トレイルランニングの黎明期から、マガジンハウスの雑誌「ターザン」でトレイルランニングにまつわる連載を手掛けてきた編集者の内坂さんは、自身も長距離レースを完走するほどの実力者。17年近いというトレイルランニング歴の中では、ドライレイヤー®に助けられつつ、イタイ目にもあったそう。現役ランナーとしてドライレイヤー®を着る理由を聞きつつ、編集者の目線から、ドライレイヤー®がトレイルランニングに与えた影響も伺いました。
内坂さんとトレイルランニングの出会いは、国内でトレランが認知されはじめてきた2004年秋のこと。当時まだ無名だった石川弘樹氏に連れられて向かった箱根では、濡れた石畳に足を取られて転んでばかりで、あのときは痛い思いをしたと語りつつ、なんとなく山を走る気持ちよさを知ったのだとか。
それからプライベートでも山も走るようになり、翌2005年には、雑誌「ターザン」でトレイルランニングのコースや装備などを紹介する連載、現在の「ターザントレイルズ」を開始。
内坂さんはマガジンハウスの雑誌「ターザン」に創刊から携わるベテラン編集者
公私ともにトレイルランニングにどっぷりはまった内坂さんの意欲はとどまることを知らず、2009年には、世界最高峰のトレイルランニングレース「ウルトラトレイル・デュ・モンブラン=UTMB」を取材。それから毎年取材を重ねるうちに出場選手のサポートにも関わるようになると、胸の内に、自分も長距離レースを完走できるのでは? という得もいわれぬ自信が湧き上がったと言います。
その自信は行動を伴い、2011年秋には信越五岳トレイルランニングレースに出場。ここで、なんと110kmにも及ぶコースを完走し、さらに2012年には「UTMB」に含まれるレースのひとつ「CCC」(101.1km)にも出走しました。
連載の「ターザントレイルズ」は絶賛継続中で、いまでも季節に関係なく毎月3〜4回は下見でコースを走るという現役ランナーの内坂さんに、ドライレイヤー®を着る理由を聞きました。
−輝かしいトレイルランニング歴の中で、ドライレイヤー®と出会ったのはいつですか?
2011年の秋に信越五岳を走ったときはすでに着ているんです。正確には覚えてないけど2009年、2010年頃かなぁ。
購入したドライレイヤー®はすでに10着以上。毎年新調して海外のレースに臨んでいる
−ドライレイヤー®を知ったきっかけは?
「ターザン」の連載で一緒に仕事をしているモデルの山下晃和くんに教えてもらったんです。これを着ると汗冷えしませんよ、って。
トレイルランニングは、とにかく汗をかくんです。で、走ってるか立ち止まっているかっていうのが、しょっちゅう繰り返される。そして、もちろん走っているときはいいんですが、立ち止まると汗が冷えて寒くなるんです。
山下くんからは、ドライレイヤー®を着るとそれがなくなると言われました。
−実際にドライレイヤー®を着てみて、紹介された効果は実感できましたか?
なるほど、こうゆうことねって、よく分かりました。
それと、ドライレイヤー®は、冬は温かいんです。じゃあ夏は暑いかっていうと暑くない。これ、不思議なんだよね。
僕の感覚としては、夏、汗をかくと外側のシャツが濡れる。でも、内側に着ているドライレイヤー®は濡れていないから体が冷えることはなくて、だからといって外が濡れているから保温もしない。
水のジャケットを着ているような感覚で、暑さは感じないんです。
トレランに限らず、外で遊ぶときはドライレイヤー®を着用している。2021年2月、長野県木島平で楽しんだクロカン(撮影/奥宮俊祐)
−体が冷えるのを防ぎつつ、オーバーヒートもしないんですね。
だから僕は夏に短いコースを走るとき以外は、一年中ドライレイヤー®を着ています。なんでかって言うと、トレイルランニングで体が冷えることは、絶対に避けなきゃいけないからです。
体が冷えると体温を上げるためにエネルギーを使う。すると、それって本来走るためのエネルギーだから、走れなくなっちゃうんです。体が冷えるってことは、体調が良いとか悪いとか以前に、走るためのエネルギーを失ってしまうんですね。
事実、体が冷えたことで大きな失敗も経験しました。
−差し支えなければ失敗の話も聞かせてください。
これは2012年に初めて「CCC」に出場したときの話なんだけど、そのときの天候は、主催者が必ず温かいアンダーウエアを上下余計に持ってきなさいとアナウンスするくらい、悪天候が予想されていたんです。
