比良比叡トレイル―
京都の比叡山から滋賀県湖西の比良山系を結ぶ全長50km強のトレイルコースは、山岳信仰の歴史を感じる森を走る前半の比叡、琵琶湖が一望でき気持ち良い稜線の続く後半の比良、どちらも見せる山の顔が違い、存分に堪能できる。
昨年関東から移住した私・大森にとって関西のトレイルはまだまだ行ったことがないところばかり。今回、この比良比叡トレイルを滋賀県に住む友人にアテンドしてもらい、出町柳から朽木までオーバーナイトで縦走してきた。
■アクティビティ日:2023年5月21日
「先輩!自分、もう足がソールドアウトです!!」
なんだこのしんどさは…
トレイルの前半、比叡山から続く急登。皆のペースについていこうと無理にガツガツ登ってきたせいか、早々に乳酸が溜まり蓬莱山手前でもう足が売り切れて、こう叫んだ。
獲得標高が4500mあり、わりとしんどいという前評判は聞いていたが、ここまでしんどいとは…。もうトレイルランナー失格かもしれない…自分には向いてないのではないか…明日からやめよう…。ネガティブな気持ちが湧いてくるが、それでも歩みを進める。
なぜなら、この先の絶景のトレイルが待っているから。
トレイルランナー丹羽薫さんのプロデュースするLAKE BIWA 100や滋賀一周ラウンドトレイルも、この比良比叡トレイルを利用する。
興味を持ったのは、それらのレースに出場経験のあるトレイルランナーの諸先輩方から、比良山系の標高1000m超えの稜線や太陽の光刺す琵琶湖の風景の美しさを聞いていたからだ。
そんな折に、トレランレースの縁で知り合った滋賀在住の友人から滋賀の魅力を紹介するよと比良比叡トレイルのお誘いが。
「比叡山のトレイルとびわ湖バレイが満喫できるお気に入りのコースなんですよ」
二つ返事で誘いに乗った。
土曜深夜24時、出町柳に集合し北白川仕伏町から京都一周トレイルを瓜生山・比叡山へ向かう。
が、序盤から急登が続き、足が非常に重い。何故だろう、荷物を持ちすぎたからか…?それとも、今年に入って体重が5kg増えたからか…?ふくらはぎの乳酸を感じながら、なんとかケーブル比叡駅まで登り一息。
SNS上でよく見る文字モニュメントとともに記念撮影
自分達が走る1週間前に開催された比叡山インターナショナルトレイルランで主戦場となっていた延暦寺。その荘厳な境内を通過した後は、横高山、水井山、梶山と細かいアップダウンが続く。
「夜のうちはゆっくり行きましょうね」
とアテンドしてくれている友人は言うが、そのペースがしんどい。しんどいが、紅一点、足を引っ張りたくない…。
結局、自分のペースにあわせてくれたが、それでもしんどいはしんどい。口にはしないけど…。
梶山、別名大尾山。友人の説明では、梶山の「梶」が木と尾と2字になり、さらに木が大と読み間違えられ、大尾山とも呼ばれるようになったそうだ。
梶山を通過し、上り下りも無の境地で闇を切り裂きながら進んでいると、だんだんと足が慣れてきた。次第に暗闇が薄いブルーに変わってきて、シャキッとした空気の風をまとい杉林のシングルトラックを気持ちよく走る。
低山でも雲海が!こんな光景が見られるのも、早朝ならでは
還来(もどろき)神社まで到達し、やれやれ、行程の半分くらいは到達したかな、ここからが比良パートなのかな?なんて考えながら一息ついていると、友人が一言。
「こんなの序章ですからね、後半は登り下りの連続で、こんなもんじゃないですよ」
やめてくれ~~~~~と叫びたくなったが、いい大人なので自重した。
還来神社から先は、霊仙山付近の登山道が伐採事業のため立ち入り禁止とのことで一部コースを迂回して権現山まで進む。この権現山が曲者で、一気に約800mほど登るのだが、ここで足が全然上がらない。社員の根本は一人飛び出して、我先へと走って登っている。この急登を…!?体力オバケの多い弊社ではよくある光景だが、いまだに理解ができない。自分はただひたすら、ゆっくりながら無の境地で一歩一歩確実に歩みを進める。
一人遅れて権現山まで到達し、振り返ってみたら…驚いた。
「今まで走ってきた山々が全部見えるんですよ」
比叡山から琵琶湖まで一望!
