雪山にどっぷり浸かるためには、テント泊が最適です。ただ、雪山の夜はものすごく寒く、3シーズン用テントでは寒さをしのぎきれず、震えながら日の出を待ち望む、なんてことにもなりかねません。そんなつらい一夜を過ごすことなく、暖かいテント内でしっかりと快眠できる雪山テント泊のコツをご紹介します。
「白銀の世界」「銀嶺」など雪山を表現する言葉はどれも美しいものです。その言葉通りに雪化粧をまとった山はきれいで、ピリッと冷えて澄んだ空気は眺望がきき、静寂が登山者を包み込む雪山の世界。スノーモンスター、エビの尻尾、シュカブラなど雪が織りなす造形美は、雪山を登った登山者たちへのごほうびです。
日帰り登山でも十分に楽しめる雪山ですが、山奥にもう一歩入ることができれば、まだ見ぬ景色に出会えるかもしれません。雪山でテント泊をして、その一歩を踏み出しましょう。
雪山の夜が寒いのは、簡単に想像できます。雪山登山の入門でもある冬の八ヶ岳では、夜間の最低気温が-15℃から-20℃ほどにもなります。
そんな寒さから体温を守るために、厚手の防寒着やテントシューズなど保温力の高いウエアを着たり、温かい食べ物や飲み物をとって体を温めたりするのも、ひとつの手段です。
しかし、なによりもまず住環境を整えることが大事なのが、雪山でのテント泊。
街中の建築物は、断熱性(保温性)が重視されます。二重サッシや二重窓にしたり、性能の高い断熱材を使用したりと、内と外を仕切る素材の断熱性を高めて熱の移動を防ぐことで、外気温の影響を受けにくい快適な生活環境が作れるためです。山中のテントも同じで、断熱性を高めればテント内が快適になり、暖かい環境で眠れるようになります。
テントの断熱性を高めるポイントは3つ。
POINT
ここからは、各ポイントの断熱テクニックをご紹介します。
雪山ではテントを雪の上に張るため、床から冷気が伝わってきます。足元が冷えていると、防寒着で上半身をいくら保温していても、体がなかなか温まりません。まずは、床からの冷気をしっかり防ぎましょう。
テント内部の床にシートを1枚敷くだけで、床冷えを軽減できます。アルミがラミネートされたテントマットが理想ですが、エマージェンシーシートでも効果があります。アルミ面をテント内部に向けて敷くと、自分の体温の熱反射を生かすこともできます。断熱性の高さ重視ならテントマット、軽さ重視ならエマージェンシーシートがおすすめです。
スリーピングマットにも冬用があります。ウエアを夏山用から雪山用に衣替えするように、スリーピングマットも断熱性の高いタイプに替えましょう。アルミをラミネートしてより断熱性を高めたモデルもあります。メーカーによっては断熱性の度合いをR値で表示していますので、ぜひ参考にしてください。
※R値は、スリーピングマットがどのくらい熱を逃さないか(断熱性)を評価する指標。R値が高いほど断熱性が高いマットといえる。現在はほとんどのマットメーカーが採用していて、「ASTM F3340-18規格」によるもの。雪山での目安はR値4.0以上。
冬に保温力の高いウエアに衣替えするように、テントも衣替えして断熱性を高めましょう。
3シーズンのフライシートは、テント内の換気などが考えられて、フライシートと地面の間にも通気のための隙間があるため、雪山で使うと寒いばかり。
そこで、テントをすっぽりと覆える形の冬用のスノーフライ(外張り)に替えましょう。密閉性を高められる形のため、人の体温などで暖まった熱はテント内部にこもりやすくなり、風も吹き込んでこないため、寒い外気温の影響を受けづらくなります。
スノーフライには、雪面とテントの隙間を埋めるスノースカートが備わっていて、この上に雪を乗せることで裾部分からの風雪の吹き込みも防げます。また、スノーフライと雪面をしっかりと固定することが出来るため耐風性も向上します。
トンネルのような吹き流しタイプの入口は、テント内への風雪や冷気の侵入を防ぎ、ファスナータイプと違って凍り付きの心配もありません。
※スノーフライは厳冬期や標高の高い雪山など、雨の降らないことが想定される状況で耐風性と保温性を高めるためのフライシートです。一般的に防水性を備えていないため、残雪期、標高の低い山など、雨やみぞれが降ることが想定される時期やフィールドでの使用は推奨していません。
空気の層(デッドエア)は、高い断熱性があります。雪山登山ではウエアをレイヤリングして、空気の層も重ねることで保温力を高めて、体温を守ります。テントも同じようにレイヤリングすることで、断熱性を高めることができます。
