DRY LAYERING ドライを重ねる 5レイヤリング

投稿者: fun to track 編集部

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雪山のハードなアクティビティでも安心感を得られる究極のハードシェルとして開発したエバーブレス®アクロは「遊びに集中したい」という私たち遊び手の思いをカタチにしたアイテム。発売から4年、スタッフたちが過酷な環境下で遊び、使い込む中で「もっと快適に、もっと使いやすく、もっと行動のストレスをなくしたい」という想いをさらに盛り込み、この秋にリニューアルしました。
リニューアルを手掛けたのは、企画開発課の芳本。大学時代から北海道の山々に入り浸り、積雪期は縦走登山、無雪期は沢登りなど、険しい環境や長期の計画でどっぷり自然の中へ入っていくことに至福を感じる20代の若手スタッフです。今回はそんな芳本に、エバ―ブレス®アクロのリニューアルについてインタビューしました!

遊び手仕様のハードシェルに求める機能

――エバーブレス®アクロを入社前から使い倒してきたと聞きましたが、その経緯は?

雪山ではシビアな状況の中で行動しないといけません。フードのツバや襟元で視界が悪くなったり、ウエア全体がつっぱって腕や脚を上げにくいと、それだけでかなりのストレスとなります。ただでさえ過酷な環境下での行動、ウエアでそれを妨げられると重大なアクシデントにもつながりかねません。
私自身、以前使用していたアウターシェルの襟元が呼吸を妨げたり視界を邪魔したりするのがどうしても気に入らず、襟元を開けてバラクラバだけで行動するようにしていたのですが、学生時代に1月の日高山脈縦走中、強風が吹き荒れる稜線を数時間歩いているうちに頬に凍傷を負ってしまったという失敗があります。

そこでさまざまなアウターシェルを試し、出合ったのがエバーブレス®アクロでした。なにより生地が、強度とストレッチ性を両立していることによる安心感や動きやすさを気に入ったのですが、フードや襟のフィット感もよく、ストレスフリーな着心地。初めて使ったときは「これだ!」と思いました。

そこからは厳冬期登山ではエバーブレス®アクロ一択。その後、大学を卒業してから勤めていた会社を退職し、縁あってfinetrackに入社。商品開発担当として数々の商品のリニューアルに携わり、この度ついに、入社前から思い入れの深かったエバーブレス®アクロのリニューアルを手掛けることになったのです。

(開発チームの中でも特に初代エバーブレス®アクロの開発者である相川とは幾度もディスカッションを重ね、機能性のブラッシュアップを追求した)

――今回のアップデートは、とにかく細部のブラッシュアップですね。

もともと痒い所に手が届く機能を追求した製品なので、機能性を大きく変更すべき点はそれほど多くはありません。それでも、遊び手としてエバーブレス®アクロを幾度となく使い込む中で出てきた改善点がありましたし、社内でも「こうすれば、もっとよくなる」という話を繰り返していました。finetrack TOKYO BASEでお客様からハードシェルに求めるものを聞き取ったこともありました。同じ遊び手として、みなさんがハードシェルをどのように認識しているのか、その期待にエバーブレス®アクロなら応えられるはずだと思ったのです。そんなプロセスを経て出てきた改善点を創り手としてカタチにしていくことで、より快適に、使いやすく、楽に行動できるような進化を目指したのが今回のリニューアルです。

細部のこだわりが厳冬期の行動を支える

――具体的なアップデート箇所はどこになりますか?

一番大きく改善した部分は、呼吸のしやすさ。襟元の形状とブレスベンチレーター(呼気を通すためのベンチレーション)のサイズを変えることで、呼吸のしやすさが格段に上がっています。

もともと「襟の立ち方をもっと口元にフィットするよう変更しないか」という試みから始まり、さまざまなパターンを試す中で「これは以前から改善の余地を感じていた呼吸のしやすさの向上にもつながるのではないか」と気づいたのがきっかけでした。実際にリニューアル前のものと比べると、襟がより身体のラインに沿うようにパターンしてある新エバーブレス®アクロは、呼気が口周りに留まらず襟元から胸へと、ウエア内を下方向に広く流れていきます。これによって息苦しさが軽減されるのです。

また、襟元の内側に配しているブレスベンチレーターも、従来よりも物理的に大きな通り道を作ることで、襟のパターンとの相乗効果でさらに呼吸しやすくなると考えました。

厳冬期、稜線を登り詰めているときに呼吸が苦しくなることはよくあります。しかし、叩きつけるような風雪から顔面を保護し、衣服内の保温性を維持するためには、襟元のファスナーを開けることはできません。その思いは自分の学生時代の失敗談にもつながります。
そんなとき、外気をうまく吸い込めて吐いた息を外にスムーズに出すような空気の通り道があれば、ずっと呼吸がラクになり、次の一歩を安心して踏み出せると思うのです。

