DRY LAYERING ドライを重ねる 5レイヤリング

投稿者: 相川 創  ■写真:相川、八幡

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スタッフの遊び記録
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エルキャピタン、ノーズトライまであと1か月となったお盆休み。
パートナーが遠方なので、毎週顔を合わせてトレーニングをするというわけにはいかない僕らにとって、長期の休みは貴重な機会だ。お盆後半5日間は湯川・瑞牆・小川山エリアで、クライミングも楽しみつつ、ビッグウォール技術の洗練のためのトレーニングを行った。

まれにみる天候不順のこの夏。お盆休みもあまり天気は芳しくない予報だった。
日程のど真ん中に台風まで来るらしい。
少しは「普通の」クライミングもしたいと思っていたので、残念と思う気持ちが半分。でも人が多いと荷揚げトレーニングなどはかなり場所を選ぶので、半分は好都合だというのも本音だ。

※前回のビッグウォールトレーニングの様子も公開中です!(fun to track編集部注記)
「Road to El Capitan ビッグウォール始めてみました」>>

■8月14日~15日 湯川

最初の二日間は、時々雨予報。アプローチ近めの湯川に行くことにした。
重り用の水をたっぷり持ってアプローチを上がると、先客はワングループ4人のみ。

先客のクライマーと話をして、使う予定なしという「山案山子5.10b」を登って、フィックスを張った。
ノーズに行くメンバー二人のほかに、クライミング目的で来ている友人もいたので、フィックスで一人がユマーリングや荷揚げ練習する間、二人は他のことができるという作戦だ。

ホールバッグには30Lを越える水をやギアをたっぷり詰め込み、50㎏近い重さにしてみた。この重量になるとちょっと位置を動かすだけでも一苦労。本番は、この重量物をお供に、登っていかなければならないのかと思うと若干うんざりする。ビッグウォールをクライミングというより「労働」だという気持ちもうなずける。
さて、自分の番。
一人でやるので実際の流れとはちょっと違うが、ユマーリングして終了点を設置。「労働のしやすい」荷揚げ環境を構築する。支点の位置、傾斜、スタンスの有り無し等を見ながらここのスピードをいかに速く、あとの作業をやりやすく作るかが鍵だろう。
これを何度か繰り返して、手順を洗練させていく。ホールバッグの摩擦が少ないところでは、1:1で自分の体重を使って上げるボディホーリングだけでも50㎏を上げられることが確認できた。

昼過ぎに大雨が降ったが、薄被りで上に木が被っているおかげでビレイヤーがずぶ濡れになった以外は、岩も、岩にとりついている人も、ほとんど濡れることはなかった。

合間にクライミングも。以前オンサイト失敗していた「サイコキネシス5.10d」もRP。

 翌15日も時々大雨という天気で、岩場は完全に無人。人気ルートの「コークスクリュー」、「サイコキネシス」周辺を大胆に使って、振り子トラバースやフォローのロワーアウト(トラバースや振り子箇所でのフォロー技術)を練習をすることができた。

このルートの終了点は、スラブ状になっているのだが、こうなるとボディホーリングだけでは全く荷物が上がらない。自身がカウンターウェイトとなってホールバッグを引っ張り上げるスペースホーリングを使えば、楽で力も使わなくて済むことが確認できた。ノーズ本番でも、荷物の重い序盤をこのテクニックをメインで使うことにしようと確認する。

■8月16日 瑞牆・屏風岩

前夜、直撃ではないが台風に伴う悪天候が通過した。車の中で寝ていたが、車が揺れるほどの風と大雨。
しかし、悪天は朝までらしいということで、瑞牆に移動することにした。湯川ではどうしてもシングルピッチの練習しかできないため、おそらくほとんど人が来ないであろう岩場で、マルチの荷揚げをしようという目論見だ。

予想通り、駐車場はガラガラ。予報より雨は少し長引いたが、雨が弱まったのを見て不動沢の登山口に移動し、屏風岩までアプローチする。

この日のメニューは、「エンペラートラバース」→振り子トラバースで「よろめきクラック」に移って登り、「トップへの道」を登って岩塔の頂上まで荷揚げすること。よろめきクラックは人気のワイドクラックだが、岩もまだずぶ濡れでさすがに誰もいない。
リードのパートナーはさながらノーズ名物の「キングスイング」のようなスイングでよろめきクラックに移り、登って行った。

