白馬主稜線自体は知っていたものの手を付けていなかったが、この山域を代表する雪稜ルートとのことだし、『日翳の山 ひなたの山』/上田哲農の一編がわりと良かったのを理由にGWの予定が決まった。昨年GWの鹿島槍東尾根に続き今年もクラシックルートだ。
■山行日:2019年5月3日~4日
白馬主稜線初登は1931年3月。天候次第では当時の装備から酷く過酷なものであったと思うが、現在のウェアや装備の恩恵をもってすれば中級者向けクラシックルートということになる。
残雪期、特にGW後半ともなれば踏み跡も刻まれるが、基本的なアイゼンピッケル技術とロープワークをもって挑みたいルートだ。
実は前日入りしていたが予報では上部の風が強まっているようで麓からも雪煙が上がっているのが見えた。
リッジ上で煽られるのはごめんなので、天気待ちの上、翌アプロ―チしている。
猿倉から白馬尻まで、アプローチし大雪渓と白馬沢を分ける顕著な尾根が主稜線だ。
雪渓上のデブリを超えて適当な斜面から主稜線にとりついた。
尾根の末端は広大な斜面が続き、八峰へたどり着く。
ルートは明快で忠実に稜線をたどっていく。今回はGW後半であったため踏み後もしっかりとついており、歩きやすくはあったが少々残念でもあった。
何か所か雪がつながっていないブッシュ帯や脆い岩が露出した箇所があったが、さしていやらしい箇所はない。
全体を通して左右に切れ落ちた雪稜を各々登っていくことになるが、最終の雪壁まではロープを出すほどでもなかった。
ただ、雪が緩んできて足を取られると、数百メートルは止まらなそうな斜面を滑り落ちることになる。
難しくはないが、ミスしてはいけないといった心地よい緊張感のある雪稜が続く。
初日は5・6のコルで幕営とした。
テントを設営していると救助ヘリが飛んできて何事かとみていると、どうやら3峰の先あたりで滑落事故があったようだ。
テン泊の夜は2人用テントに男3人すしづめで一人がやけにガタイがいい上に、真ん中に陣取るものだから両脇の僕らはマットからずり落とされ寒い夜をすごした。
翌5時ころ起床。
真ん中以外はよく眠れなかったため、のろのろと準備をして結局6時半頃出発。
4峰から2峰まではより雪稜が切り立ち、振り返るとこれまで登った主稜線の全容がみえ、とても気持ちが良い。
最終の雪壁は60度程度とのことだが、白馬沢側の切れ落ち方が結構なもので、なかなか高度感がある。
前日事故があったことなので大事を取りロープを出した。
中間部分でスノーバーで支点を作りピッチを切り、全体で2ピッチ60m程?のスケール。
最後雪庇の張り出しが少ない箇所を超えると終了点が白馬山頂という明快なルートで、登っていてとても気持ちが良い。
最終の雪壁では、後から追いついてきたパーティはコンテで上がってくるものだから、迷惑をかけてしまった。こちらは確実な後続確保のために各自フリーで登る選択肢はなかったので先に行ってもらえばよかったと反省。
反省点もあったが、無風快晴の中、初見のルートを自分たちで事故無くやれた、充実感のある山行であった。
ファイントラックのマルチアクティビティ対応を体現するシェル。一着あれば、結局レイヤリング次第で厳冬期の長期山行を除くすべてのアクティビティに対応するため、使い勝手がいい。一見するとさしたる特徴がないように見えるが、そこは是非袖を通してみてほしい。
良い意味で企画者のエゴがたっぷり詰まったシェルだ。