『黒部の山賊』
登山をする者なら読んだことや、聞いたことある人も多いだろう、かつて山賊が住んでいたと言われる黒部源流を舞台にした小説のタイトルだ。私自身この小説を読み、いち源流釣りを好む者としてはいつかは遡行をして黒部源流に棲みつく岩魚を釣ってみたいと思っていた。そんな矢先『伊藤新道行きたいんやけどいかへん?』と山仲間からのお誘いが!今夏、足を踏み入れてみたいと思っていた黒部の源流へ行く機会と仲間が見つかり、期待を胸に北アルプスへ車を走らせた。
■アクティビティ日:2023年8月11日~8月13日
【DAY1】
夜を超えて車を走らせた後、無事に湯俣川の入り口、高瀬ダムに到着。
ここから1時間半ほど湯俣山荘にたどり着くために同行者とわちゃわちゃ話しながら林道を歩く。硫黄成分が入った白濁した沢を横目に期待値が上がっていく。
快晴!硫黄成分が入って硫黄の匂いがプンプン
スタート地点までの長く続くトレイル。しゃべっていればあっという間だった。
時間は押している中、晴嵐荘の往来に使用される『野猿』に心奪われ、皆で野猿に群がり無駄に小屋を行き来する(笑)
アトラクション感覚
いざ沢装備に変更して少し進むと早速、湯俣の温泉をたどり『噴湯丘』へ到着。情報は知っていたが、目の前にするとインパクトがすごい!
噴き出した温泉成分が固まり、ドーム状になったもの。湯気が立ちあがり、自然の神秘に心奪われる。
噴湯丘よりゴーロ帯の河原を先に進むと、湯俣の難所の1つ『ガンダム岩』にたどり着く。ここではゴージュバッグを出し、メンバー皆でロープをつたいクリアしていく。
見ごたえのある景色を眺めながら、河原歩きを進めていく。場所によってはみんなでスクラムを組んだり、手を繋ぎ渡渉する箇所もある。
流れの強いところは皆で
今回の湯俣川の水位は雨が降っておらず特に少なかったと聞いていたのだが、増水時は逃げ場もなく、適切な判断を強いられるところだなとの印象も強かった。
天候も終始良くて、長いはずの行程があっという間に弥助沢の分岐へたどり着いた。ここで待ってましたの魚影の確認!
『いるいる、めっちゃいる―!』もともと高めになっていたテンションがより一層高まった!
早速釣りをするメンバーは、自身のテンカラ竿、ルアーロッドを取りだして釣り開始。
ゲット!黒部の山賊末裔達は引きが良し。
この後も色んなサイズの釣れる。山賊が放流したと思われるイワナの末裔たちがグイグイアタックしてくれ、夕食にありつけた。
【DAY2】
前日の宴会の余韻が残ったまま、二日目を向かえた。
2日目は稜線まで詰め上がり、伊藤新道を下って沢中泊予定。
特段、登攀要素は少ないがボルダーの多い沢で斜度がキツイ。
いよいよ源流の詰め上がりにたどり着くと今度は藪漕ぎの始まりだ。
手足に絡みつく藪をかきわけながら進む。疲れた時はバックに写る絶景に癒しを求めながら。三俣山荘はもうすぐ。
到着!そしてお疲れ様の記念撮影。
ゆっくりしてから小屋で働く友人に挨拶をし、下山の段取りを取る。
ココからは兼ねてよりのあこがれだった伊藤新道を歩くルートだ。
※伊藤新道はリスクの⾼いルートにつき、安全確認のため伊藤新道の通⾏届を湯俣⼭荘(麓側)と三俣⼭荘(⼭側)で⼊⼭時に提出する必要がある。この時は伊藤新道下山許可証を三俣山荘に提出した。
鷲羽岳の下に通る一筋。これが伊藤新道のルートだ。
いざ歩いてみると、とても歩きやすい素敵なトレイルだ。ここにトレイルがあると無いとでは本当に黒部の源流へのアクセスの良さは違うのだろうなと実感した。
とても歩きやすい。
ただし場所によっては、よくこんな傾斜に道をつけたな…と思うような
危なさを感じる箇所もあった。整備をしていただいた関係者の方々には本当に感謝しかない。
伊藤新道を超えてまた湯俣川にたどり着く。
2日目の行程は長かった為、辺りは薄暗くなってきていた。
早速焚火を仕込み、お酒を片手にこの二日間の余韻をみんなで語りあった。
【DAY3】
最終日。この日はスタート地点まで湯俣川を下っていく。
この時台風が近づいてきていたので、のんびりとはいかないが、天然温泉には浸かりたい!とのことで途中にある天然温泉に皆で浸かった。
源泉。お湯の温度は自分で調整式。調整失敗であつっ!となることも。
天然温泉で旅の疲れを癒した後は長い林道を戻るのみ。
最後に皆で振り返り、3日間過ごした黒部の源流を眺めた。
今回の山行で黒部の山賊の一部に触れられた気がした。
ゴージュタープ
今回、沢中で2泊すると見込み持ってきたゴージュタープ。一人はテントで、残りの5人はタープで寝たのだが、窮屈さを感じることなく快適に朝を迎えられた。生地強度が強いので目いっぱい引っ張ることができ、夜露などがついても弛むことなく安心できる。沢泊では欠かせない1品だ。
執筆者:プロダクト事業部 生産管理課 山本 雅人
2020入社
長い時間山に入ることが好きで山岳縦走を始め、忙しくなり山に入る時間が限られてきたので時間短縮の為に始めたトレイルランニングを続けていたらいつしか100mileレースに出るようになっていた。