もう着心地を我慢しない
アウターシェルの着心地が悪い最大の理由は、生地が硬く、伸びないことにあります。
ファイントラックはこの課題に注目し、ストレッチ性を重視した防水透湿素材「エバーブレス®」を開発。ストレスフリーの動きやすさと軽量設計が実現しました。
段差で足を大きく上げたり上半身をひねったりしても、あの突っ張り感はもうありません。
もも上げや腕ふり時に突っ張ることなく、岩場やクサリ場などでの大きな動きにも追従する異次元のストレッチ性を備えている為、身体にかかるストレスが軽減され、パフォーマンスを最大限に発揮できます。また、体のラインに沿ったシルエットは、裾のもたつきや風によるバタつきを抑えるため、レインウェアとしてだけではなく、ウィンドシェルとしても活用できます。
エバーブレス®はポリカーボネート系ポリウレタンの多孔質膜を採用し、最高レベルの防水透湿性と耐久性を兼ね備えた全く新しいオリジナル防水透湿素材です。加水分解による劣化スピードが極めて遅く、高い性能を長く維持できるのが特長です。
紫外線や、水、高温にさらされる過酷な環境下を想定して人工的に曝露し、耐水圧の推移を計測。エバーブレス®の性能低下は緩やかで性能維持に優れている。(実着用による性能低下の度合いを示すものではありません)
基本的に高いにこしたことはありません。しかし実用上より重要なのは、その性能が落ちないことです。フィールドでの使用や洗濯に伴って、ウエアの耐水圧は徐々に低下していきます。たとえ初期耐水圧が高くても、機能低下が早い素材では意味がありません。エバーブレス®は、この機能低下のスピードが遅いことが最大の長所で、新品時の防水性・透湿性が長く保たれます。ちなみに、手足をつくなど瞬間的に圧力がかかる状況で、水の浸入を防ぐのに必要な耐水圧は一般的に10,000mm以上といわれています。エバーブレス®はその2倍の耐水圧20,000mm以上を備え、それを長期にわたって維持する設計をしています。
「実着用における実感」を重視した透湿性は最高レベルの数値を備え、雨などで濡れても高い透湿性を維持します。さらに運動量が多いときにこもる熱気は、リンクベント®を開放することで、瞬時に排出できます。
※エバーブレス®透湿性:10,000g/m2・24hr(A-1法)
※エバーブレス®3D透湿性:6,000g/m2・24hr(A-1法)
エバーブレス®は湿潤時でも、乾燥時の透湿性を約83%も維持するが、一般的な防水透湿素材では約20%しか維持しない。このことから、エバーブレス®は水に濡れた状態でも優れた透湿性能を発揮することを証明。
※熱板(疑似体温)の上に、濡れた濾紙を置き、その上に試験サンプルを載せて濾紙の重量変化を測定。
finetrackでは、透湿性能の評価方法として、JIS L 1099 A-1法を採用し、すべてファブリック(製品の状態)で試験をおこなっています。これは空気層から空気層に透湿した水蒸気量を測定するもので、最も実着用時に近い方法といえます。A-1法による透湿性能値としては、10,000g/m2・24hrという数字はトップクラスの数値です。
透湿性能の測定方法として一般によく使われるのはJIS L1099 B-1法。膜をはさんで水から酢酸カリウム溶液への透湿値を測定するもので、膜が直接水に接するため(特に親水性の高いポリウレタン無孔質膜ではかなり)高い値が出ます※。エバーブレス®では、膜が吸水する短時間の値から評価するB-1法ではなく、「実着用における実感」を重視してあえてA-1法による表示を採用しています。
ゴワゴワなシェルはもういらない。-L5開発の背景-
長い急峻な道のりを前にアウターシェルを身につけるとき、その一着に何を求めるでしょうか。雨風が吹きつける岩稜を進むとき、アウターシェルが貢献できるのは、防水・透湿、それだけでしょうか…
防水・透湿はあたりまえ。さらなる山岳リスクの軽減のため、エバーブレス®が目指したのはゴワゴワなシェルからの脱却。「動きやすさ」の追求でした。
