アメリカのロングトレイルと言って思い浮かぶのが「アメリカ3大トレイル※」や聖地「ジョン・ミューア・トレイル」であるが、パーミッション(許可証)取得の困難さや、完歩するための休暇が取得できないという現実的な問題等々・・憧れはあるもののどのようにしたらチャレンジできるのか思案している方は少なくないのではないだろうか?同じ悩みを抱えていた私とパートナー山本は1週間前後で気軽にトライできるアメリカのロングトレイルはどこかにないものかと色々な記録や地図を漁っていた。そこでヒットしたのが「ティンバーライントレイル」である。オレゴン州の名峰フッド山の裾野をグルっと1周(約65㎞)するこのルートであれば、我々のような一介のサラリーマン(とはいうものの、finetrackの夏季休暇は長い)でも頑張ればトライできる!キラリと輝く「ティンバーライントレイル」に期待を膨らませ、トレイルの下調べ、飛行機/ホテルの予約、奥様許可証を取得(奥様許可証は半年前申請)し、いざ自由の国アメリカへ!!
※パシフィック・クレスト・トレイル(PCT)、アパラチアン・トレイル(AT)、コンチネンタル・ディバイド・トレイル(CDT)
■アクティビティ日
2024年8月8日~8月19日
ティンバーライントレイルはオレゴン州フッド山(標高3425m)の裾野をグルっと1周約65㎞、累積標高約3300mのコース設定。3泊4日あれば十分に完歩できる道程で、我々は2泊3日のスケジューリング。明確に定められたテント場はなく、割と自由にセクションを区切ることができる。随所に川が流れており、浄水器を持っていれば水の心配もない。パーミッションの取得も不要であるし、決まった期間の決まった日数しか休暇を取得できない我々のようなサラリーマンにとっては大きな追い風だ。
日本~アメリカ間の往復、トレイルまでのアクセス、街エンジョイパート(今回のメインはポートランド)も加味すると、10日間前後の休暇であればティンバーライントレイルが紛うことなきベストアンサー!
現地では電車やバスの時間に左右されることなく自由に行動したかったため、レンタカーでの移動に決定。国際免許の取得は思っていたよりも簡単で、1日あれば取得可能だ。長期滞在ではないが、アメリカ入国の際はEATAの申請(簡易的なVISAみたいなもの)が必須のため、出国の2週間前までには済ませておくと安心だ。
トレイルでの食糧は円高の影響も考慮し全て日本から持ち込み。実際、普段から食べ慣れているものが間違いない。アメリカっぽいものは街エンジョイパートで食べる計画に。
その他ギア一式も現地調達はなし。唯一ガス缶は飛行機に持ち込めないため、ポートランドのアウトドアショップ(Oregon Mountain Shop)で購入。
※ティンバーライントレイルの登山口(ティンバーラインロッジ)ではガス缶は販売していないので要注意。
調べ切れていないことも多々あるが、それも旅のお楽しみ。いざ、出陣。
ホテル付近(ここから徒歩5分でスターバックスコーヒー1号店)
関西国際空港→台湾→シアトルタコマ空港の乗り継ぎで現地IN。日付変更線を逆に跨ぐため、8/8 19時日本発、8/8 20時USA着というお得な感じに。
初日は飛行機での疲れや翌日からの行動を考慮し、シアトル中心地のゲストハウスに宿泊。時間も遅かったため空港からホテル(約15マイル)まではタクシーで移動したのだが、料金が8,000円、、、普段タクシーを使うことがないから割高なのかどうなのか判断がつかなかったが、翌日再び空港への移動で電車を使ったところ料金は500円(くらいだったはず)。ぼったくられたわけではないだろうが、お財布には厳しい。気を取り直していこう。
(後日判明したのだが、宿から徒歩3分くらいのところにスターバックスコーヒー1号店があったらしい、無念)
SUBARU XVをゲット!