目の前に広がるのは、比叡山からここまで走ってきたトレイルの山容。
琵琶湖も想像以上に壮大なスケールで…そんな光景がパノラマで一気に目の前に現れ、それはもう言いようのない絶景だった。この景色の為に頑張ってきたのだと嬉しい気持ちになった。
琵琶湖をバックに最高のロケーションで走る
そこから蓬莱山まで続く稜線はまるで桃源郷のようで、今まで辿ってきた山々と、これから辿る山々を見渡しては、気持ちが高ぶった。
冒頭のとおりここで足が売り切れ、一歩一歩が鉛を付けたように重かったが、景色をご褒美に何度も足が蘇えった。
どこを切り取っても映える稜線
奥に見えるのが蓬莱山の山頂
蓬莱山・打見山のあるびわ湖バレイに到着し、景色を堪能しながらひと休憩。ここはスキー場になっていて、左手にこの先に向かう山々、右手に琵琶湖を眺めながら、開放感のある芝を駆け降りる。
標高1,174m。贅沢な眺望に心躍るが、絶妙な傾斜で膝にくる
びわ湖バレイから先は友人の言葉通り、登り下りの連続だった。我慢の箇所も多い。
今回は乳酸の溜まり具合が異常だ。自分にだけ重力が普段の3倍ぐらいかかってるんじゃないかというくらいの足の重さ、疲労感…。でも、この感じ、悪くない。むしろ懐かしく愛おしい。そうそう、足が売り切れてからが本番なんだよな。
ここで、トレランの先輩から教わった❝おまじない❞を唱えた。
「しんどいのは気のせい」
どんなにしんどくても、要所要所で必ず絶景が待ち構える
比良山系の稜線は本当に綺麗で、いくつかある山のピークへたどり着くたびに琵琶湖が少しずつ角度を変えて姿を見せた。
初めて頂に立った日本二百名山の武奈ヶ岳でも360度の大パノラマが待ち構えており、山からの嬉しい歓迎を受けた気持ちになった。
また、山に歓迎されちゃったなぁ
その先は釣瓶岳、蛇谷ヶ峰と続くトレイルを走る。下り基調のはずだが足取りは牛歩のレベルで、もうすでに重力は5倍くらいに感じていた。自身初の50km超えのトレイルランニングとなった社員の衣川も、恐らく5倍くらいの重力を感じていたに違いない。最低でも2倍は。
それでも、弱音を吐くわけにはいかない。
「LAKE BIWA 100やシガイチのランナーは、ここを走っているんだよな。私たちが走っているのはコースの一部。これしきで泣き言を言うものか!」
自分に喝を入れ、最後の力を振り絞って進む。最後の頂・蛇谷ヶ峰に着いた時には、皆ヘタヘタと座り込んだ。
ヘタヘタ…
ずっと続いたレイクビューに別れを告げ、名残惜しさを感じつつも重力のままにトレイルを下り、15:30に終着点の朽木、グリーンパーク想い出の森へ到着。くつき温泉てんくうで汗を流し、湖西線からこれまた山と湖を眺めながら一同帰路についたのだった。
どんなに辛い急登があっても、頂に立つたびに素敵な光景がお出迎えしてくれる比良比叡トレイルは、噂に違わずとても良いコースだった。見渡す限り広がる壮大な琵琶湖、果てしなく続く稜線…それらを眺める瞬間は最高のチルアウトのひと時。日常をすべて忘れて思い切りリフレッシュすることができた。
関西にはまだまだ知らないトレイルがいっぱいある。もっともっと様々なところに行ってみたい。そのために、もっともっと足を鍛えよう。売り切れはご免だ。
ラミースピン®エアT
暑い時期のトレイルランニングで大活躍するのがラミースピン®エア。汗で濡れても、風を受けながら走っているうちに気づいたら乾いているので快適!程よいシャリ感でベタつきにくい点や抗菌防臭加工がされている点も嬉しいポイントです。