finetrackスタッフの、季節のフィールドでのお気に入りアイテムを定期的にご紹介。
今回は、アルパインクライミングからBCスキーまで半世紀以上山に登り続け、山岳ガイドとして、また登山における安全対策講師として多方面で活動し続けている直営店ゼネラルマネージャー平川が、すべての登山者におすすめしたい「必携」アイテムです!
記事: finetrack直営店ゼネラルマネージャー/山岳ガイド 平川 陽一郎
梅雨の6月に入りましたが、天候に関係なく山に行く日が続いています。
登山講習会やテント泊講習会、もしもの時のツエルトの使い方講習会が多いのも夏山前のこの時期の恒例行事です。
私は高校の山岳部への入部をきっかけに本格的に登山をはじめ、大学山岳部で北アルプスや谷川などを中心に春夏秋冬アルパインクライミングに明け暮れ、ヒマラヤの未踏峰にチャレンジ。大学卒業後は、アウトドア業界での仕事に従事しながらアルパインクライミング、フリークライミング、アルペン・バックカントリー・クロスカントリースキーにも親しみ、学生時代から現在に至るまで、公私ともに山にどっぷりと漬かり続ける生活を送っています。
そんな個人的な登山の傍ら、元々「登山に親しむ人を増やしたい」「防ぐことのできる事故は減らしたい」との思いが強く、何時の頃からか山岳ガイドとして山の楽しさを伝える活動や、講師として登山における安全対策講習などにも携わるようになりました。
今は主に、finetrack直営店でゼネラルマネージャーをつとめる傍らお客様への安全対策講習や、(公)日本山岳ガイド協会でガイドの方々に安全対策方法を、(公)日本山岳会では理事を務める他、一般の方に安全かつ楽しい登山方法の講習をしています。
そんな私の必携アイテムがツエルト。
個人的な山行でも、ガイドという業務上でも、休憩用として、緊急用として、ある時はテントとして、はたまたデポ品パッキングの為にと、春夏秋冬全ての山でアクシデントに備えてツエルトを持ち歩いています。
そして数多くあるツエルトの中で最も活躍しているのが、「ツエルト2ロング」です。
半世紀近くの長い年月、山を登っていますがこれほど出来の良いツエルトに出会ったのは初めてです。
<ツエルト2ロングが、最も出来が良いと感じる理由>
1.際立つ結露量の少なさ
結露には、長年悩まされてきましたが、そんな結露をこの「ツエルト2ロング」があっさりと解消していたのは驚きでした。
その最たる経験のひとつが、所属していた大学山岳部で11月に行う初冬合宿。ツエルトでの富士山山頂ビバークです。
富士吉田駅から歩きでのアプローチから始まり1週間~10日間行うこの合宿は、冬山に向かう体と技術を高めると同時に徹底的に酷い目に合う事で精神力を強くすることが目的。当時は雪が今より多く11月で十分に冬山でした。
山頂ビバークは最終日前日に行うこの合宿のハイライトで、五合目のテントサイトから様々な雪上訓練を終えたのち、山頂まで上がってビバークします。
その際、シュラフとダウン製品は使用せずに着の身着のまま、ツエルトをかぶって一晩過ごします。1時間に1回5分間を目途にバーナーで暖を取るのですが、バーナーをつけるとツエルト内側に付いた結露による霜がたちまち水滴となり、ウエアや装備を濡らします。バーナーを止めると同時に、烈風と寒気で結露がたちまちのうちにまた霜となり、ウエアや靴やザック・ツエルトが瞬時に凍結、というのを一晩中繰り返します。
今ではよい思い出ですが、本当に寒い思いをしたのをよく覚えています。
このようなトレーニングを通算10年続け、いっとき中断した期間もありましたが、しばらく振りに8合目で同様のビバークを「ツエルト2ロング」を使って行いました。その結果、以前のツエルトほど凍結せず、ウエアもギアも濡れが少なかったことには、非常に驚きました。
防水透湿のツエルトはほかにもありますが、ここまで結露が発生しにくいツエルトはないと思います。長年、濡れる不愉快なツエルトに悩まされていた私が、ツエルト2ロングを手放せない最大の理由はこれです。
2.がっつりテンションをかけて張れる
テント泊では60ℓは必要なザックが、ツエルト泊なら40ℓでOK。だから、最近は特に「テントも良いけど、ツエルトも良いよね」と思っています。そんなことからついツエルトを手にしてしまう今日この頃です。
幕営時にもツエルト2ロングの出来の良さを実感します。
テント代わりとして使うツエルト設営のコツは、出来る限りピンときれいに張ることです。
