DRY LAYERING ドライを重ねる 5レイヤリング

投稿者: 相川 創  ■写真:相川、岩井、八幡

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スタッフの遊び記録
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海の日連休は、2泊3日で、ゴルジュで遊べて、釣りも楽しめそうな沢に行こうと、南アルプス深南部の栗代川をチョイス。
今回は雨の影響で水量がかなり多く、ワンランク難易度が上がっている印象だったが、たっぷり泳げて、ゴルジュも手ごわすぎることなくほとんど水線での突破が可能。全域天然林に包まれた渓相も美しい、期待通りの秀渓であった。
■アクティビティ日:2018年7月14日~16日

■7月14日
一週間前に300㎜オーバーの大雨が降っているのが、どう影響するか。
寸俣川本流は、上にダムがあるので仕方ないところもあるが、完全に濁っていた。
栗代川の出会い付近まで偵察に行くと、どうやら水量は多そうなものの、濁りは入っていない。今回は大無間山までは突き上げずに林道下山予定なので日程的にも余裕はあり、遡行は可能と判断した。

アプローチは栗代林道を途中までたどり、取水堰堤に降りる巡視路を利用した。
このアプローチ道はヒルだらけ! 沢にたどり着いたところで、まずは靴とスパッツを全部外してのヒルチェックを行うことになった。

歩き出して間もなく、取水堰堤が現れる。水量が少ないときは、水の流れていない部分を登れたりするようだが、今回は全面水が流れている。やはり水量は多いのだろう。

堰堤を越えて早々、なんと、天然のシイタケが大量に生えた倒木を発見! おかげでこの後2日間の食料がだいぶ豊かになった。

まもなく、ゴルジュ状を呈してくる。右手に支流からの滝を見送ると、激流を泳がざるを得ない箇所が早速出てきた。
こういう水量には慣れてないメンバーもいるので安全第一で小まめにロープを出して行くことにした。ロープをつけて左岸側に泳ぎ渡り、後続を引っ張る。

沢が右に曲がった先は、大岩が沈んだ長い淵になっていた。おそらく、「八丁暗見」と言われる個所。水量が少ないときは簡単に歩いて行けることもあるようだが、今回はザックを背負ったまま行ったら、泳ぎ切れない。空身になってかなりマジの泳ぎを強いられた。

緊張感のある水量が続き、女性メンバーに対してはちょっとした徒渉でもスリング等で確保しながら進んだ。

ゴルジュが緩んだ個所は、天然林と苔の美しい渓相でホッとさせる。

この沢、本流には大きな滝はほぼないが、側壁から流れ込む滝は50mクラスのものがいくらでもあり、なかなか見事。

いったん開けた渓相だが、再びゴルジュが始まる。流れの強い大釜を持った1m滝がなかなかに手ごわそうだ。側壁のホールドを拾いながら、何とか泳ぎ抜け、後続はロープで引き上げる。

その先は、鶴が羽を広げたような特徴的な形状の岩を持った滝。「鶴の天」だろう。ここは反転流に乗って容易に凹角に入ることができ、簡単に登って超えることができた。

いったんゴルジュが開け、ゴーロ帯を越えるといたるところビバーク適地な開けた渓相になった。あまり時間がなかったが、少しだけ竿を出してアマゴを確保。天然シイタケとアマゴで贅沢な食事を楽しむことができた。

■7月15日
歩き始めは、開けた明るい渓相から始まる。この大きな釜を持った5m滝も、右から簡単に超えることができた。

沢は急に狭まり、一転して暗い渓相になる。大釜を持った4m+5mの激流の滝から、いよいよゴルジュか。この滝自体は、左から容易に巻くことができた。

このゴルジュは意外と短いようだ。出口にかかる2m斜瀑をショルダーで越えると、つかの間渓相は開けた。

地形図の1015ピークの南あたりから、沢は顕著に屈曲し始める。このような地形の箇所にはたいていゴルジュがあるものだ。ここからがこの沢の核心だろう。

この最後のゴルジュはなかなか長そうだ。序盤は特に難しいところはないが、フィックスロープのかかった5m滝を越え、沢が大きく右に屈曲した先の激流を伴った1m滝がまずは第一関門。白泡立つ流れを飛び込みで一気に超えて、切り抜ける。