スタート時は小雨だったんだけど、それから山を登って標高を上げていくと、景色になんか白いものが混じってきて、コーナーを曲がるたびにガスが濃くなってきて、足元もどんどん白くなってきて、うわ、雪かよって。
だけど走ってると暑いから、下は短パンなの、吹雪なのに。いま考えると馬鹿だなって思うよね。
−雪山と同じ状況ですね。それで短パン…。
でも、調子がいいから、そのままの格好でがんがん走って、グラン・コル・フェレっていうコースでいちばんの難所も越えて、コースの中盤、夜中の12時くらいかな、エイドステーションに着いたから、紅茶を飲もうとして立ち止まったの。
そしたら途端にガタガタ震えがきて、再び走り出そうとしたとき、急に足元から崩れ落ちたんです。
当時を振り返りながら貴重な体験を語ってくれた
−それは低体温症でしょうか。結構危険な状況ですね。
四つん這いで、なんとかエイドステーションに戻ると、様子を見ていたスタッフから、リタイアしなさい、って言われました。でも、悔しいから待ってくれって言って、用意していたアンダーウエアに着替えて、温かい紅茶を何杯も飲んで、1時間かけて体温を戻して、なんとか再スタートできたんです。
結局、日が昇り始めると気温も上昇してきて、朝の8時くらいにはゴールすることができました。
−完走できたんですね! それはすごい。当時もドライレイヤー®を着ていたのでしょうか?
着ていました。だから、ドライレイヤー®のいい面と、気を付けなきゃいけない面の、両方を同時に経験した感じです。
ドライレイヤー®を着ていたからこそ、あの寒さのなかでもエイドステーションまでたどり着けたし、ゴールすることもできたと思います。
ただ、ドライレイヤー®を着ていたから無茶をしてしまった面もあるんです。
−過信は禁物ですね。
失敗したけどドライレイヤー®には助けられた部分もあって、やっぱり服は大事だなと思いました。だから僕にとって、服は装備だと思っています。それが大会の成績にもつながるし、命に関わることもあるからです。
低体温症から奇跡のゴールを果たした翌年、なんと再びCCCに出場。バイタリティーがすごい(撮影/藤巻翔)
−トレランブームが国内に押し寄せる以前から、内坂さんは仕事でもトレイルランニングに関わっています。ドライレイヤー®がトレイルランに与えた影響など、なにか感じることはありますか?
トレイルランが国内で広まりつつあったときには、これくらいの天気なら行くでしょ、みたいなメンタルの人が少なからずいたんだけど、最近は無理をせず、天気が悪かったらレース中でも自分の判断でリタイアする人が増えた気がします。
−それはなぜでしょう?
ドライレイヤー®によって体が冷えることのリスクを知る機会が増えたから、いままで以上に寒さに意識が向かうようになったのかもしれないですね。
または、ドライレイヤー®を着ることで快適なトレイルランニングを知ったから、つらい状況は避けて楽しいうちに終わろうよ、っていう頭があるのかも。
いずれにせよ、いい意味で無茶をしない基準をドライレイヤー®が作ったのかもしれません。でも、僕は無茶しちゃった(笑)。あの話は反面教師的に聞いてください。
−ドライレイヤー®がトレイルランニングに与えた影響は大きそうです。
内坂さんにとって、いまやドライレイヤー®は必須アイテムですか?
必携品以前のウエアで、着るのは当たり前。下着のシャツとパンツは誰だって着るじゃない。それと同じです。
教えてくれた人
内坂庸夫(うちさか・つねお)さん
「ターザン」と同じマガジンハウスの雑誌「ポパイ」の創刊(1976年)にも携わってきたベテラン編集者。2018年に、高尾山でランナーと登山者とのすれ違いによるトラブルを防ぐべく「高尾マナーズ」という団体を発足。マナーガイドの配布や講習会などを実施し、トレラン文化の発展に尽力している。
高尾マナーズは高尾の山々でトレイルのマナー向上を提唱しているプロジェクト。
高尾のトレイルをランナーと歩く人が気持ちよく安全に共用し、そして自然の守るために、マナーガイドを配布したり、歩く人に出会うことの少ないおすすめコースを紹介している。
肌に直接着て、その上に吸汗速乾ウエアを重ねることで、肌をドライにキープ。汗冷え・濡れ冷えのリスクを軽減し、登山やアウトドアでの安全・快適性を高めます。
優れた撥水性によって、かいた汗を瞬時に肌から離し、肌をドライにキープ。汗冷えを抑えて、体温を守ります。
構成/文:吉澤英晃