減水したのを見届けて、いったん登山口に戻ることにした。

翌8/12、再トライ。
日程は、2泊3日とやや苦しくなってしまった。時間優先で行動しなくてはならない場面も出てくるだろうが、まあ仕方がない。水量は、少ないとは言えないが、勝負になるくらいか。
出だしの2段3mを右から越え、問題の直線水路へ。距離はわずか15mほど。
左岸側は、100mを越えるスラブが広がり、右岸側も相当高く巻きあがらなくては、越えられそうにはない。つまりは、巻くことは登山道を行くのと一緒。ここを越えなくては、意味がない。
水量が少ない時は、ほぼ瀞場になるようだが、2年前に敗退した時は、1ミリも可能性を感じさせないほど、轟々と水が流れていた。
今は、その中間くらいか。

パドルグローブを装着し、必死で泳ぐ。
幸い、中間部で大岩が沈んでいて、いったん立つことができた。休んで再び飛び込み、その先の1m滝を越える。

1m滝の先はまだ水路が続き、右に曲がって、滝をかけているようだ。水勢がきつく、とても取りつけそうにないため、エイド混じりで右壁のバンドを登る。

中部ゴルジュを上から眺めてみたが、水線を行くのは無理な水量だった。さらにワンピッチ上に伸ばし、スラブ帯のド真ん中の微妙なバンドをたどる。
最後は、ロープいっぱいに斜め懸垂。大窪沢の出会いまで一気に下りた。

中部ゴルジュを上から眺める。素晴らしい花崗岩のV字ゴルジュだ。

しばらくは川も開け、明るい渓相に。特に難しいところもなく、楽しく遡行する。

4合目の登山道を過ぎ、石橋を伴った5m滝が現れる。御嶽の兵衛谷でも似たような地形を見たことがあるが、不思議な造形だ。

本谷沢出合に素晴らしいビバーク適地があった。

8/13 出だしの2段6mを越えると、すぐにゴルジュが始まる。一発目のは容易だ。

いったん川が開け、5,6人泊まれそうな岩小屋を見送り、沢が左にがるところから、再び極端に狭まったゴルジュが始まる。
明るいV字のゴルジュだった中部ゴルジュと比較し、上部ゴルジュは斧で割ったようにすっぱりと割れた狭い岩の間を抜けていくゴルジュだ。光もささず、陰鬱な雰囲気。
流れは強いが、幅が2mしかないので、突っ張りで突破できる。

再び、長い水路の先に、5mのハングした滝が見える。滝手前で、右岸のバンドに上がり、1.5m幅の水路をまたぎ越し、左岸のバンドを登る。落ち口が際どかった。

ゴルジュは、暗く、屈曲しながら奥へ続いている。再狭部で、幅60cmくらいにまで狭まっていた。しかし、残念ながら、この先の1m滝を泳ぎ越すことができなかった。
5m滝の落ち口右岸から、ショルダーとフリーで右壁を巻きにかかる。

1ピッチ上がった後、さらに傾斜のきつい藪を4ピッチのトラバース。水の流れるルンゼを越えて、ハングした6m滝の先で沢線に復帰する。この区間に、かなりの時間を費やした。地図と照合すると、朝出てからまだ1km程度しか進めていないのだ。
その先の8m滝を越えて、ようやくいったんゴルジュを脱する。

ここは、下カケズ沢がスラブ滝となって合流する地点で、増水には耐えられそうにないわずかな河原が2か所ほどある。時間は14:30とまだ早いが、この先、当分の間まともなビバーク地が望めそうになかった。考えた末、ここに留まることにしたが、明日はなかなかハードな行程になりそうだ。

8/14 朝イチ、釜を泳いで、簡単なゴルジュを越える。

間もなく沖ノ沢(熊沢)と合流する。この先のゴルジュのエぐれっぷりがなかなかすごい。両岸は垂直を大きく越え、覆いかぶさっている。

最初の1.5mをハンマー投げで越えることができたが、その先を見に行ったメンバーが、かなり時間をかけなくては、越えられそうにない7mほどの滝があるという。仕方ないので、入り口まで戻り、沖ノ沢に少し入って左岸から巻くことにした。

この山域は、至るところに大きなスラブがあり、灌木を頼りに巻いていると、いきなりスラブに阻まれれる事も多い。今回は、スラブの真ん中をトラバースすることができた。

 

いったんゴルジュが緩んだ後、再び、幅1m程度の極端に狭いゴルジュが続くが、両岸低く、巻きも小さくでき、だいぶ与しやすくなってきた。

最後の大きな支流、永松沢(仙沢)を右に取る。流域的には、こっちのほうが広く、むしろ本流と言っていいだろう。

永松沢も、ゴルジュではなくなったが、意外と侮れない悪い滝がいくつかある。

3度ほどロープを出しつつ、源流部へ。
最後の詰めで悩む。最後まで水が流れるルンゼは、広大なスラブに導かれている。快適に登れるかもしれないが、傾斜もあり岩のギアがあまりない状態で突入するとえらく時間を食うかもしれない。既に時間が押していたため、安牌と思われる。藪ルンゼを詰めたが、これが最後は壮絶な藪であった。

永松山(1834m三角点)から牛ケ岳への稜線は、それなりに踏み跡があるという情報もあったが、ほぼ藪であった。18時半、何とか明るいうちに牛ヶ岳に到着。登山道のありがたさが身にしみた。
もっとも、この登山道(裏巻機登山道)はめったにないレベルの酷道で、駐車場に戻るのは、夜半前になるのだが・・・。

今回3人パーティで通常のツエルトでは狭いためチューブツエルトを選択。結果、3人でも余裕をもって寝ることができ、タープより暖かいため次の日に向けてしっかり休息をとることができた。
チューブツエルトの商品情報へ > 

上越・五十沢本流遡行のおすすめのウエアの組み合わせはこちらでもご紹介しています。
沢登り(寒い・泳ぎ主体の沢登り) >

他に役立った装備としては、泳ぎ区間が多いため救命胴衣があると安心感がある。

ACTIVITIES