石井スポーツに所属する、山岳カメラマンでありトップクライマーでもある中島健郎さん。汗をあまりかかないという中島さんは、これまでに触れる機会が少なかったドライレイヤー®を試してみて、確かなメリットを実感したと言います。フィールドテストで知ることとなった、ドライレイヤー®の良さについて聞きました。
目次 |
つい先日、紅葉に染まる剱岳の鮮やかな景観と、その頂に端を発する剱沢の奥地にかかる秘瀑、剱大滝をカメラに収めた映像が、NHK BSプレミアムの番組「地球トラベラー 錦秋の剱岳 幻の滝を撮る」で放送されました。
この絶景を撮影したひとりが、石井スポーツに所属しながら山岳カメラマンとしても活躍する中島健郎さんです。
話を聞いた中島健郎さん。つい先日、剱岳の取材を終えたばかり
ファイントラックは、剱大滝といった過酷な環境で少しでも安全に快適なロケを行なえるように、以前から撮影協力として中島さんにドライレイヤー®を着てもらい、着心地や汗冷え軽減効果についてもどのように感じるか試してもらいました。
今回はその結果報告。中島さんはドライレイヤー®について「一定のシチュエーションで着ると快適になるウエア」と評価し「もっと積極的に着てもいいかな」と前向きな印象を持ったと言います。
質問を重ねながら、その言葉の意味を探りました。
−まずはドライレイヤー®を具体的に使った時期と場所から教えてください。
大きい山行では、今年の1月に行った冬の屋久島と10月に行なった秋の剱沢の取材時ですね。屋久島では、2泊した沢登りと日帰りのクライミングのときに着用しました。剱沢で試したのも3泊した沢の中です。
−屋久島の取材というのは、以前カミナドームの話を聞いたときと同じ山行ですね。クライミングは、あのときに写真で見せてもらった雪に覆われた宮之浦岳で行なったんですか?
屋久島って、1月の冬時期でも真夏みたいに暖かい場所があるんですよ。そのときは、そこにある乾いた約12ピッチのロングルートを登りました。
−ドライレイヤー®を着て、なにか今までと違う感じはありましたか?
正直そのクライミングでは大量に汗をかくことがなかったので、ドライレイヤー®の汗冷えを軽減する効果は残念ながら分かりませんでした。ただ、剱沢の取材時は、濡れた服を肌から離すメリットをはっきりと体感できたんです。
当時を振り返り、感じたメリットは想像以上とポツリ
テレビにも映っていましたが、剱大滝に向かう途中に10mくらい泳ぐ場所があって、そこを突破するために全身が濡れてしまったんです。その後に5ピッチくらいのクライミングをしたんですけど、着替えを持ってきていなかったので、靴を沢靴からクライミングシューズに履き替えたくらいで、濡れた格好のまま登る羽目になりました。
−水温はどれくらいだったのでしょう…。想像しただけでも寒そうです。
腕時計で確かめたら5度しかありませんでした。僕もこれじゃまずいかなと思ったんですけど、肌に触れているドライレイヤー®が乾いているので、その上に着ている濡れたウエアが素肌にベタッとくっついて熱が奪われることはなかったんです。日が差してきた影響もあると思うんですけど、危険と思うほどの寒さは感じず、意外と大丈夫でした。
晴れていても水温は5度以下(剱沢大滝I滝を前に)
−取材中に着ていたのはドライレイヤー®ウォームと聞きました。ドライレイヤー®シリーズの中でいちばん保温性が高いタイプですが、温かさも感じましたか?
温かいですよ。全然違いますね。直接素肌に触れているっていうのもあると思うんですけど、やっぱり温かい。見た目から保温性があるとは想像してなかったので、これは意外でした。でも暑くなりすぎることもなく、ちょうどいい感じでしたね。
−ドライレイヤー®をクライミングと沢登りで使った実体験を踏まえて、無積雪期の一般登山や積雪期の山登りでも同じくドライレイヤー®を着たいと思いますか?
