DRY LAYERING ドライを重ねる 5レイヤリング

投稿者: 片岡 美菜 撮影者:片岡、菊池

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スタッフの遊び記録
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下界でも、山の上でも、常に考えていることは【いかにしてうまいメシと酒を楽しむか】ということ。
我々の山行でもっとも重要なのはどの山に登るかではない、山でなにを食べるか(呑むか)、である。
そんな執拗なまでの食い意地と吞兵衛精神ゆえに、今回の山行もザックは食料と酒でいっぱい。新年早々ザックの重さを嘆きつつ、大好きな山域である南アルプスに向かった。

■アクティビティ日:2025年1月3日~1月5日

今回目指すのは愛してやまない南アルプスの中でも“女王”と称される仙丈ヶ岳である。
2年前の夏、鳳凰三山~早川尾根を縦走した時、アサヨ峰から朝日とともに眺めた女王の美しい姿にすっかり見とれてしまった記憶がある。あの頂に立ちたい。

10日間の冬休み。年越しはそれぞれ地元で過ごし、新年明けて1月2日、関東に帰省していた相方 菊池と北海道に帰省していた私は松本空港で合流した。
松本のスーパーで買い出しを終え、翌日の山行に備えて車の中でシュラフに潜り眠る。


パッキングした3日分の食料。我々の辞書に軽量化という文字はない。

1日目

仙丈ケ岳を登るルートはいくつかあるが、今回は山頂より北西方向に伸びる地蔵尾根をたどる。標高差・距離ともに長めなルートだ。

まだ日が昇らない6時前、寒さとザックの重さにうめきながら行動開始。
ひたすら樹林帯の緩やかな登りが続く。
他の山域と比べるといつも南アルプスは人が少ないのだが、さすがの正月休み、何組かの登山客とすれ違った。

時折木々の隙間から見える中央アルプスが疲れを癒やしてくれる。


今夜のおかず ネギを背負って眺むは中央アルプス

冬晴れの気持ちいい気候、雪もよく締まって歩きやすいこともあり、この日は想定より早く目的の松峯小屋に到着した。

時刻はまだ昼前。
明日の長い行程を思うともう少し標高を上げておきたいところではあるが…ザックの中に忍ばせた食料と日本酒のことで既に頭はいっぱいだ。ああ早く飲みたい。

顔を見合わせる。
「今日はこんなもんでいんじゃね?」と心の中に飼っているギャルの声が思わず口から出てしまう。

ということでまだまだ日の高いうちに本日の行程は終了。いそいそと宴会の準備だ。
さっそくザックから大量の食材を取り出し調理を開始する。今宵は鴨鍋だ。


まるごとキャベツを豪快にカット

雪を溶かしてお湯を沸かし、担ぎ上げた大量の野菜と待望の鴨肉を投入する。
たちまちテントの中は鴨鍋のおいしい湯気でいっぱいになる。


鴨鍋が大優勝

うまーーー!
鴨肉の脂のさわやかな甘みがじゅわっと口いっぱいに広がる。 ザックのサイドポケットに差し込まれ今日一日の行動を共にした長ネギは、トロトロに溶けて肉汁と絡まり、これまた絶妙なハーモニーを奏でる。 鴨肉と鶏だんごからしみだす旨味たっぷりの出汁は、厳冬期の冬山で冷え切った体を芯まで温めてくれた。
たっぷり体を動かしたあとだからか、はたまた自然の中で食べるからなのか、山で作って食べるメシは下界で食べるそれより圧倒的にうまくなる。 これが我々が重たいザックを背負ってまで、山での食事にこだわる所以である。
締めのうどんもあっという間にたいらげ、翌朝の雑炊用にわずかなスープを鍋に残して大満足なディナーとなった。

2日目

山の朝は早い。
午前3時半、アラームの音とともに筋肉痛でバキバキの体を無理やり起こす。
さあ、朝食の準備だ。
寝る前に炊いて、湯たんぽ代わりにシュラフに潜り込ませていたアルファ米を鴨鍋の残ったスープ放り込み、雑炊の完成だ。


映えないあさごはん、うまいので良し

昨日の優雅な鴨鍋の余韻に浸りつつ腹ごしらえをし、いざ出発。

毎度のことながら冬山の朝は本当につらい。
体温で温まったテントシューズを嫌々脱ぎ、震えながらテントから這い出し、凍った靴に足をつっこみ、これまたガチガチに凍った靴紐を結び、キンキンに冷えたアイゼンを装着する。
このときばかりはいつも決まって山に来たことを後悔する。今すぐ帰りたい。
「寒すぎてまじ意味分かんないんだけど~」心の中のギャルが文句を言う。