ゴム引きやアクリル引き、塩ビ引きの素材が主流だった40年以上前のアウターシェルはゴワゴワで、透湿性などはなく、ただ水を防ぐだけでした。動きにくく、さらにウエア内は蒸れて不快以外の何物でもなく、雨を凌ぐためだけに仕方なく着るアウターシェルでした。
そのあとに登場してきたのが、水は通さないけど蒸気は通すという孔を多数もった防水透湿素材でした。これによって、ウエア内の蒸れは格段によくなりましたが、着心地はまだゴワゴワなままで、天候が悪化すれば着るといったようなものでした。
そのゴワゴワなアウターシェルを着たまま、ただでさえ緊張を強いられるナイフリッジやクサリ場を通過したりするのは、リスクが高まります。長期縦走などのロングディスタンスでは身体にストレスが掛かり、疲労も蓄積されやすくなってしまいます。
雨が降りやすい日本ではアウターシェルの出番は多くなるため、大きな身体の動作にも追従する動きやすさは欠かせない機能です。
また、アウターシェルは雨を凌ぐためだけではなく、風から身を防いだり、身体を保温したりするのに有効なため、積極的に着ることができる快適な着心地も重要です。
防水透湿メンブレンの主な素材には多孔質系ポリウレタンと無孔質系ポリウレタン、多孔質系フッ素膜があります。ポリウレタンは、いずれも豊かなストレッチ性と透湿性を備えていますが、加水分解による経年劣化に弱いという弱点があります。湿潤環境の日本では、経年劣化への耐性も大きな課題です。さらに無孔質系ポリウレタンには膜強度にも難点があります。一方、フッ素系の防水透湿膜は加水分解への耐性は備えますが、ストレッチ性はほとんどありません。どれも一長一短。そこで、ファイントラックは理想的なアウターシェル創りヘの第一歩として「劣化しにくく、ストレッチする防水透湿メンブレン」という新たな開発に取り組みました。
まず、豊かなストレッチ性と耐久性を実現するための素材として「ポリカーボネート系多孔質ポリウレタン」に辿り着きました。しかし、一番の課題はフィールドでの実着用を想定した防水透湿性を実現することです。それを大きく左右するのがメンブレンの厚みと孔の大きさや数。厚過ぎると重たくなり、孔が大きすぎると水が通ってしまう。幾度となくトライアル&エラーを繰り返してその絶妙なバランスを導き出し、「エバーブレス®メンブレン」を開発することができました。
つぎに、貼り合わせる生地の開発に着手。「メンブレン(防水透湿膜)」に生地を貼り合わせることで「ファブリック(生地)」にして、アウターシェルへと仕立て上げますが、貼り合わせる生地次第でその性格は大きく変わります。「メンブレン」がストレッチするのに、貼り合わせる生地がストレッチしなければ、結果としてストレッチしない「ファブリック」になってしまうからです。
目指したアウターシェルは「エバーブレス®メンブレン」の豊かなストレッチ性を最大限活かしながらも、フィールドでしっかり使える強度と携行しやすい軽さ、それに快適な着心地も兼ね備えたモノ。なん通りもの表地と裏地の組み合わせのなかから、それぞれのアクティビティに理想的な「エバーブレス®ファブリック」を追求。ストレッチする布帛の表地と丸編みニットの裏地で張り合わせたオールラウンドタイプの「エバーブレス®」。ストレッチする布帛の表地にエバーブレス®をコーティングして、その上に3Dドットをプリントした特殊2.5レイヤー構造で軽量コンパクトタイプの「エバーブレス®3D」を完成させました。
「エバーブレス®ファブリック」は、たしかな耐水圧と持続し続ける透湿性を備え、驚異的なストレッチ性と加水分解への耐久性も兼ね備えています。これは、世界No.1の技術をもった繊維メーカーと、フィールドでの経験をもったファイントラックが二人三脚のような開発体制だからこそ実現できた、これまでにない全く新しい防水透湿素材です。
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