お盆前半は、4日+予備1日で穴毛谷二ノ沢奥壁周辺を開拓初登しようというプランにトライ。
当初狙っていた二ノ沢奥壁右方岩壁のラインは、断念したが、代わりのドーム壁に(おそらく)新しいオールフリーのラインを引くことができた。
二ノ沢奥壁・ドーム壁は、登山大系にすら載っていなくて、おそらく30年くらいは誰も登っていなそうな、壁全体でも3登くらいしかされていないと思われる岩壁。しかし取り付いてみるとひどくボロいことを除けば岩もきれいで節理も発達している。錫杖にワイルドさを大幅に足したような感じで、オールナチュラルの内容的には現代的ともいえる(?)クライミングをすることができるフィールドであった。
アクティビティした日:2020年8月9日~11日
初日は朝から雨の憂鬱な天気だ。まあ、アプローチと偵察と割り切ることにしよう。雨中の二ノ沢を登る。
三俣が見えてきた。なかなか日本離れした風景。
三俣を中俣、その上の二俣を右にとり、途中のビバーク適地と思われるところに荷物をデポして偵察へ。
最後犬歯ルンゼを詰めて、右方岩壁の基部へ取り付いた。
当初狙っていたのは、メンバーの一人が以前見つけていた写真左端のラインだが実際下に立ってみると、この天候・この日程で落とすには厳しそうであった。無理せずターゲットを切り替えることにした。雲間にちらちらと見えた、谷向こうの「ドーム壁」がすっきりと美しく、こちらにターゲットを変更することに決定。
せっかくなので、周辺をうろうろと偵察。右方岩壁の西面側。掃除したら登れそうなめっちゃ長いクラックとか、小川山レイバックを巨大にしたような凹角とか、興味深いものをいろいろ見ることができた。
ガスでなかなか全景を見ることができなかったが、ドーム壁の下部岩壁。どのラインを登ろうか。
標高2000m付近の僅かな平地を整地してこの場所にしては奇跡的にいいテン場ができた。
翌日はこの期間唯一の好天予報で、ビバーク覚悟でこの日のうちに決着をつけるつもりで出発。アプローチも悪くなかなか時間がかかる。
取り付きの岩塔を回り込み、巨大な凹角から取り付くラインに狙いを定めた。
ドーム壁1P
30m IV+
とはいえ、落ちたらグラウンド必至の滑ったバンドのノーハンドトラバースがあり、かなり怖い。
2P 12m
草と泥を掘り出しながら潜り込む5.9のワイド。
潜り込むところが悪い。
もぐりこんでみたら、上部はすっきりとしたチムニーであった。
3P 35m 5.7
積み木が重なったようなところを登り、最後は汚いワイドに抜ける内容的には面白いが、ホールドもプロテクションも信用できない精神的な核心ピッチ。
ここはフォローで良かった・・・
いったん巨大なテラスに出る。
4P 30m5.8
スッキリしたフェースをクラックをつなぎながら登る楽しいピッチ。
途中、50cmはある石が動き出してビビる。なんとかルート外に落とした。
ここから上部岩壁か。
5P 30m II 草付きの歩き
の後の6P 40m IV
出だし足ブラハンドトラバースからの懸垂ムーブが楽しい。上部は岩稜となってピークに突き上げる。
終了点から見下ろすと、新穂高からアプローチのルートが全部つながって見えた。
右方岩壁をバックに終了点から。グレードこそ、5.9くらいだが、グレードでは表しきれないどのピッチもいろんな難しさが満載で充実したクライミングができた。
このエリアに詳しいパートナー曰く、フリーでは初登、ライン的にも部分的に交錯はしていても、おそらく新しいのでは、とのこと。
ようやく全容を見ることができた二ノ沢奥壁右方岩壁。こちらもスケールもあり、カッコ良い壁だ。
急いで下降に移る。60m一杯の、浮石だらけのラインに加え、スタックさせるとなかなか厳しい状況になる。支点の設置やロープを通すラインなどに細心の注意を払いながらの下降となった。
とりあえず水と食料のあり安全な取り付きには戻ることができた。ここでビバークしたが、ヌカカと思われる虫の大群に襲撃されひどい目にあった。
翌朝、夜明けとともにさらに下降。
結局以降も天気が悪そうでそのまま下山することになったが、短い日数で、面白いラインを一本登れたのは満足であった。
今回のフィールドは、テントを張れる場所が全くないことも予想され、どんな場所でもとりあえず3人がビバークできる装備としてタープを選択。かなり雨には降られたが、快適なビバークスペースを作ることができた。