生地はピンと綺麗に張ってこそ、雨を受け流し内部は広く快適に使えます。ところが、薄手生地のツエルトは、夜露や風で生地がたるみ綺麗に張り続けるのは難しく、明け方には結構な勢いでゆるくなってきます。また長く使う内にその張りに耐え切れず縫い目が破損したものでした。
その点、ツエルト2ロングは労せずピンと張れ、その状態が長く継続します。張力のかかる各辺に合成繊維で最高レベルの強度を持つイザナス®が縫い込まれているため、破損を気にすることなくがっつりとテンションをかけられます。
これまでは夜間に何度か起きツエルトのテンションをかけ直してましたが、ツエルト2ロングを使うようになってから、設営後は就寝前に一度テンションをかけ直すだけで朝まできれいに張れているので、広く快適な一夜が過ごせるようになりました。
3.ソロでもパーティでも。広さと収納性がベストバランス
2~3人用という、広すぎず狭すぎない使いやすいスタンダードな大きさであることも気に入っているポイントのひとつです。テント代わりに使う際には、床面にして2人用テントと同じ程度の大きさがあり、1人で泊まるには十分なスペース。
また多人数で入れるので、緊急時や休憩時の保温のためのパーティの共同装備としても使いやすい。冬のスノーシューやアイスクライミングなどのレスト用として使う際には、左右天頂をロープで引っ張って低めに張り、内側の中央を除雪して掘りごたつ風に腰掛けられるようにすると最大8人まで入れます。
そのうえ収納サイズも軽量コンパクト。広さと携行性がベストバランスです。
4.両側出入口×ダブルファスナーの使いやすさ
ツエルトは自立テントと違って一度設営すると移動がしにくいという特性があります。そのため、出入りのしやすさなどを考えて、どこにどの向きで立てるかということには気を遣うものです。ツエルト2ロングは両側に出入口があるので、風向きや木、登山道、トイレなどのロケーションを気にしながら設営する際も、出入口が1箇所のものに比べ自由度がぐんと上がります。
また、出入口のダブルファスナーも使いやすいポイント。
上からも開けられる入口は、熱のこもりやすい天井付近の空気を効率的に入れ替えられ、なにより片手で手軽に操作・調整できるのがよいです。
また天候待ちのときに中から外の様子を確認するのにも、ダブルファスナーの上を少し開けるだけですむので便利。
さらには山岳ガイドという仕事上、緊急生理現象の時には簡易的に設営して目隠し用のシェルターとするのですが、そんなシーンでもダブルファスナーを上から少し開けて使うことで、目隠しの役割を果たしながらも換気や採光もできる。
こんなちょっとしたかゆいところにも手が届く使い勝手のよさも、出来が良いと感じるポイントです。
5.設営のしやすさと、豊富な張り方のバリエーション
しっかりテンションをかけて張れるという特長や、かゆいところに手の届く仕様から、設営しやすくかつ多様なバリエーションでの張り方ができます。
テント代わり・非常用・小屋掛け・簡易タープ…など、あらゆるシーンで活躍しています。
もともとツエルトは、悪天や緊急ビバークなどのアクシデント対策に所持する物ですが、ツエルト2ロングは軽量、コンパクト、蒸れにくく、適度な防水性、かつピンと張れる強度のある仕上がりで、アクシデント時以外でもテント代わりから、休憩時の保温シェルター、緊急トイレ用目隠しまで、工夫次第で色々と使える魔法のような山道具。すべての登山者にぜひ携行してほしい逸品です。
高い透湿性とテンションをかけて張れる強度に優れた2~3人用のツエルト。
軽量コンパクトながら、広く快適な居住空間で、テント代わりとしても積極的に使えます。
・重量 340g
・収納時サイズ 10×5×19cm
・設営時 奥行220㎝(天頂部170cm)
× 間口100㎝ × 高さ95cm
各地で安全登山の講師として活動している平川による、登山におけるツエルトの必要性から立て方を動画でご紹介。ぜひ、ツエルト選びや活用にお役立てください。
スタッフ:finetrack直営店ゼネラルマネージャー/山岳ガイド 平川 陽一郎
高校・大学の山学部で登山を始めて半世紀近くたちましたが、今でも山々は楽しく面白く1年中、登山にクライミングにスキーにと飽きる事はありません。
最近は、日本山岳ガイド協会の危急時対応技術講習会指導員や試験・研修委員を担当し、日本山岳会では 理事や「やま塾」の講師として、共に登る方を育てる事と安全登山関係の啓発活動に情熱を傾けています。