「ただ知床岬を目指すのではなく知床半島先端部の大自然を満喫したい」
その思いから知床の山・沢・藪・海岸全てを楽しむルートを計画した。
※知床半島先端部は原始の自然が残る地域のため、立ち入りには貴重な自然環境への配慮と、全ての事象を解決する体力・技術・装備が必要となります。知床半島先端部への立ち入りを計画される場合は、知床半島先端部地区利用の心得「シレココ」および「ルサフィールドハウス」で必要な知識と最新の情報を確認の上、自然環境の保全とあらゆるリスクへの対応に必要な準備を行ってください。
8/12:相泊(7:00)→ウナキベツ川河口(8:30)→ポロモイ台地(11:30)→知床沼(13:30)
8/13:知床沼(4:45)→オキッチウシ川源頭(7:15)→オキッチウシ川標高450(9:30)→オキッチウシ川河口(14:00)→イタシュベワタラ(15:30)
8/14:イタシュベワタラ(6:30)→文吉湾(11:15)→知床岬(12:30)→赤岩(14:15)
8/15:赤岩(6:00)→ペキンの鼻(9:45)→ウナキベツ川河口(13:15)→相泊(15:00)
レポート:芳本 写真:岩出・清水・野村・丸山・芳本
■8月12日
道路終点の相泊から出発。
番屋が立ち並ぶ海岸を歩くこと約1時間半、観音岩が現れる。
巻き道には残地ロープ有り。
観音岩を越えると目の前にウナキベツ川河口が現れる。
川の左岸から始まる踏み跡を辿り知床沼を目指す。
踏み跡は獣道と交錯しており気を抜くと見失ってしまう。
現在地を確認しつつ赤テープやペイントを見落とさないよう進む。
ポロモイ台地に乗ってからは濃いハイマツ帯が始まり更に迷いやすい。
コンパス方向を意識し微かな踏み跡を見失わないよう進むと知床沼に突き抜けた。
ロープでマーキングされた知床沼幕営指定地にテントを張る。
夜は低気圧の通過で雨が降り続いた。
下段側のテントは降雨の影響で地面が沼と化し、就寝中にテント内が浸水。
不快だがポリゴンネストの中は適度に暖かく、気にせず眠ることにした。
■8月13日
翌朝、激しい風雨の中出発する。
幕営指定地からポロモイ岳方面へ伸びる踏み跡を狙うがすぐに見失う。
やむを得ずコンパス方向をオキッチウシ川の源頭へ合わせ、濃いハイマツ帯を直進する。
格闘すること2時間半。ようやくオキッチウシ川へ降り立つ。
オキッチウシ川は苔むして落ち着いた渓相が続く。
ただ、ラバーソールとの相性が悪く非常に滑りやすい。
標高450辺りに20mの滝と8mの滝が続く。
それぞれ左岸の木を支点に懸垂下降した。
オキッチウシ川の下部は左右に踏み跡が点在しており、滑る沢中を避けてそちらを進む。
徐々に潮の香りが強くなり、西海岸へ抜ける。
藪を越え、狭く暗い沢を抜け、明るく開けた海岸に出た時の爽快感はたまらない。
岩棚を少し歩き、巨岩帯を越え、イダシュベワタラの番屋付近で幕営。
番屋周辺は人の気配が濃く、気持ち安心して幕営できる。
天気も快晴、沈む太陽の中で雨に濡れた装備を各々乾かした。
■8月14日
翌日、朝から空は澄み渡り、懸念していた波も穏やかだ。
断崖はへつり主体で進むが、泳ぎを避けられない場所も数か所ある。
東海岸と比べてゴーロ歩きは少なく、快適な岩棚歩きが多い。
ヒグマも当たり前のように現れる。
人では到底持ち上げられないサイズの岩を片手で弾く姿に衝撃を受け、
予期せぬ鉢合わせを避けるようホイッスルを鳴らせながら進む。
文吉湾は盆のためか無人。
代わりにヒグマが草むらから覗いており、湾内にはカラフトマスの群れが泳いでいる。
文吉湾から踏み跡を辿り知床岬の台地に乗る。
台地上は無数の花が咲いており、
これまで歩いてきた武骨な海岸とうって変わって楽園のような景色だ。
盛夏のため植物が生い茂り踏み跡は分かり辛いが植生が痛まないように見極めて進む。
知床岬の看板は倒れており、明確な位置は分かりにくいので地図読みが必要だった。
岬から更に台地を進み、東海岸へ降り立つ。
赤岩の番屋は倒壊しているものが多く、過去の記録で言われているような人の気配は皆無でヒグマの痕跡も度々見受けられる。
番屋付近の平坦地に幕営。
岩出が50cm程のカラフトマスを激闘の末に釣り上げ、骨身から全て有り難く頂いた。
■8月15日
翌日は台風の接近が見込まれるため急いで下山を目指す。
出発の時点で風は強く、波のうねりも大きい。
カブト岩は巻道を使わず泳いで突破しようと狙うが、いざ泳ぐポイントに辿り着くと波が非常に高く危険と判断。
素直に引き返し、巻き道を使うことに。
足場は崩れやすいザレの中かなりの急登となっており、慎重に進む。台地からは快適な道になっている。
観音岩では地形的に波も穏やかで、巻き道を横目に一瞬海を泳ぎ突破。
ペキンの鼻は明瞭な巻道有り。
タケノコ岩手前の巻き道は残地ロープを手掛かりに的確なスタンスを拾い慎重に下る。
渡船で釣りを楽しむ人々や漁船も目立ち始め一気に賑やかになってくる。
その後も巨岩帯やへつりをこなしウナキベツ河口へ到着。
後はゴーロ帯を無心で歩き続け、相泊へ。
番屋の漁師の方々が「お疲れ様!」「熊見たか?」と温かく迎えて下さった。
濃いハイマツ漕ぎ、穏やかで苔むした沢、広い青空と海。
目まぐるしく変わる景色に見とれる旅だった。
台風を恐れて予定より早く下山したため、北見工業大学山岳部が運営する「きっとうぉ~る」へ。
ボルダリングジムの少ない道東で、地域の人々に気軽にボルダリングを体験して欲しいという素敵な理念で生まれたジム。
規模は小さいものの500円で遊べ、シューズの貸し出しも有り。
課題も面白く充実していた。
山は想定より寒くなる場合がほとんど。
真夏は特に甘く考えがちで「防寒対策をもっとしていれば…」と後悔した記憶が多々あります。
しかしポリゴン2ULシリーズに出会ってから後悔することは無くなりました。
軽く嵩張らないので持ち運ぶストレスが無く、その上で温かく、濡れにも強い。
とりあえずザックに入れておけば夏場は十分な寒さ対策となります。
今回も行動着から寝間着まで大活躍でした。