DRY LAYERING ドライを重ねる 5レイヤリング

1/182024

これまでも、これからも遊び手のために。~20周年スペシャルインタビュー 代表・金山 洋太郎~

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投稿者: finetrack代表・金山洋太郎 リード文:fun to track編集部

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20年前、アウトドアフリークたちが集まって神戸市内の一軒家で創業したfinetrack。
創業前からあった想い、創業後の困難、そしてこれから先のこと…。finetrackが日本のモノ創り、遊び手が創り手のモノ創りにこだわる理由を、代表・金山洋太郎よりお伝えさせていただきます。

楽しく遊ぶための安全・快適を求めて 

 アウトドアスポーツを追求すればするほど、猛威を振るう自然への対策が欠かせない状況に出遭う機会も増えます。私はと言うと、若かりし頃は自然の猛威にさらされても、体力と気力で乗り越え、季節を問わず岩壁ばかりをやみくもに追いかけていました。 

 「登山には3レイヤーのウエアリング」という従来の常識に不足を感じるようになったのは、岩登りだけでなく多くのアクティビティスタイルを取り入れて山を遊ぶようになってからのことです。登山やクライミング、山スキーに没頭していたころは特に何も感じていなかったのですが、沢登りやリバーカヤックといった連泊で水に接するようなアクティビティをやるうちに、肌の濡れによる寒さに問題意識を持ち始め、自分なりのウエアの着方をシビアに追求したことがきっかけでした。なによりも安全に、楽しく遊びたいですから、そのために最適なウエアリングを探求しようと思ったのです。 


北極圏バフィン島のクライミングルート開拓やジャンダルム飛騨尾根~西穂高沢スキー滑降など、登攀や山スキーに没頭していた20代後半。その後ウォーターアクティビティを実践するようになってから濡れ冷えリスクと向き合うことに。

 肌着として吸汗速乾ウエアを着ることが正しいとされていた当時でしたが、その下にもう1枚撥水機能を持つウエアを着用することで肌から濡れを遠ざければ、もっと快適になるのではないかと考えたのが現在のドライレイヤー®の原型です。そして試作品を作るうちに、それはウォーターアクティビティだけでなく、登山などでも効果を発揮するはずだと思うようになりました。 

起業してから登山業界に参入するまでの数年間 

 日本の山岳環境に身を置いて心行くまで遊ぶために、本当に必要なものは何か?それを追求しようと起業したのがfinetrackです。私を含む3人のアウトドアフリークが集結し、神戸市内の一軒家で運営を始めました。 


創業と同時にドライレイヤー®を含む5つの商品シリーズを発表。写真は創業2年目、2005年のアウトドア商品展示会にて。

 目指すモノ創りは、アウトドアを実践する人たちがその快適性に納得し、永く普遍的に使ってもらえること。起業に当たって目玉商品とした撥水する肌着「ドライレイヤー®」は、1年目はウォーターアクティビティをメインターゲットにした「フラッドラッシュ®スキン」として売り出し、カヤックショップなどに置いていただきました。2年目には登山もターゲットにしたドライレイヤー®「スキンメッシュ®」を開発したのですが、すぐには受け入れられず、登山専門店で取り扱っていただけるようになったのは3~4年目のことです。


創業後間もないころの様子。市内の一軒家をオフィスとし、1台の車でスタッフ総出で全国を営業に回っていた。

 それまでは1台の車で全国を行脚しながら営業に回り、その合間に各地のフィールドで遊ぶ、というキャラバンのような生活が続きました。ウォーターアクティビティも登山も両方実践する方たちが私と同様に「これは山でも使えるのでは?」と考え始めたのも、ちょうど3~4年目のその時期と重なっているのではないかと推察しています。 

 もともと流行を追ったモノ創りではないため、登山専門店での取り扱いが始まった後も急激に会社が成長をするようなことはなかったのですが、ありがたいことにユーザーの皆様の口コミが徐々に広まり、「知る人ぞ知る」メーカーとしてアウトドア業界に浸透することができました。 

目指したモノ創りの在り方とは 

 過酷な環境のアウトドアで、最適な機能を素材に持たせようと思うと、当然、糸や生地などの素材をゼロから創る必要があります。綿密な打ち合わせを経て素材を創り上げるためには、国内の繊維メーカーや繊維加工場の協力が欠かせませんでした。 

 その側面には私たちのメイドインジャパンへのこだわりも隠れています。昭和から平成にかけてファストファッションが台頭した折、多くのメーカーがモノ創りの現場を海外に移行させていきました。そんな中、国内の繊維メーカー、繊維加工場、縫製工場が疲弊していく様子を、私は当時アウトドアアパレルで素材開発や商品企画の仕事に携わりながら苦渋の想いで見ていることしかできなかったのです。 

 その時から胸に秘めていたのが、国内で商売をする私たちが国内の経済循環の一端を担うことは全うすべき重大な責務ではないかという想い。起業当初は生産数も今よりずっと少なかったのですが、それにも関わらず国内の繊維メーカー、繊維加工場、縫製工場と取引を開始できたのは、私たちの想いに共感してくださる人々が一定数いたからこそでしょう。 


国内の繊維・生地メーカー、繊維加工場、縫製工場の方々の協力なくしては我々の商品は成り立たない。顔を突き合わせての打ち合わせを繰り返し、より良い商品を創り上げていく。

 また、違う視点からの話になりますが、環境配慮と品質の両面で非常に高い基準をクリアしている国内の繊維メーカー、繊維加工場、縫製工場とタッグを組むことは、自然の中で遊ぶことを生業とする私たちにとって非常に重要なことなのです。 

ウエアやギアが叶える快適を、仲間であるお客様に届けたい 

 厚かましい表現かもしれませんが、私たちはお客様のことを私たちと同じ遊び手、つまり「仲間」と考えています。finetrackだからこその商品開発で、ウエアやギアの機能を最大限に引き出したい。同じ遊び手である皆様のアウトドアをより快適に、より挑戦的に楽しむために欠かせない道具を提供したい。それは創業から20年がたった今も、変わらない想いです。 

 同時に「遊びに垣根はない」というのが私の持論です。私たちにとって人生の一部といっても過言でないアウトドアスポーツを磨き続ければ、新たなジャンルの遊びに行き着き、これまでにない新たな商品が生まれることもあると思います。 

 そしてもちろん今あるジャンルも、よりよい商品に昇華させるべく探究を続けたいと思っています。そのためにはやはり、これからも「遊び手が創り手」でありたい。最終的にはその一言に尽きますでしょうか。コアなアウトドアファンを唸らせるような、独創的なモノ創りを続けられるよう邁進したいと思います。  

finetrack代表/金山洋太郎) 

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