別山を越えて白山に続く長い稜線に上がると、初日に降った新雪をまとった真っ白な山々が遥か彼方まで連なっているのが見えた。遠いな!
白山周辺は大好きなスキーエリアだ。その山々をつないで南北に縦断するロングルートはやってみたかった課題。石徹白をスタートして美濃禅定道と中宮道の古道をたどり、白川郷に抜ける42kmの行程を避難小屋2泊、イグルー1泊の計画でトライした。
■アクティビティ日:2023年3月18日~3月21日
〈1日目:白山中居神社から神鳩避難小屋まで〉
初日は結構な雨予報だ。幸い昼頃にはおさまってきそうだったので、当初の大日ヶ岳あたり起点にしようとしていた計画を変更。昼頃出てもなんとかこなせる石徹白の白山中居神社からの計画に変更した。神社からの林道は、すでに雪がちょいちょい途切れていて煩わしい。
例年と比べて雪が少なく、度々のスキー着脱を強いられる
積雪量が一番懸念されていた最初の稜線への登り、ギリギリでつながっていた。
ギリつながっていた雪をつないで稜線へ
初日は我慢の稜線登りが続く。予報より長引いていた雨だが、ようやく青空が見えてきた。
ようやく青空が!
神鳩避難小屋は地元の方々の努力で非常に快適に保たれている小屋。大事に使わせてもらった。
快適な神鳩避難小屋
〈2日目:神鳩避難小屋から南竜まで〉
行程的には一番ハードだが、近づく白山の絶景を眺めながら、銚子ヶ峰、一ノ峰、二ノ峰、三ノ峰、別山と小気味よく現れるピークを超えて行くルートだ。
昨日からうって変わって完璧な晴天の中、スタートする。
雲一つない完璧な晴天。
銚子ヶ峰を超えると、別山までの長い稜線が一望に。しかも白山はまだその向こうだ。
素晴らしい景色。でも遠いな!
別山に続く長い稜線
銚子ヶ峰に続いて、一ノ峰、二ノ峰、三ノ峰と徐々に高度を上げながらピークを次々に越えていく。じわじわと体力が削られる。
各ピークに自分たちだけのトレースを刻む
別山を越えると、ようやく白山が前方に大きく姿を現す。
別山から望む白山
別山からの稜線は結構やっかいだ。
大屏風と呼ばれる片側が切れ落ちた細い稜線で、細かいアップダウンも多くスキーが使いにくい。雪も悪かったため、おとなしくスキーを担いだまましばらく歩くことにする。
途中からスキーを履いて西側斜面をトラバースすることにした。地形図的にはそのまま南竜まで行けるかと期待したが、地図の印象以上に切れ込んだ谷があって諦めて最後は小さな谷に滑り込んだ。
南竜に向けて、本山行最初の滑り
いったんシールをつけて南竜休憩舎に向けて浅い沢を登り返す。完全に埋まっていたら大変だなと懸念していたが、屋根の先がかろうじて見えていた。
わずかに出ていた休憩舎に向かう
冬季入り口の場所はわかっているので、スコップを出して掘り出しに掛かる。氷化している箇所もあって苦労したが、30分ほどかけて開通。
冬季入り口を掘り出す
窓が一部壊れ、ドアもしっかり閉まっていなかったようで、中は結構雪が入り込んでいた。雪のたまっていない奥のスペースにシートを広げて泊りスペースとした。この日の晩はかなり冷え込んだが、雪にすっぽり埋まった小屋は結構暖かかった。
雪にすっぽり埋まった休憩舎の中
この日も見事な星空だった。この日はかなり疲れていたが、しばらく外で空を眺めていた。
白山とスタートレイル
〈3日目:南竜からオモ谷源頭1650m付近まで〉
白山を超え、滑りポイントも随所にあるハイライトの日だ。2日続けて完璧な青空の中、白山に向けてハイクアップを開始する。
GW頃になると、ヤブ尾根になる南竜のすぐ裏の尾根が、まだ十分雪もあり、傾斜も緩い絶好の登路になっていたのでそこを登っていく。
別山をバックにハイクアップ
室堂に立ち寄ったのち、雪が緩んで、傾斜の緩い斜面を狙って南寄りのラインで登って行く。標高2600m付近までシールで登ることができた。最後の標高差100mちょっとはスキーを担ぎ、南西側から山頂にダイレクトに上り詰めた。
今回の最高点、白山・御前ヶ峰。この時期の白山山頂に立てたのはうれしい。
今回の旅の最高地点
あまりコンディションはよくなさそうだが、山頂からの滑走は外せないでしょう、ということでシールを外し南西面側にドロップ。予想通り、モナカとシュカブラで修業系!
