DRY LAYERING ドライを重ねる 5レイヤリング

投稿者: 中山 喜久子/田中 由希子

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スタッフの遊び記録
ACTIVITIES

山頂へ詰め上がるクライマックスが待っている沢登りはロマンがあり、達成感も格別だ。
米子沢も巻機山に詰め上げる秀渓としてその名を知られている。
ルートのシンプルさと、あまりにも渓相が美しいことから、米子沢は「デート沢」と紹介されることもあるが、侮ることなかれ。標高差1400メートルを登り切り、滝前では沢山の足跡(獣道?)に惑わされ、中~上流部やゴルジュではちょっとした登攀要素もある。
息を呑むほど美しい大ナメの渓相や、巻機山山頂への天国の詰めは、さすが日本屈指の美渓と言われるだけあり、大いに楽しめた。まさに、一度は訪れておきたい名渓である。

■アクティビティ日
2024年9月14日~9月15日

2024/9/14~16の3連休はどこも天気がイマイチな予報だった。
我々は、北は東北、南は九州の端っこまで車を走らせる覚悟なのだが、どこもかしこも天気が悪い。これは沢登りを諦めて一般ルートの縦走でボッカ練でも励むか、と考えていたら、直前の天気予報で上越付近だけがポッカリと晴れて良い感じに!
上越といえば、デート沢と名高い秀渓・米子沢があるではないか。沢2級コンビの我々にジャストフィットな行先である。

・・・そもそもデート沢とはなんぞや?

いわく、「関係を深めたい相手と楽しむために、神様が用意したような、とてもとても美しく、ルートが比較的安易な渓」らしい。今更、カンケイを深めるも何もない10年来の相方だが、まあ、良い。女二人で、おデートだ(笑)。いざ!上越の名渓・米子沢へ!

■9/14(土)
直前に決まった行先は新潟県。神戸からは車で9時間以上かかる。
夜通し北陸道をひた走り、入渓点がある巻機山麓キャンプ場に着いた頃には太陽は高くのぼり、サンサンと日差しが降り注いでいた。


序盤、きゃーいい景色!でも熱中症ぎみ

駐車場からは河原のガレ場を1時間ほど歩くが、この歩きが辛かった。とんでもなく暑い。暑すぎる。冗談ではなく干からびそうだ。9月とは思えない暑さに2人して軽い熱中症になり、誰もいないことを良いことに上半身はドライレイヤー一丁で歩く。


冷たい沢水が気持ちいい

ここらへんは順調、順調

水が現れる度に頭をドボンして、なんとか生き返る。
改めて見渡すと、晴天の中に巻機の稜線が拡がり、米子沢がすっきりとその山頂へ延びている。実に美しいシンプルルートだ。
徐々に沢の水量も増え、水を得た魚のごとく体力も回復してきた。


フリーで越えられる楽しい滝が無数に。徐々に高度をあげていく

二股。すごいスケール!

サクサクとフリーで登れる小滝が続く。私達の大好物だ。滝を越えるごとに違う景色が現れて、次の滝はどんなのかな?登れるかな?とワクワク感が止まらない。
あれよあれよという間に、名物の二股が現れた。すごいスケールだ!


ゴルジュ帯。ロープを出した

二股を超えると、ゴルジュ帯となる。落ちるとヤバいかな、と思う場所が続くため、安全第一の我々はここにきてロープを出し、慎重に歩を進めていく。
そしてこのゴルジュ帯、なにが厄介って高巻きの踏み跡が四方にあるのだ。動物の足跡も混ざっており、カオスの様相である。
そして痛恨のルートミスをしてしまい、ドツボの高巻きとなってしまった。


ギリギリの懸垂下降でルート復帰したところ。右の草つきの際を登る

目の前の対岸に正規ルートのペンキ跡が見えるのだが、横目に見ながらひたすら藪をこぐ。懸垂ができる立ち木を見つけ、そこから沢へ復帰。40mロープでギリギリ降りることができた。ホッと一息。


滝をよくよくみると、ほらルートあるじゃないか

この高巻きの後も、迷い込むこと数回。しかし、滝や周囲をきちんと見渡すと、ルートは明瞭だし、滝のホールドもしっかりしているではないか。
なぜか今回の山行はしょうもないルートミスをしてしまう。おそらく、こういう時に事故は起きるのだ。お互い確かめ合いながら、しっかりルート選択しなきゃいけないね、と二人で反省しきり。