翌朝電車に乗ってシアトルタコマ空港に戻り、予約していたレンタカー(レンタカー会社:Hertz)を取りに行く。
空港からレンタカーターミナル(複数のレンタカー屋が合体したビルみたいなところ)へのシャトルバスがひっきりなしに往復しているため非常に便利。諸手続きを済ませ、レンタカーをゲットし、いざフッド山へ。
パンダ飯
シアトル→ポートランド(ガス缶購入)→フッド山の道程をドライバー山本が華麗な左ハンドル捌きで風を切る(通常5時間のところ、途中渋滞に巻き込まれ7時間)。
トレイルヘッドのティンバーラインロッジに到着したのは18時。まだまだ日が高いが、翌日から歩き始める予定だったため、一度麓の街に戻り、パンダエクスプレスで腹ごしらえ。
スーパーのビールコーナー
私と山本はお互いお酒好きということもあり、トレイルで嗜むためのビールを調達するためスーパーへ。さすがクラフトビールの聖地ポートランドの近くということもあり、ビールの品揃えが半端じゃない(しかもクラフトビールにしては安い。その時のレートで500ml缶が、だいたい500円~800円前後)。
旅のお楽しみもゲットし、ティンバーラインロッジの駐車場に戻り車中泊。
今回のトレイルヘッド
いよいよティンバーライントレイルの始まり。トレイルでの行程は1日20~30㎞の予定。決まったテント場がないため、その時のコンディションで臨機応変にスケジューリングする作戦だ。
何かカッコいい看板
歩き始めて10分のところでトレイルガイド?みたいな人とすれ違い、簡単に行程を説明。続けて「What’s your trail name?」と聞かれる。
トレイルネームはハイカー同士が呼び合うニックネームみたいなもので、その人の特徴やトレイル上での出来事をもとに名付けられることが多い、粋な文化だ。
まだ自分のトレイルネームを持っていなかった我々は数秒間を開け、
私「My name is Gaia(ガイア)」
山本「My name is Masa(マサ)」
ガイド「OK!Gaia&Masa!!Have a great journey!!!!」
改めて我々の旅が始まった。
トレイル上での気温は約25~30℃前後(朝晩は15℃前後に冷え込む)。灼熱の日本と比較すると気温が落ち着いているということもあったが、最も違っていたのが湿気。半端じゃなく乾燥しており、ジメジメ感は全くと言っていいほど無い。最高に快適である、、が、、乾燥しすぎているためか、GaiaもMasaも2日目以降に喉がやられてしまった。途中からナノタオルに水を吸わせて鼻と口を覆い応急対応。日焼け対策も含めてバフみたいなものがあると快適である。あとは喉飴。補給も含めて次回持っていこうと思った物、第1位。喉飴は強く推しておく。ちなみに持って行って良かった物第1位はリップクリーム(乾燥対策)。これも強く推しておこう。
アメリカ特有の山並みや植生、トレイルの空気感にシャッターを切る指の動きも軽快になり、突き抜ける青空を見上げるとアメリカに来たということを改めて実感する。
ツエルト2ロングとカミナドーム2
ホップの旨味
1日目は25㎞地点に川も近く良さげな場所を見つけテントを設営。夕日に赤く染まったフッド山を眺めながら乾杯。日本から大量に持ち込んだフリーズドライ飯を平らげ、雄大な地の果てに沈みゆく太陽を眺めながらこの日は就寝。
時差ボケの影響か朝方4時くらいまで眠れず寝ボケながら起床。勘違いして購入したドリップ用のコーヒー粉で若干粉っぽいモーニングコーヒーを作り目を覚ます。簡単な朝食を済ませて6時行動開始。
爽快なシングルトラック
2日目は累積標高が約2000mのなかなか頑張る行程。出発地点からいきなりガッツリ登るルートだが、朝のフレッシュな空気+気分爽快なトレイルに足取りは決して重くはない。
抜群の眺め!
稜線に上がって姿を見せてくれたフッド山が最高に美しい。寝不足も疲れも全てを忘れさせてくれる。
植物の癒し
ティンバーライントレイルの面白さは、裾野をグルっと1周進んでいくと、トレイルの雰囲気が目まぐるしく変化していくところだ。カラッカラの砂地かと思いきや、徐々にメルヘンな風景が眼前に広がる。山菜、キノコ、渓流魚にしか興味のないMasaも咲き乱れるお花の美しさに魅了されてしまう。柄にもなくGaiaもお花に向かってシャッターを切る。
超気持ちい
お花畑連発かと思いきや、荒涼とした木々が凛々しくトレイルを着飾るゾーンに突入。
さらに進むと猛々しい岩石ゾーンに。
さらにさらに進むと雪渓も姿を現した。ティンバーラインはスノーアクティビティのメッカであり、通年オープンのスキー場もある。そんなわけで標高1500m前後のトレイルでも雪渓を歩くことができるのだ。
テント場からのフッド山
2日目も25km歩いた地点の林の中に良い感じの場所を見つけテントを設営することに。2日目のテント場はとにかく眺望がよく、フッド山もオレゴン州の果てない大地も見渡すことができた。