ウインターライナー(内張り)は、断熱性の高い空気の層を増やせる有効な手段です。外気の影響を受けにくいテント内部に空気の層を作ることで、テント内をより暖かく保てます。
ウィンターライナーは、テント内のループに吊り下げるタイプが多く、簡単に装着できます。雪上フィールドではテントを素早く設営する必要があるため、ウィンターライナーを装着したままテントを収納しておくと便利。テントの容量が少し増えるので大きめの収納袋を用意すると、スムーズに収納できます。
3シーズン用のスリーピングバッグから、冬用に変えると保温力を高められます。さらに、スリーピングバッグカバーをその上からレイヤリングすると、断熱性をアップできます。登山中の肌寒いときに、アウターシェルを1枚羽織るだけで寒さが和らぐように、保温効果を得られます。
雪山のテントの内壁には結露も発生しやすく、スリーピングバッグを濡らさないためにも、スリーピングバッグカバーの装着をおすすめします。
テントを雪上にそのまま立てるだけでは、風にさらされてしまい、冷気がどんどん入ってきます。
「風速1m/Sで体感温度が1℃下がる」ともいわれるように、体感温度は風による影響を受けやすいもの。そこで、テントの周りに雪の壁を作りましょう。スノーソーやスコップなどで、ブロックに切り出した雪を積み上げたり、雪面を掘り下げたりすると、外環境とテントを隔てられて風を除けられ、影響を最小限にすることができます。夏には想像もできないような強風も防げるため、安全性も高められます。
※雪山での作業はグローブを濡らしてしまうリスクがあるため、防水性の高いオーバーグローブなどを使うと作業に集中できます。雪面を掘り下げて設営する場合は風向きや場所を考慮しながら、雪の吹き溜まりになってテントが埋もれないように注意しましょう。
テントの断熱性を高めたうえで熱源を確保できると、テント内でより暖かく過ごせるようになります。
人の平均体温は36〜37度ほどで、とてもあたたかい熱源です。そのため、1人よりも2人以上でひとつのテントを使用すると、テント内が暖まりやすくなります。ただし、生活空間を共有することになるため、複数人で使用してもストレスのない空間をもつテントを選びましょう。
日本の冬の伝統でもある湯たんぽを山でも活用しましょう。バーナー、クッカー、ウォーターキャリーがあれば簡単に作ることができます。
雪を溶かして水を確保するときに、そのまま火にかけ続けてお湯にします。そのお湯をウォーターキャリーに注ぐだけ。翌日には、そのまま調理や飲用水として使えるため、一石二鳥です。
※火事や一酸化炭素中毒の恐れがあるため、テント内での火器の使用は厳禁です。ウォーターキャリーの耐熱温度を確かめてから使用し、中のお湯がこぼれ出ないようにしっかり蓋をしめましょう。お湯を入れたウォーターキャリーはウエアなどで包んでおくと低温やけどを予防できます。
重い雪山装備やラッセルなどで、体力を消耗しやすい雪山のテント泊山行。疲労を回復させるためには、しっかりとした睡眠は欠かせません。雪山の寒さに眠れない夜では、翌日が辛くなるだけでなく、低体温症や遭難のリスクも高まります。
美しくも厳しい白銀の世界にもう一歩足を踏み入れて、まだ見たことのない荘厳な雪の景色に出会うためにも、断熱性を高めた暖かいテントで快眠しましょう。
最高レベルの軽量性、剛性、空間の広さを実現した自立式ダブルウォールの山岳テントです。スノーフライや内張りなど豊富なオプションで夏山から雪山まであらゆる山岳環境に対応できます。
カミナ®ドームの機能
カミナ®ドームのカミナ®ドームのご購入
カミナ®ドーム保温性と耐風性を大幅に向上させることができ、カミナ®ドームを雪山での使用に適応させるフライシートです。
カミナ®ドーム スノーフライのご購入
カミナ®ドーム スノーフライ軽量コンパクトながら、テント内の温度を約3℃※上げられる薄手のライナーです。
※当社試験データによる
カミナ®ドーム ウィンターライナーのご購入
カミナ®ドーム ウィンターライナーシート状の立体保温素材「ファインポリゴン®」を封入することで、テント内の温度を約10℃※上げられるエクスペディション仕様のライナーです。
※当社試験データによる
カミナ®ドーム ウィンターライナーEXPのご購入
カミナ®ドーム ウィンターライナーEXP