山頂からの滑りは修行
目指すは中宮道方面なので、夏道に近いラインを行くのが効率がよさそうだ。高度を下げすぎないように右寄りにトラバースして山頂台地に滑り込み、大汝ヶ峰の東から小白水谷に滑り込むラインを選択した。
白山には散々通っている私もまだ滑ったことのないラインだったが、白山の東面らしい素晴らしいスキー向きの斜面であった。惜しむらくは・・・やっぱりモナカ雪だったこと。
小白水谷源頭にドロップ
3月に白山の東面側を滑れるのはなかなかない。
2日前の雨はこの標高では雪だったのだろう。ツアーを通じて厄介なモナカ雪ばかりになったのはそのせいだが、残雪期的な汚れた雪ではなく真っ白な白山を見れたのはこの雪のおかげでもある。
ひと滑りして、白山東面を眺める。
中宮道の夏道に沿って、尾根との比高が小さくなっている2310m地点から尾根に復帰した。後は概ね下り基調。間名古の頭越えさえこなしてしまえば楽だと思っていたが・・・
中宮道に沿った尾根を行く。一筋の飛行機雲がきれいだった。
間名古の頭手前のコルから見上げてみると、これが地図の印象以上に急峻で途中に岩場まで見えているではないか。
ちょっとした雪稜クライミングと岩場登りをこなしてピークに立ったが、だいぶ時間を食ってしまった。
最後はオモ谷に滑り込む。メローないい斜面だが、やはりモナカ雪で疲れた足にはキツい!側面をトラバースする消化試合的な滑りで本日のビバーク予定地点に達した。
オモ谷源頭に滑り込む
今回は軽量化のためテントを持参していない。今日は避難小屋がない場所なので、宿となるイグルーを作成。
今夜はイグルーナイト
〈4日目:オモ谷源頭1650m付近から白川郷まで〉
オモ谷の1650m地点は、尾根と沢がほぼ比高がなく、簡単に尾根に乗ることができる。今まさに河川争奪が起こっている最中と思われる、面白い地形だ。
登りながらオモ谷を振り返る。雪が良ければ素晴らしい滑りだっただろうなあ。
この日はおおむね快適な尾根歩きだ。
天気は朝のうちは持っていたが、天候悪化の兆候を感じる筋状の雲が太陽にかかり始めていた。
快調に尾根を行く
振り返ると遥か後方に、すでに雲に隠れつつある白山の姿が見えた。はるばる来たなあ。
野谷荘司山山頂に到着!
今回の山行で初めて、他人のトレースと交わった。眼下には白川郷。旅の終わりはもうすぐだ。
最後のピーク、野谷荘司山頂に到着
滑降ラインは迷ったが、雪も十分安定していたので、せっかくならここを滑りたいよね、と白谷を選択。大斜面にドロップ。
やっぱり悪雪ではあったが、今回の中では一番ましな雪であった。
白谷にドロップ
白谷下部はデブリだらけで、雪がつながっているかも定かでなかったので、ボトムに達する手前でスキーヤーズライト側の別の谷に逃げる。
ここから先は消化試合だ。藪のクライムダウンなども交えて下っていく。
雪がつながっていない箇所はクライムダウン
堰堤群を越えると、あとは何とかつながっている雪をたどって車をデポしてあるトヨタ白川郷自然学校に無事ゴール!
トヨタ白川郷自然学校にゴール
エバーブレススノーラインビブ
胸まで覆う温かさと安心感で、バックカントリーシーンではビブタイプのアウターを好んで使う。温かさは裏を返せばオーバーヒートしやすいということでもあり、トイレのしにくさなどもあって泊りの山でビブを使うことに抵抗のある人もいるかもしれない。
その点、このビブは4か所の大型ベンチレータがあって温度調整も非常にしやすく、トイレのしやすさもかなり工夫されている。優れたストレッチ性のおかげで、細めのシルエットながら、動きやすさ抜群なのも◎