いつも以上にビールが旨い
ビールの味わいもより一層深まる。
2日目の夜は風が吹き荒れていたが、林の中にテントを設営できたため、さほど影響を受けることなく夜を明かすことができた。
トレイル最終日の朝。朝日を浴びたフッド山が我々の遠征を讃えてくれているようだ。
最終日は約15㎞の行程。最終日も我々を飽きさせることない美しいトレイルが悠々と続く。Masaの気分も上々だ。
もう少しでゴール
ティンバーラインロッジに帰還
13時前にゴール地点のティンバーラインロッジに無事到着。3日間とも晴天に恵まれ最高の旅となった。
文頭でも書いたが、今回の旅で影響が大きかったのが、パーミッション(許可証)の設定がないことである。
アメリカの名だたるトレイルの多くはパーミッションが必要であるが、ティンバーライントレイルにはそれがない。自然保護の観点からもパーミッション設定は重要であり、パーミッションの設定がないことが「全てハッピー」に繋がるということではない。しかし、我々のような遠い異国の、しかも限られた期間に限られた日数の休暇しか取得できない者からすれば、パーミッションがないことがアドバンテージであることもまた事実である。だからこそ「Leave No Trace(自然に足跡を残すな)」の精神が大切になってくる。パーミッションがないという自由があるからこそ、自然を守るという意志を強く持たねばならない。全てのハイカーに歩き、愛される、そんなトレイルであり続けてほしいと、流れゆく雲を見つめながらGaiaとMasaは心の奥底でそっと願った。
【番外編】
本編(ティンバーライントレイル)以外にも色々と楽しんだ内容をちょこっとだけ紹介しておきたい。
ディシューツ川×Masa
・トラウトフィッシング
トラウトの聖地「ディシューツ川」を車で移動しながら2日間ほど釣りでエンジョイ。我々はルアーフィッシングだったが、エリアによって仕掛けに制限があるため事前に調査しておこう。ディシューツ川沿いに1,000円くらい(コインパーキングみたいな感じで自動精算)でテントを張れるキャンプ場がいくつかあるため有効活用したい。
FIVE GUYS チーズバーガーセット
・ハンバーガー
アメリカといって外せない食べ物がハンバーガー。今回プッシュしたいのがビックヒデ(山岸秀匡)推薦の「FIVE GUYS」。チェーン店であるにも関わらずパティがとんでもなくジューシーでボリューム満点!無料のトッピングメニューもあり圧倒的満足感。2025年以降日本上陸の噂もあるためハンバーガー好きは要チェックだ。
Screen Doorでランチ
・フレンチトーストハンバーガーとセットで外すことができない食べ物がフレンチトースト。今回は旅の拠点であったポートランドの中でも人気の「Screen Door」に突撃。
お店の雰囲気も最高だし、パンケーキのクオリティも申し分なし。3時のおやつで食べたいが、14時にランチ営業が終わるため来店時間は要注意。
ポートランドビアスタンド
・クラフトビール
ポートランドでビールを吞まないわけにはいかない。複数のビアスタンドを梯子し、様々なクラフトビールを飲み比べ。クラフトビールの聖地というだけあってどのビールのクオリティもめちゃくちゃ高い。ポートランドはワインも有名とのことなので、次回はお酒を嗜むためだけにポートランドに訪れたいとMasaは語る。
・街の本屋さん
ポートランドにある超絶イイ感じのブックストア「Powell’s Books」。図書館じゃないかと思うほど広い店内。本好きでなくても1日楽しめる品揃えで店内の一角にはカフェも併設されている。可愛らしい雑貨も豊富にあり、姪っ子のお土産にマグネットと絵葉書を購入。
ティンバーライントレイルを含め様々なスポットに立ち寄った我々であったが、一番印象に残っているのは、どこまでも続くアメリカの広大な道を車で移動したことだろうか。(運転はMasa、Gaiaはナビシートで寝落ち)
ドライブミュージックはもちろんベン・E・キングで「Stand By Me」
See you again!!(ありがとう、ブライアン)
ブライアン・Masa
ラミースピン®ニットシャツ
肌触りもよく風抜けもよい「機能性山シャツ」。山でも街でも様々なシチュエーションに溶け込むカラー/デザインで長期遠征や海外遠征でも大活躍。春~秋にかけて活躍する安心の1着。
執筆者:カスタマーサービス課 三井 太成
Trail name:Gaia(ガイア)
入社年:2021年
finetrack漫画倶楽部書記。
武論尊が描く男臭すぎる漫画が好き。中でも「灼熱-HEAT-」の格言は人生の支え。
「自分自身を好きでいられる内は何者にも負けはしない!!」by唐沢
そんな男臭さとは無縁に、トレラン、BCスキー、サーフィン、カフェ巡りに尽力する毎週末。