ケースバイケースですね。一般登山など、あんまり汗をかかなそうな場合だったら着ていかないと思います。逆に、なんか汗をかきそうな山行ってあるじゃないですか。そこで汗で濡れた服を着続けると、それだけで熱を奪われてしまい、場合によっては低体温症になりかねません。そのときにドライレイヤー®を着ていれば、濡れた衣服で体が冷えるのを抑える効果はありますね。
石井スポーツ登山本店のドライレイヤー®コーナー。フルラインナップで展開中
−汗をかきそうな山行とは? 汗冷えをした経験もあれば一緒に教えてください。
前に、インターナショナル・ウィンター・クライマーズ・ミーティング(※)で1月にスコットランドへ行ったとき、周りのメンバーのペースが異常に速くて、目的のクライミングエリアに到着するまでに汗だくになってしまった経験があります。でも、ほかの仲間はなぜか着替えを持ってきていて、濡れた服を脱いで乾いた服に着替え始めるんですよ。でも、僕は日帰りの計画だから新しい服なんて準備してなくて、その後の顛末は想像の通りです。着替えなんて渡された装備表には書かれていないし、あのときは騙されたと思いましたね(笑)。
※英国登山評議会(BMC)がスコットランドで開催しているクライマーの交流会
風雪の中、クライミングルートの取り付きで着替える現地クライマー(スコットランドにて)
−確かに、日帰りの計画で着替えを持っていくことは少ないかもしれません。
プライベートで楽しんでいる日帰りのバックカントリーも、当時と状況が似ていると思うんです。やっぱり日帰りだから行動中の着替えを持っていくことは少なくて。でも、ファーストトラックを狙うから登るペースが上がって、余計に汗をかく。
その状況で斜面を滑るとやっぱり寒いので、そういう場面でドライレイヤー®を着ていると体が冷えずにいいかなと思います。
−ドライレイヤ−®の着心地についても伺いたいと思います。ドライレイヤー®を着ると単純に身に着ける服が増えるわけですけど、動きづらさはなかったですか?
屋久島や剱沢でクライミングをしたときも、そういう不満は全然なかったです。逆にサラサラしているから、肌との摩擦がなくなって動きやすかったかもしれないですね。
下にはドライレイヤー®のタイツもはいていたんですけど、足上げもスムーズで、トップスと同じく動きにくさは感じませんでした。
−中島さんは山岳カメラマンであると同時に、トップクライマーでもあります。やはりウエアには動きやすさを求めますか?
それは結構大事で、服を選ぶときにとても気にするポイントです。とくにクライミングではウエアの裾がハーネスで固定されてしまうので、それで肩回りの自由度が失われると困るし、重ね着したときに動きにくくなるのも嫌ですね。
ウィンタークライミングでこそ、汗冷えには注意が必要
そういった観点で振り返ってみても、ドライレイヤー®を着たことで動きにくくなるとは感じませんでした。
−今回ドライレイヤー®を試してみて、周りの人にすすめたい商品だと思いましたか?
沢登りをする人には、もちろんすすめます。それと、夏や冬でも山に登って汗を多くかく人は絶対に着た方がいいです。やっぱり山で大量に汗をかいてそれが冷えると、熱を奪われて低体温症になる可能性が高まるので危険です。
−体質にも依りますが、衣服が濡れることが考えられる状況ではドライレイヤー®を着た方が良さそうですね。
僕は普段からそんなに汗をかかないので、これまでドライレイヤー®のような汗冷えを軽減するアンダーウエアを使ってこなかったんです。肌に触れる部分はウール素材のベースレイヤー1枚で足りていました。でも、沢登りでドライレイヤー®の効果を実感できたので、これからはもっと積極的に着てもいいかなって思いましたね。
今度はドライレイヤー®のグローブやソックスも試してみたいと評価は上々
正直ドライレイヤー®って、いままでの山でのレイヤリングにはなくてもいいものだったじゃないですか。でも、これを着るとより快適になる。そのことを知らない人は、まだまだいると思います。
それって、靴のインソールに似ていると思うんですよね。靴のインソールを替える知識がない人は、靴を買ったときに入っているペラペラのインソールで不満を感じてないと思うんです。でも、インソールを市販品に替えると靴の履き心地がすごく良くなるじゃないですか。
ドライレイヤー®の快適さも、それに似た所があると思います。
【教えてくれた人】
中島健郎(なかじま けんろう)さん
1984年生まれ。奈良県出身。石井スポーツ所属。2017年に行なったシスパーレ(7,611m)北東壁と、2019年ラカポシ(7,788m)南壁の登頂を讃えられ、それぞれの功績で登山界のアカデミー賞と称されるピオレドール賞を二度受賞。当面の目標に世界第二位の高峰K2(8,611m)の新ルート開拓を掲げ、2023年の達成をめざしている
中島健郎さんの公式プロフィールページはこちら >
山を好きになると、新しい世界や超えたいなにかが見えてくる。自然の大きさ、厳しさ、美しさを感じながら登る。滑る。駆け抜ける。「マウンテンスポーツ」は、地球に生まれた喜びを五感のすべてで感じられるスポーツです。石井スポ-ツのフィールドと商品を 熟知したスタッフは、山を愛するすべての人をナビゲートします。
店舗情報はこちら >
オンラインストアはこちら >
構成/文 吉澤英晃
肌をドライに保ち、体温を守る、メッシュのアンダーウエア「ドライレイヤー®」のうち、ドライレイヤー®シリーズ中、最も保温性が高いシリーズです。かさ高ニットメッシュ構造によって着用時に空気層を保持しやすくドライレイヤー®ベーシックの約1.5倍の保温性寒い時の登山やウォータースポーツに適しています。
優れた撥水性によって、かいた汗を瞬時に肌から離し、肌をドライにキープ。汗冷えを抑えて、体温を守ります。