――ポケットの配置も変えていますね。

冬期登攀向けのハードシェルの多くはハーネスと干渉しないように、ポケットの配置が「大容量のものを2つ」というように定式化されています。そうすると1つのポケットにモノが集中して大きく膨らんでしまったり、小物の収納には大きすぎて整理しにくかったりと使い勝手がよくなく、あまり重視されていません。厳冬期の稜線ではバックパックを下ろして荷物を出すようなことはそれ自体がリスクにつながるため、なるべくポケットは有効に使いたい。だから今回エバーブレス®アクロには、「ハーネスと干渉しない」という部分だけではなく、ポケットの使い勝手をさらに良くすることにも配慮して設計しました。

具体的には、ジャケットにはダーツをつけて容量を大きくしたハンドポケットを2つと、小物を出し入れしやすい胸ポケットの3か所、パンツには左右の腰部分に2つと、地図やカメラなどを入れても足上げの邪魔にならない大腿部に1つの3か所、合計6か所のポケットを外側に備えています。適度な大きさのポケットを複数箇所に設けることで、使い勝手を向上させたわけです。逆に稜線でジャケットのファスナーを開けて内ポケットを使う機会は少ないもの。そこで内ポケットは小さく、かつ位置を外側のポケットと重ならないようにして、すべてのポケットを有効活用できるようにしています。

――パンツはより動きやすくするためのアップデートもあったそうですね。

もともと生地のストレッチで動きやすいエバーブレス®アクロですが、より足上げ性をよくするためにパンツ股部分のパターンを変更し、マチをつけました。これはラッセルや登攀動作に効く仕様ですね。

またアイゼンガードも、従来のものよりも軽くてしなやかなものを採用しました。貼り付け式の素材なので、アイゼンをひっかけて破ってしまった際などにも、従来より簡単に補修できるというメリットがあります。そういう面からも雪山での行動を支えられるのではないかと思います。

遊びを重ね、テストを重ねたモノ創り

――それらの改善をする中で難しかったことなどはありますか?

もちろん、どの仕様も最初からうまく改善できたわけではありません。
呼吸をしやすくするための仕様は、開発初期は空気の流れやすさを最重視してブレスベンチレーターの穴を最大限に大きくしたサンプルを創りました。しかしフィールドでテストしてみると、強風が吹く稜線では風が吹き込み過ぎてダメだったり。穴の大きさや位置の調節を繰り返して、ようやくベストなカタチにできました。

アイゼンガードはアウトドア業界では一般に使われていない素材を使用したため、適した接着条件なども探る必要がありました。ここは工場との二人三脚でしたね。テスト品が上がってきて、しっかり接着できていると思っていても、いざフィールドで使ってみると剥がれてしまったという過程を何度も繰り返し、さまざまな接着方法を試行錯誤するという地道な努力の結果「これなら剥がれない!」と言える仕上がりにできました。

――開発期間中は、月曜のたびにフィールドテスト結果をチーム内でシェアしていましたね。

商品の細かな仕様はどれも最終的にはフィールドで使ってみないと評価できないので、開発期間中は、さまざまな厳冬期のアクティビティを好むスタッフたちで分担してフィールドテストに向かいました。私は北アルプスや日高山脈での縦走登山を、別の開発スタッフが錫杖岳や黄蓮谷でのアルパインクライミングを…という具合です。

自分たちが遊びを重ねて使い込む中で出てきたさらなる要望を、実際にカタチにしてみてはフィールドテストを重ねる。今回は最終的にメンズのジャケットだけで4回の試作を重ねました。そうやって積み重ねた集大成が、さらに使い勝手よく、さらに安全を支えるためのウエアとして進化したエバーブレス®アクロです。

(芳本のフィールドテストの様子。南日高山脈 トヨニ岳~ピリカヌプリ縦走)

(相川のフィールドテストの様子。黄蓮谷~甲斐駒ヶ岳登攀)


――胸ポケットのデザインは、ハーケンをモチーフにしているのだとか。

厳しい状況でも、1本のハーケンによって打開できることがあります。「持っていてよかった」と思える頼もしい相棒ですよね。それと同じようにエバーブレス®アクロも「着ていて助かった」と言われる存在にしたい。ポケット周りのあしらいには、そんな気持ちを込めました。

次の一歩を踏み出すことに集中でき、より安心して挑戦に打ち込めるように。そのためには自らの技術と知識に加え、信頼できるウエア・ギアが必要です。
「厳冬期登山をウエアがどう支えられるか」という命題に向き合い続けたエバーブレス®アクロは、雪山に向かう山ヤが信頼できるウエアとして、みなさんのアクティビティを支えられるはずです。

厳冬期登山を支えるための機能として、生地のストレッチや随所の仕様を備えたフルスペックハードシェル。男性用・女性用ともにジャケット・パンツをラインナップしています。

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