トップへの道の最後はスラブ状で、しかも途中の溝状にホールバッグが引っ掛かってかなり苦労したが、ユマーリングしながらのセカンドのホーリングの補助、トラバース箇所での補助ロープを使ってのフォローなどを確認することができたのは収穫だった。

■8月17日 ベルジュエールマルチピッチクライミング

唯一の終日晴れ予報の日!
この日ぐらいは荷揚げを忘れてクライミングを楽しもうと、「ベルジュエール5.11b 10P」へ。
植樹祭広場から見える一番目立つ岩塔、十一面岩の頂上に突き上げる、「あの岩山のてっぺんに立ちたい」という願望をストレートにかなえるルートで、一度登りたかったルートだ。

友人の2人パーティと2パーティで早朝に出発して、朝7時前には取り付きに到着。が、すでに若者の3人パーティが登り始めているところだった。友人パーティに先を譲って、結局登りはじめは8時半ごろになってしまった。

登り始めてみると、荷揚げの疲れが思った以上にあって体が重い!5.11bのフェースは何度もテンションを入れてしまう。でも、本番の3日目、4日目の疲労は、こんなものではないのだろうな。フォローのパートナーも相当に疲れているようだった。

2ピッチ目3ピッチ目をつないでプアプロのスラブを抜けると、ようやく得意なクラックをメインとしたパートになり一安心。4ピッチ目の美しいクラックを抜けて、白クマのコルに着くと、友人のパーティは先行パーティに譲ってもらったようで、大フレークから大チムニーに順調にロープを伸ばしていた。

大フレークを豪快に登ると、その先のチムニーで先行パーティがかなり苦労していたので、しばらく待機することになった。このチムニーピッチ、精神的な核心という話もあるが、この手のクライミングに慣れている僕らには特に問題はなかった。ここで苦労していては、ノーズの「テキサスフレーク(巨大なフレークのチムニーをノープロで登るノースの名所の1つ)」は登れまい。

チムニーの上で休んでいた先行パーティをパスして、終盤へ。5.10bのクラック、3級のほぼ歩きのピッチ、最後の5.8とトポに書かれているが、絶対に5.10aはあると思われるクラックとスラブのピッチを登って、絶景の十一面岩の頂上に立つことができた。

■最終日 小川山・南陵レモン

最後はピッチ数の多い複雑な荷揚げを伴うルートを登ろうということで、小川山の南陵レモンへ。5ピッチのうち、クライミング的には3ピッチ目のクラックがほとんどすべてだが、トラバースが2ピッチ、傾斜も寝ているピッチが多く荷揚げは補助ロープでのフォローが必須でかなり面倒。今の僕らにはちょうど良い練習課題だ。

人気ルートなのと、午後には天気が怪しいようなので、早朝発で取り付く。手続きはいい感じに自動化されてきていて、ワンピッチ1時間ペースで登ることができた。土砂降りの雨が降り出す、ギリギリ前にトップアウト。
春に始めたころは、ストレートなショートピッチでもワンピッチやるのに優に2時間はかかっていたと思うと成長したものだ。

ノーズ本番は間もなく。
ホーリングの重さにも慣れた。トラバースも問題なく、手続きのスピードもそれなりについてきているとは思っている。日本では練習ができなかった微妙なピトンスカーのエイドとか、まだ体験できていないレベルの「疲労」が不安要素ではあるが、完登への技術的なベースは十分にできている自信はついた。

後は本番でしっかり力を発揮するのみ!

※本番の記録はこちら!→「Road to El Capitan いよいよThe Noseにトライ」(fun to track編集部注記)

 

暑い時期だが、クラックに、チムニーに、荷揚げなどの作業があるとなれば、肌はできるだけ出したくないもの。もちろん、丈夫さも必要条件だ。
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消臭性にも優れているので、5日間を2着で快適に過ごすことができた。

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