側壁からの簾状の50m滝を過ぎ、前方に白泡立つ長い淵が見えてきた。
一見して、泳ぎ抜けるのが難しそうだったので、左壁側から登れないか試してみるが、ヌメヌメすぎてちょっと厳しい。とりあえず、水線突破も試してみると、何とか右壁に沿ってホールドを拾いながら泳ぐことができた。滝の直下は足が立ちシャワークライミングで3m滝を越える。

ゴルジュは一度左に屈曲し、再び右に大きく曲がる。一段と悪相な滝が前方に見えてきた。恐らく、「竜神の瀬戸」と呼ばれる核心部の始まりだ。左岸側をへつって近づき、ジャンプで流れを飛び越し右岸へ。ここでいったん全員集合。足を吹っ飛ばされそうな流れの中に何とか足を置き、水の流れる滑り台のような3m斜爆を越える。

右に屈曲した先を見ると、激しくボイルした釜に落ちる5m滝が見えた。右手のルンゼを少し上がったところに残置支点が見え、おそらく記録等で見るバンド沿いに振り子トラバースをする箇所だろうと思われた。
ただ、今回の水量とパーティの力量を考えると、越えた先で抜けられるだろうか?
思案の末、右手のルンゼを登る巻きを選択することにした。大きく屈曲している箇所なので、小さく巻けるはずだ。

ギリギリまでへつって、飛び込み一発で流れを越える。あとは反転流に乗って、滝の右手のルンゼにたどり着くことができた。
ワンピッチロープを出して、ルンゼを登る。

予想通り、沢の屈曲点だったので、非常に薄い尾根上のコルに出た。そのまま反対側に懸垂し、沢底に戻る。

正面に60mクラスの大滝がかかり、そこで沢が左に屈曲している。屈曲している先をみえると、暗い淵の先に3m滝がかかるのが見えた。ゴルジュの出口はあとわずかなのだが、泳ぎ抜けるのはなかなか厳しそうな流れだ。
身体もだいぶ冷えていたのと、左から何とか登れそうだったためここは巻くことにした。
あとは、簡単な滝を2つ越えると、左からコッパ沢が合流してゴルジュは開けた。左岸の支流が流れ込む手前に、「ホテル栗代川」とでも呼びたくなるような完璧にフラットな広い砂地を発見。今日はここで泊まることにしよう。
 
■7月16日
翌日は、すっかり開けた渓相の中の河原歩きだ。沢のゴール地点の林道の橋までは、2㎞ちょっとなので、最後のちょっとの区間で少し竿を出しながら遡行した。釣果は小さなアマゴ一匹だけだったが。
やがて、前方に栗代林道に架かる橋が見えてきた。なにやら傾斜がおかしいと思って近づいてみると、この先の林道区間の大荒れ状況を示唆するかのように橋げたの一つがへし折られていた。

この林道は崩壊が進んでかなり状態が悪い。ところどころきわどいトラバースが入り、垂直に切れ落ちて懸垂下降が必要な個所もあった。恐らく、年々悪化して行く一方で、よくなることはないだろう。もう何箇所か激しく崩れたら、一日では辿れないレベルになるかもしれない。

今回の区間の遡行図(クリックで拡大)。今回はかなり水量が多かったようなので、記録は参考程度に。

 

栗代川のような水流に対処する必要がある泳ぎ系のゴルジュでは、フローティングロープを使うと便利だ。ゴージュバック形式になっていると投げられるメリットはあるが、今回は切り売りタイプのものを40mにカットしたものを使用。このくらいの長さがあると、始点と終点で荷物を受け渡したりする場面などで使いやすい。
ただし、本格的な登攀セクションのために、ダイナミックロープも持参する必要がある。

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