超がつくほどの人気沢であり、グレードも一般的に易しいと言われている米子沢だが、残念ながら事故も多発している。決して侮ってはいけない。


癒しのナメ。

ゴルジュ帯を抜けると、ここからは天国のナメが始まる。
これこれ!このナメこそ米子沢!と心が沸き立つも、入渓時間が遅かったのと、高巻きで時間をとられてしまったため、お日様は西の空へ沈みかけており、ここで本日はタイムアウト。今夜は天気が崩れることはない予報だが、念のため増水時の避難ルートだけは確認して、沢ヨコでビバーク。マットと寝袋だけ敷いて、夜風に吹かれて眠りについた。
夜中、ふと目が覚めて寝袋から覗いた夜空は静謐さに包まれていた。流れる雲は淡く、空気はどこまでも澄んでいた。一泊したおかげで、これほど美しい場所に長くいられたことは幸せだと思っておこう。

■9/15(日)

15日は午後から天気が崩れる予報だ。なるべく早めに巻機山山頂へ到達してしまいたい。
朝一の沢はキンと冷えていてとても気持ちが良い。昨日の猛暑と打って変わって快適な遡行の始まりだ。


そろそろ詰め?と思うも、滝が現れること数回

さぁさぁ、米子沢名物の天国のナメ&詰めを楽しもうじゃないか!と意気込むも、意外と小滝が続く。


今度こそ詰め?

いや、また滝。何回も癒しの渓相に騙され登る

小滝とナメが連続して現れる。詰めはまだかな~、と言っている間に・・・


ついに天国の詰め。美しい

源頭はとても静か。この先で脱渓し稜線に向かう

ついに山頂へ続く天国の詰めとなった。
大河の一滴を生み出す源流からは、巻機の美しい山容が一望できた。この壮大な景観は、山頂に詰める沢登りならではのご褒美だ。

天気が崩れる直前の、一時の晴天。
初秋の高い空の下、真っ直ぐに伸びる山頂への一本道。

さぁ、あの山頂へ。もう一息だ。


巻機山山頂から

ギリギリのタイミングで天気がもってくれた。
山頂からは360度のパノラマだ。

「ほら、あれが谷川の稜線でないかい?」
「あれが平標かな?いつ行けるかね、西ゼン」
「ていうか、この前行った俎嵓はどれだ??」

巻機からは、私たちがハマっている谷川連峰が良く見渡せた。
大好きな山域を、新たな山から違う角度で見てみる。とても楽しいひとときだ。

今回も良い山だった。無事に楽しめたことに感謝してハイタッチ。

避難小屋で大休憩し、のんびりと下山を開始した。駐車場に着いた途端にポツリポツリと降り始め、片付けをしているといつしか本降りになっていた。
巻機はすっぽりと雨雲の中。今年の夏は雨が異常に少なかった。きっと恵みの雨となって、大きなブナの木々も、動物たちも喜んでいることだろう。


日本酒王国・新潟の銘酒ラインナップがずらり。まさにパラダイス!

かんぱ~い!

さて。居酒屋コンビの我々が、大人しくそのまま関西に帰ることなどありえない。なにせここは酒処・新潟。雲上が天国なら、下界は王国だ。(⇒コレ言いたかったw!)
長岡で一泊して、日本酒ナイト!
新潟の銘酒(越の鶴、吉乃川、八海山…)と郷土料理(十全茄子の浅漬が超美味)に酔いしれ、翌日も四合瓶、新米、米菓を買い漁り、ホクホク気分でまた9時間かけて、北陸道を南下していくのであった。

 

遊びのMVPアイテム

ポリゴンUL ジャケット&パンツ

標高2000メートル付近、大岩の上に寝袋を広げるだけの沢中ビバーク。
無防備な夜を優しく包んでくれたのが、癒しの宿泊装備として持参したこの上下でした。
濡れた沢ウエアを脱いで、ふんわりドライな「ポリゴンULジャケット&パンツ」をまとった途端、上機嫌! 夜風にさらされても十分温かく、岩上乾杯タイムが楽しめました。
上下で330g(女性用Mサイズ)という軽さ、水や夜露で湿っても保温性を大きく損ねない特長も、沢やビバークのお供にぴったり!

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執筆者:eコマース課 中山 喜久子

入社年:2015年

大阪生まれ。ニュージーランドをバックパッキングしている時にTramping(トレッキングの意)と出合い、山に傾倒。最近は着物にも興味津々で、山や海に行かない日は着物で落語会や社寺に出没。

執筆者:マテリアル開発課 田中 由希子

入社年:2015年

京都生まれ。同期の中山と、アウトドア&アルコールに勤しむ日々を送り、社内の愛称(?)は、居酒屋山行コンビ。写真は中山が着つけてくれた浴衣で、京都の夏祭り(盆踊りしながら日本酒飲み放題!)ではっちゃけるご機嫌な一コマ。着物ラブの中山に感化されて、最近少―し着物に興味がわいてきた。そうだ、そういえば私の故郷は京都だった。着物きて京都へ行こう。

※自然の中でアクティビティを行うためには、十分な装備、知識、経験が必要です。事前の準備を徹底したうえで、安全に注意してお楽しみください。

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