入社初年度の夏休み、何かやらねばという焦燥に駆られて目をつけたのが北海道にある日高山脈。ヤブ漕ぎ、ヒグマ、ダニ等々の冒険要素と共にエキゾチックな響きの山名が並び、いつか行こうと常々考えていた山域であり、特にカムイエクウチカウシ山(以下カムエク)は名前から力強さと山深さを感じさせ、長く憧れていた。この夏、同日入社の半澤と共にようやく足を踏み入れることが叶った。
1日目:田中執筆
舞鶴より新日本海フェリーに乗船し、いざ北海道へ。
ギリギリで参加が決まった同行者の半澤はフェリーのチケットがとれず、満員の新幹線で立った状態のまま神戸から北海道入りするとのこと。彼の気合に感動しつつ無事現地合流できた。
札内川ヒュッテよりスタート。天気は芳しくなく、半澤との話題は天候悪化により札内川の水位が上昇し、脱出できなくなるのではという悲観的なものがメインである。
直前の天気予報から水位を予想し、そのような事態になる可能性は低いと判断し、勇んで出発したものの、直後にヒグマの糞と思われる物体を発見。我々の緊張感は大いに高まり、これはただならぬ冒険が始まったなぁと危機感を共有した。
水位が上昇すると笑いごとでは済まなくなるため、緊張感のあるスタートであった。
八の沢出合までは巻き道がたくさん。歩きやすくて良い。なんだか大きいサイズの植物が多い。
渡渉もあり。腿くらいの深さのため、沢靴とトレッキングポール装備がおすすめ。
エゾサンショウウオらしき生き物。ため池にたくさんいた。
八の沢に入ってからは川幅が札内川本流沿いより少し狭くなる。登山道が無いとはいえ、ピンクテープが豊富にあるため安心。だが、このルートは本質的には沢登りであり、沢靴での移動がメインとなる。基本的にフェルトソールの沢靴を履いて、稜線歩き用に重い登山靴を別に持ってきたが、これは装備選択ミスであった。ラバーソールの沢靴のみで行動すれば、装備をもっと軽量化できたはずだった。この装備が後々体力を奪っていくこととなる。
目指す先には細い沢。なんだか想像していたよりも山々が深い。緊張してきたぞ。
本流の横を見ると凄まじい地形が現れる。現実離れした情景に、しばし見惚れる。
楽しく沢登りを続けるが、突然道が険しくなったりする。そんな時は周囲を見渡すと、巻き道に誘導してくれるテープが存在しているため、周囲をよく確認しながら登るのが良いだろう。見落としても沢沿いに行動していれば迷うことはないが、沢登りの難易度が上がり、進退に窮することになるため、テープに従うのが吉であった。
心強いピンクテープ。ここで過信しすぎたせいか、下りの時に偽テープにだまされ、ギリギリの状況に追い込まれることになる。
沢靴推奨。同行者はなぜか登山靴オンリー。渡渉のたびに靴を脱いでいたが、転倒してズブ濡れにしていた。
ようやく晴れ間が現れる。初めてみる山々にテンションは上がっていたが、肉体が付いていかない。若い同行者はスイスイ歩いており、荷物と年齢の重みを足で感じた。
太陽が出始めて暑くなってきたこともあり、沢伝いにガンガン登る。小さい滝などもあるため、飽きることはない。水も冷たくて気持ちよく、良い気分だ。しばし歩くと八の沢カールに到着。
ヒグマの楽園となっているという話を聞いていたので、よーく周囲を確認。先行者がおり、石碑のあたりでしばし歓談。カムエク山頂はガスに包まれており、何も見えなかったとのこと。
ピラミッド峰
地形図を見た時から素晴らしい山であることはわかっていたが、実際に見るとその美しい山容が非常に印象的。良い山があれば登らねばならないわけだが、その巨大で威圧的な雰囲気に気持ちが折れる。おとなしくカムエク山頂へ向かう。
しかし、カムエク山頂も遠い!写真は疲れ切って腰が曲がり、強風とザックの重さに負けて今にも座り込みそうなところをトレッキングポールと根性で必死に支えて牛歩戦術によりじわじわ登る私の姿。
フェルトソールだと稜線は歩きづらく、泥に足を取られ続ける。それでも頑張って登ることで、ようやく山頂に辿り着くことができた。
2日目:半澤執筆
夜に寝袋の中で目を覚ますと地面が揺れていることに気が付いた。
初めは地震かと思ったのだが、すぐにヒグマの足音だと悟った。お守りの熊スプレーを握りしめて無事を祈っていると、いつの間にか朝を迎えていた。下山後、ヒグマが夜行性であると知った。
夏とは思えないほど静かな山頂
カムエクの植物たち
山頂からは広ーーーい日高山脈の姿が一望できた。カムエクは幌尻岳に次いで日高山脈第2位の高峰。エサオマントッタベツ岳への稜線や、当初計画していたコイカクシュサツナイ岳への稜線が、朝日に照らされてキラリと輝いていた。
八ノ沢カール(二回目)
八ノ沢カールには、かの有名な福岡大学ワンダーフォーゲル部のヒグマ事故を悼んだ慰霊碑が建てられていた。
慰霊碑
昨日と同じ道ではなく、ピンクテープの付いた隣の沢から下山してみることに。
地形図の情報から、三股付近で合流できると予想していたが、あと一歩のところで大滝に阻まれてしまった。
大滝(三股の中では左股)
滝の途中までクライムダウンしたり、背丈よりも高い藪を漕いで高巻きを試みたりと、色々と試したが滝の下降は断念。田中が持参したゴージュロープを頼りに尾根を乗り越え、もとの道へと復帰した。
困った時のお助けロープ
その後は長い長い沢歩きと林道歩きをこなして無事に登山口へ。
「美味しいご飯が食べたい!」と中札内村の焼肉屋へ立ち寄ったのだが、ここがまさかの核心だった。山盛りの肉、野菜、海鮮、そして米(2~3合?)を前にあえなく敗退。
北海道のスケール感に圧倒されっぱなしの夏休みだった。
フラッド®ラッシュ足袋ソックス
沢歩きからの稜線歩きということで、足が濡れた状態のまま行動することが多い今回のような山行では大活躍。蒸れないし、濡れていてもさほど不快ではないこの靴下のおかげでストレスなく歩くことができた。
(田中)
ドラウト®クアッドロングスリーブ
定番だが使い勝手の良いTシャツ。今回の山行でも濡れる機会は多かったが、乾きが速く、適度なハリもあるため、生地が肌に張り付かず快適に過ごすことができた。洗濯後の乾燥も簡単。
(半澤)
執筆者:カスタマーサービス課 田中 優行
入社年:2024年
当初はカムエク~コイカクシュサツナイ岳までの縦走を予定していたが、計画に対して体力と気力が追随せず、己の力不足を感じる。年齢のせいにしようとするも、社内には自分より年上にもかかわらず100マイルレースを完走している人もいるため「まだまだいける」と自分を鼓舞して日々努力することにした。
執筆者:生産管理課 半澤 凌平
入社年:2024年
学生時代には縦走登山や沢登り、クライミングを中心に活動。自由かつ刺激的な登山が好みで、バリエーションルートをメインに楽しんでいる。現在の目標は運転免許を取ること。
※自然の中でアクティビティを行うためには、十分な装備、知識、経験が必要です。事前の準備を徹底したうえで、安全に注意してお楽しみください。