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8/32021

カミナ®ドーム×ヤマテン猪熊隆之「事前に調べた通りの使用感。居住性がよくて設営しやすい」

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山岳気象のエキスパートは、変化しつつある国内の環境に対応するテント選びのポイントも教えてくれました。今回話を聞いたのは、お世話になっている方も多い山の天気予報サイト「ヤマテン」の代表をとつめる猪熊隆之さん。気になる環境の変化とカミナ®ドームの使用感についてレポートします。

数年前と比べて山の環境は変化した?

山登りを安全に楽しむには当日の好天が欠かせません。綿密な計画を立てて、最新の装備を身に付けて、体調バッチリで山へ向かったとしても、当日の天気が悪ければ最悪の事態もありえます。

そこで重要になるのが天気予報。今回お話しを伺った猪熊隆之さんは、山専門の天気予報サイト「ヤマテン」の代表をつとめる山岳気象のエキスパートです。

三浦雄一郎氏や竹内洋岳氏などの登山家を始め、前回登場した山岳カメラマンであり石井スポーツ所属アスリートの中島健郎さんがサポートした日本テレビ「世界の果てまでイッテQ!」登山隊や、NHK「地球トラベラー」撮影隊などに、国内はもちろん世界各地の山岳の気象情報を提供しています。

登山用品店のイベントに登壇する猪熊隆之さん。講演会などの依頼も多く、忙しい日々を送っている

そんな「ヤマテン」の本社は長野県茅野市にあり、通された部屋の窓からは八ヶ岳連峰の大パノラマが広がりました。

抜群のロケーションから山の空模様を日々チェックする猪熊さんは、最近の気象状況から、テントは日本の山で使うならカミナ®ドームのようなダブルウォールが良いと言います。

近頃の気象状況は数十年前と比べてどこが変わったのか。フィールドの環境変化を伺いつつ、カミナ®ドームの使用感について聞きました。

八ヶ岳連峰を眺めながら手作りの天気予報を毎日配信

−部屋から八ヶ岳連峰が見渡せるなんて素敵なロケーションですね。

「ヤマテン」のオフィスから望む八ヶ岳連峰。右端の編笠山から、北八ヶ岳の山々まで確認できる

南には甲斐駒ヶ岳も見えるんですよ。なかでも八ヶ岳は「ヤマテン」が天気予報の対象としている主要な山域のほぼ真ん中にあるので、天気を予想するうえで基準となる山なんです。

−八ヶ岳の空模様を見るだけで周囲の山の天気も分かるのですか?

姿が見えなくても空はつながっているので、山の空気感は分かります。

たとえば、甲斐駒ヶ岳側と八ヶ岳側との天気の違いや山にかかっている雲の状況から、ここからは見ることができない関東地方の山や富士山の天気をある程度推測できますし、八ヶ岳側にかかっている雲の様子で、北アルプスの天気がどうなっていそうか、だいたいイメージできますね。

もちろん、目で見るだけでなく、数値予報や各高度の天気図など、さまざまな資料を組み合わせたうえで、過去の経験や地形による気象の変化を考えて予報を組み立てていきます。

また、天気予報を出して終わりではなく、ライブカメラや衛星画像、雨雲レーダーなどから毎日発表している予想があたったかどうかを徹底的に検証し、イメージと違っていたらその理由を気象予報士同士で話し合います。

その毎日の地道な積み重ねが現在の「ヤマテンの予報が一番当たるね」という利用者の信頼につながっていると考えています。

濡れる可能性が高い環境にはダブルウォールが有利

−天気の専門家でいらっしゃる猪熊さんだからこそお聞きしたいのですが、最近は異常気象が目立つようになってきたと思います。専門家の目線でどのように感じていますか?

昔と今では、とくに冬の気温が高くなりましたね。冬山でも雨や湿った雪の降る頻度が多くなったんですよね。

涸沢フェスティバルでのイベント風景。早朝の観天望気ミニ講座

−たとえば、私生活でも変化を感じることはありますか?

事務所がある長野県茅野市もそうなんですけど、昔は冬に雨が降ることなんてめったになかったそうです。でも、いまはそれが当たり前になってきています。

また、夏の暑さも厳しくなりました。数年前までこの辺りでは冷房を使う家はほとんどなかったのですが、いまは使う家が増えています。そして、雨の降り方もシトシトと降る雨ではなく、土砂降りの雨が増えてきています。

−そういった気象の変化は、今回、猪熊さんが使用したカミナ®ドームのようなテントの選び方にも影響を及ぼすことはあるでしょうか?

そうですね。いまの気象状況から考えると、山岳テントはダブルウォールを選んだ方が無難だと思います。雨の降り方も半端じゃなくなってきていますしね。

−今後シングルウォールはNG?

シングルウォールもいいんですけど、防水透湿素材が劣化してくると耐水性が低下するので、夏は当然フライシートが必要になるし、冬も湿った雪が多くなったので今度はスノーフライが欲しくなります。そうなると、ダブルウォールのテントと変らないですよね。

それと、シングルウォールを冬に使うなら、内張りがないとやっぱり寒いです。

−これまでにシングルウォールのテントを選んだことはないですか?

以前はシングルウォールのテントを使っていました。購入したのはもう20年くらい前ですね。当時としてはすごく軽くて、2〜3人用で確か2kgくらいだったと思います。これでも画期的に軽いテントだったんですよ。

−すでにテントを持っていて、今回新たにカミナ®ドームを購入したきっかけは?