今日の行程は長い。泊まり装備をデポできるとはいえ昨日と比べると2倍くらいの行動時間になりそうだ。


夜明け前のヘッテン行動

時折膝くらいまでの軽めのラッセルがあるものの、大量の食料や酒、テントやシュラフといった装備がなくなったザックは軽い。黙々と高度を上げていく。


樹氷がきれい

なんとか森林限界までたどり着き、ストックをピッケルに持ち替える。
天気は良いが風がとても強く、肌を出しているとあっという間に凍傷になりそうだ。
慌ててバラクラバを被る。


あと少しだ~

これまでとても遠く感じていた山頂が、いよいよ目の前に迫る。
ようやくラストスパートだ。


ここまで長かった

たどり着いたピークはやはりなかなかの強風だったが、北岳、聖岳といった南アルプスの山々、そして富士山も望むことができた。


必死の自撮り


奥に見えるのは富士山

長かった登りもここまで。あまりの寒さに、歓喜する間もなく数枚写真をとってすぐに下山開始。


正面に甲斐駒ヶ岳を眺めながら下山

登りが長いなら下りはもっと長く感じるもの。
自分の疲れに気づかぬよう、心を無にして歩いていると、前方でなにやらモフモフしたものがうごめいていることに気づく。
目を凝らしてみると…


きゃわたんなオトモダチが登場

テンだ!
「やば~~めんこい!(北海道弁)」思わず心の中のギャル(どさんこver)が叫ぶ。
フワフワな冬毛がかわいい。連れて帰りたい…。
我々に警戒しつつも木に登って何かを食べたり、雪原をぴょこぴょこ走り回ったりと目が離せない。
しばらくその場にたたずみ、見とれていた。


ほなさいなら~

無事テントに戻り、今日のディナーの準備だ。
今夜は鶏白湯タンミョン。平たく太い春雨“タンミョン”が入った鍋で、ここ数年の韓国ブームも相まって巷のギャルたちの間でちょっとしたブームになっているらしい。
買い出しに立ち寄った松本のスーパーにて、その見慣れない字面に惹かれ、今回のメニューに即採用となった。


タンミョン、なんともギャルい響きである

このタンミョンなるもの、ちゅるちゅると喉越しが良く、噛めばモチモチと適度に弾力のあり、食感が非常に愉快だ。 さかんに湯気をたてる鶏白湯スープは、鶏ガラのふくよかな香りをテントの中いっぱいに広げている。 アツアツのスープとともにタンミョンをすすると、ポカポカしたものが食道を通って冷えた内臓に落ち、体全体にしみわたっていくような感覚だ。
気分はすっかり韓国ギャルである。
(ちなみにこのタンミョン、翌朝も食べようと一晩寝かせておいたら、スープを吸ってブヨブヨになっていた。ギャルの寿命は儚し。)

タンミョン鍋で腹を満たしたところで、今夜は無事に登頂した祝い酒が待ち構えている。
ザックの中から麓のコンビニで買った地酒と焼網を取り出し、酒の肴にエイヒレを焼く。このときばかりは心のギャルはいったんおやすみしてもらい、新たに心におじさんを召喚するのであった。


仙丈ケ岳で地酒『仙醸』をいただく 酒の肴はいつだってエイヒレ

エイヒレが焼けるパチパチという音と香ばしい香りがテントの中いっぱいに充満する。
食べ頃になったエイヒレをつまみ、酒をすする。
あ゛~うめえ~とおじさんが唸る。

時刻は間もなく日が暮れようかというところ。
なんて贅沢な時間だろうか。毎度のことながら我々はこのために山に登っているのだと実感し、おじさんマインドのまま眠りについた。

3日目

翌朝も天気は快晴。
食料と酒がなくなったザックは行きと比べてだいぶ軽くなっていた。
下山メシはどこへ行こうか、何食べようか、なんて相変わらず食い意地を張った話をしながら長い道のりを下り、南アルプスの女王に別れを告げた。


登りの道のりより絶対に長い気がするのが下山というもの

さあ、次は何を食べようか、じゃなかった、どこを登ろうか。
最高のメシと酒を求め、次の山行計画を練るのであった。

 

遊びのMVPアイテム

ドラウト®サーモ

冬のベースレイヤーといえばウール一択だったが、今回初めて着用してみてあまりの心地よさに驚いた。行動時はたっぷり汗をかいてもべたつき感が少なくドライで快適、停滞時はキュプラの柔らかな風合いによる着心地の良さゆえにこれまた快適。ウールのチクチク感が苦手な方や厚手だけどすぐ乾くベースレイヤーをお探しの方には自信をもっておすすめしたい一着だ。

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執筆者:
マテリアル開発課 片岡美菜(写真左)
販売促進営業課 菊池奏子(写真右)

入社年:2022年

入社3か月違いのほぼ同期。テントでの食と酒は妥協しないのが我々のポリシー。目的地までの運転担当は菊池、山行中の食担当は片岡という非常にアンバランス(不平等?)なタスク分配で、日本全国の山や海、時には海外へとさまよい歩いている。

※自然の中でアクティビティを行うためには、十分な装備、知識、経験が必要です。事前の準備を徹底したうえで、安全に注意してお楽しみください。

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