岡山県・新見市にある2つの洞窟「たぬきの穴」「湯川第4洞」に潜った。
■アクティビティ日:2023年7月1日~2023年7月1日2日
7月1日(土):たぬきの穴
1日目は湯川第4洞の偵察に行く予定だったが、渡渉が必要な川を橋の上からのぞくと、随分と水量が多く、湯川第4洞は翌日に延期することになった。今思えば、先にたぬきの穴に行けてよかったようにも思う。
写真は翌日の水量。土曜日も行こうと思えば、行けたのかもしれない。
たぬきの穴の詳細な位置は不明だったが、同じくfinetrackスタッフの相川が地形図と洞窟の位置関係図を重ね合わせることで、おおよその位置を特定していた。また、洞窟の入口の写真もインターネット上に掲載されていたことから、どのような斜面にあるかもわかっていた。
たぬきの穴手前の斜面にて。少し横にへこんだ地形で、上からや横からではわからない。
しかし、いざ現場の斜面を4人全員でローラー作戦するも、なかなか見つからない。1時間ほど斜面を練り歩き、蚊やぶよに噛まれ、雨も降りだし始めた。
このまま見つからないのでは?と疑い始めたあたりで、色褪せたピンクのPPテープが枝に結び付けられているのを見つけた。そのテープを辿っていくと唐突に洞口が現れた。
見えない位置にいるメンバーに洞窟を見つけたことを知らせる笛を吹いた。探していたのはたった1時間だったが、とても長く感じた。普段、到達や移動を目的とした登山をしている弊害である。洞窟探検家の吉田勝次さんは、数日間以上洞窟を探し回っていることもあるようだが、凄まじい執念だと思う。
事前に入手していた50年近く前の洞窟の内部地図と照らし合わせながら進んだ。
外の世界は50年もすると地形自体が大きく変わることもあるが、洞窟はその何倍もの年月をかけて形成されるからか、地形に大きな変化はない。
鍾乳管(ストロー)と呼ばれる洞窟生成物。折らないように気を付けて進む。
足首程度の深さで水が流れており、難しいところなく順調に進んだ。奥は一部周回になっていたが、水流を辿っていくと、非常に天井が低く、先が見えない場所に辿り着いた。50年前の洞窟内部地図では、そこが記録上の最奥部であった。
奥に向かうにつれ少しずつ狭くなる
一番体の大きいメンバーが匍匐(ほふく)前進で多少進んだものの、先が少しカーブになっており、中で態勢を変えて進むと戻ってこられないかもしれないとのことで、諦めて戻ってきた。
自分も入ってみたものの、前方が見えず、すれすれの天井をそれ以上進む気持ちが足りなかった。
地元の宿に戻り、たぬきの穴の記録を調べていると、我々の行けなかったその奥へ進んでいるグループがいた。まだ奥には空間があり行けたのだ。あの時もう少し、あと4mでも突っ込んでみればよかったと後悔した。
地図があると安心だが、それゆえに自分の行動を狭めてしまっていたのかもしれない。もちろんその先に進めると分かっていれば、突っ込んだのだろうが、自分が求めているのは地図などない、すべてが未知の場所なのだとは思う。そういう意味でも、地図の先に進めなかったことは次の日の気持ちを後押しした。
7月2日(日):湯川第4洞
藪の中、洞窟へ向かう
相川が過去2回にわたる偵察によって場所を特定し、アプローチ方法を確立させた湯川第4洞に向かった。前日夕方に降った雨によって、水量は昨日のそれより増えていたが、渡渉は案外問題なくできた。
懸垂下降で洞口へ降りると、そこにはリムストーンが一面に広がった空間が斜面に口を開けていた。
洞窟入口にて
洞窟内部の温度はその土地の平均気温程度と言われている。自分はドライレイヤー®、フラッドラッシュ®、ドラウト®タフ、ポリゴン2UL、ケイビングスーツ開発サンプルを着用し、洞窟の奥へと進んだ。しばらくは屈んで進めるリムストーンの道を歩いたが、30mほど進んだ所で、洞窟は急激に狭くなり、ヘルメットを外さないと通れないほどの、人の厚さぎりぎりで横幅もない穴となった。
入口からしばらくは広いリムストーンの床が広がる
両腕を先に入れ、体をねじ込みつつ、息を吐いて少しでも体を薄くして前進する。
この狭まる箇所から先は、前回来た相川も未知の部分であったが、抜けた先は空間が広がっていた。狭くも美しい場所が続いていた。
どこまで続くのだろうかと思うほど洞窟は続いていた。この湯川第4洞は吐き出し穴系の洞窟だが、この先の洞窟の吸い込み口は、羅生門と呼ばれる今は立ち入り禁止の洞窟に繋がっているらしい。確かに土嚢の残骸や塩ビパイプが流されてきており、引っかかった場所で石灰岩に取り込まれ洞窟の一部と化していた。
水はとても冷たい
徐々に洞窟の天井は低くなっていった。目の前には、仰向けで寝転がり、片耳まで水中に沈めながらかろうじて進んでいける程度の幅、そして見える範囲でもそれが10mほど続いていた。昨日たぬきの穴で撤退したこともあったからか、相川が突っ込んでいった。遠のいていくヘッドライトを見ていると、ふっと明かりが消え、まだ進めると声が聞こえてきた。心を落ち着けつつ、自分もその隙間に入った。かかとで少しずつ地面をおし、波を立てないよう背面匍匐前進で進んだ。まだ先は続いていた。
僅かな空間を進む
しばらく進むと終わりはあっけなく訪れ、鼻の先くらいは水面から出せそうなところで引き返すことになった。まだいけるかもしれない、そんな思いもあったが、十分満足していた。
最も狭く、つまった箇所。
帰りは最も狭い箇所でメンバーがつまって動けなくなり、向こう側から引っ張り出すアクシデントもあったが、無事洞口へ戻った。
懸垂のロープを登り返し、ゆっくりと下った。洞窟から吐き出された水流の下部に行くと、滝と根とトゥファと呼ばれる2次生成物が一体化していた。木の根の末端部分はまだ生命を感じるが、根の上部は完全に洞窟の壁のようになっていた。
洞窟内部の探索だけではなく、洞口探しやアプローチも含めおもしろく、エキサイティングな休日だった。初めて見るもの体験することは、鮮明に記憶に残る。これからも自分にとって記憶に残る遊びを続けていきたい。
※新見市の洞窟に入る場合、事前に新見市教育委員会に入洞届を出す必要があります。
フラッドラッシュ®タイツ
湯川第四洞では2時間半近く洞内におり、常に冷たい水にさらされていたが、ドライレイヤー®とフラッドラッシュ®の組み合わせのおかげで最後まで動き続けることができた。また、すぐ乾くので、そのままアプローチや帰り道でも使えた。