キャンプのために新調した自前のカミナ®ドーム2。大きな不満もなく満足している

今年の4月頃、母校の大学の山岳部時代の仲間とキャンプをしようっていう話があったんです。

そのとき、持っているシングルウォールのテントを使うか新しく買うかで悩んでいて。そしたら今年、大学の山岳部に新入部員がたくさん入ってきて、部のテントが足りていないという話を聞いたんです。

それなら、古いけど持っているシングルウォールは学生にあげて、自分は新しいテントを買おうと思ったんです。それで、カミナ®ドームがいいと思って購入しました。

購入に至ったポイントは「軽さ」「居住性」「設営のしやすさ」

−山岳テントはいくつも選択肢があります。その中からカミナ®ドームを選んだ決め手は?

もちろんいろいろ調べて、最終的に候補を2つに絞りました。でも、結果として重量でも機能でもカミナ®ドームがいいなと思ったんです。

カミナ®ドーム2の収納状態。収納サイズは8×17×27cm、ポール39cm。最大重量は1,460g

−重量はテントを比較するうえで大きなポイントになります。機能はどこが気に入りましたか?

短辺側に入口があるモデルと比べると風にはちょっと弱くなるかもしれないですけど、フロアの長辺側に入口があるのがいいなと思って。長辺側にあった方が雨の日などでも出入りしやすいし、荷物も置けるので、やっぱり居住性がいいですよね。

あと、久しぶりにテントを買うので、目新しさが欲しかったっていうのもあります(笑)

−入口以外で気に入った点はありますか?

最終候補に残ったもう一方のモデルが、インナーテントをテントポールにフックで取り付ける吊り下げ式のテントだったんです。

これは好みによって左右されますけど、私は昔からフックをパチパチ引っ掛けるのが嫌いで。それで最終的に選択肢から外しました。

−嫌いとは…。一体どんな点が気になるのでしょう。

フックを引っ掛ける手間がかかるので、慣れていないと設営しにくいですよね。あと、指が痛くなります。

やっぱりカミナ®ドームみたいなスリーブ式がスムーズに設営できていいですね。
カミナ®ドームは筒状の袋にテントポールを差し込むスリーブ式

予想通りの使いやすさをフィールドで実感

−実際にキャンプで使った感想も聞かせください。

居住性はすごくいいですね。長辺側にある入口が広いので出入りしやすかったです。

長辺側のど真ん中にある大きな入口が居住性のアップに貢献

それと、吊り下げ式じゃなくてスリーブ式だから、やっぱり設営しやすかったですね。

また、構造的にも風に強いなと思いましたし、生地がしっかりしていたので長持ちしそうだなという印象もありました。

手で押しても過度にたわまず。オーソドックスなクロスフレーム構造だからこそ安心感も高い

−天井から圧迫感などは感じませんでしたか?

カミナ®ドームは独自のポール構造で天井部分のクリアランスが広いので、頭を押さえつけられるような居心地のわるさもなかったです。

フロアから天井までの高さは105cm。頭上には余裕の空間が広がる

−換気性能にも不満はない?

結露なども気にならなかったです。ただ、寝ているときはちょっと寒かったですけど、それは私がペラペラのスリーピングバッグを持って行ったせいですかね。

強いて不満を言うなら、収納サイズがコンパクトになるのはいいんでけすど、やっぱり袋が少し小さいですよね。小さな袋に苦労して収納する時間がもったいないと思うし、いつか破けちゃう気がして。

なので収納袋は別に用意しました

黒いパーツはオプションの内張りを吊り下げるためのループ。ここに細引きを通して固定すれば、濡れた手袋などを引っ掛けて干すといった使い方もできる

−カミナ®ドームを使ったのはキャンプだけですか?

今回のキャンプがデビュー戦で、まだ2回目はないんです。飯豊連峰とか朝日連峰とか、まだ行ったことのない山があるので、いろんなところにカミナ®ドームを担いで出かけたいですね。

間口が212cm、奥行きが130cmもあるので、1人で使うと広々快適

リニューアル予定の「ヤマテン」に乞うご期待!

−ちなみに、過去に山で大きな怪我を経験したと伺っているのですが、いまでも山に登り続けているのですね。

そうですね、一般的な登山は行っています。

−近頃は山にどれくらいのペースで登っているのでしょう?

仕事で山に入ることが多いんですけど、いまは「ヤマテン」のリニューアルが忙しくて、あまり山に行けていないですね。

−「ヤマテン」をリニューアルするんですか?

現在は全国18山域、59山の山頂の天気予報を発信しているんですけど、その数を大幅に増やして332山にする予定です。

−サービスを拡充させるのですね! ますます便利になりそうです。

同時にサイトも大幅にリニューアルして、アプリに近い使用感で使い勝手を良くしようと考えています。

登山者の安全のために、日々気象情報をチェックしながら生の天気予報を配信している

−今後が楽しみですね。ちなみに、リニューアルの時期は具体的に決まっていますか?

9月下旬のリニューアルオープンを目指して鋭意作業中なので、期待していてください!

 

【教えてくれた人】
猪熊隆之(いのくま たかゆき)さん

1970年、新潟県生まれ。中央大学で山岳部に入部したことをきっかけに登山に傾倒。学生時代の滑落事故、その後の大病などを克服して、2011年に国内唯一の山岳気象専門会社「ヤマテン」を設立。著書に「山の観天望気」(山と溪谷社)など多数。


山の天気予報 ヤマテン
高尾山からエベレストまで、国内外の山岳気象情報を提供する、国内唯一の山岳気象専門社。一般登山者向けに、全国18山域59山の山頂天気予報を毎日配信しています。

 

カミナドームの特長

軽い!とびきりコンパクト


設営場所を選ばないクロスポール自立タイプ、オールシーズン活用できるダブルウォール仕様のテントでありながら、最高レベルの軽さとコンパクトさを実現しています。

※ガイライン・収納袋・ペグ8本を含む総重量、カミナドーム1は1,280g、カミナドーム2は1,460g

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構成/文 吉澤英晃

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