冬山・雪山で感じる足先の冷えは、初心者だけでなく経験を積んだ登山者にとっても、コレという解決方法が見つかりにくい共通の悩みです。
「体は寒くないのに足先だけ冷たい」
「足の指がまるで凍ったかのようにキンキン」
という経験は、冬の山を歩いた人なら誰しもあると思います。
足先の冷えは、関節・筋肉の動きを硬くし、歩きにくさを生みます。また、寝袋の中でなかなか寝付けない、山を楽しむ心の余裕をなくすなど、登山の楽しみと安全の大敵になります。
冷えを通り越して「痛い」「しびれる」状態にまでなると、凍傷リスクにもつながってしまう。足先の冷えは、決して気合いで乗り切れるものではありません。
そこで今回は、悩ましい足先の冷えに効果ありの山の知識、そして新発想のソックスシステムをご紹介します。
ひとことに「足先の冷え」と言っても、理由は多岐に渡ります。
理由と解決ポイントを押さえていけば、冷えを遠ざけて冬山や雪山登山を楽しむ方法が見えてきます。
冬の登山道は、凍っていたり、雪が積もっていたり、霜が降りていたりします。日陰も多く、非常に低温環境にあります。その上を登山靴で歩き続けていると、靴底からじわりじわりと冷えが忍び寄ってきます。
加えて、風や外気の影響も受けます。低い気温や寒風にさらされ続けると、登山靴はぐんぐん冷えていきます。
ほかに金属の装着も冷えの原因となります。雪山で滑り止めのアイゼン(スパイク)をつけていると、雪で冷え切った金属からの伝導で、登山靴全体がキーンと冷たくなっていき、次第に足先を冷やします。金属の熱伝導率は、水や氷の数十倍。地面からの冷えよりも強烈です。 こんな風に、足先はとても過酷な環境の中に置かれています。
POINT
冬山の過酷な環境の影響を受けにくい登山靴を選ぶことで、足先の冷えはある程度防ぐことができます。
夏山用の登山靴(3シーズン用)は、通気性の高いメッシュなどの素材が使われています。一方、雪山用の登山靴は、保温性や水の浸入を防ぐ防水性が重視されます。
足首からの冷気や雪の浸入を防ぐハイカットのもの、甲(アッパー)や底の材質が厚いもの、保温材の入ったものなど、行く山の環境に合わせて、登山靴の保温機能を見直しましょう。
くれぐれもガマンは禁物。痛み、感覚の麻痺といった凍傷の初期症状に陥らないよう、備えを大切に!
ソックスの重ねばきは、昔からとてもメジャーな防寒対策のひとつです。保温性を向上させるために、多くの登山者がソックスを重ねばきしています。しかし、方法を誤ると逆効果でツライ山行になってしまいます。
やってしまいがちなのは、重ねたソックスが分厚くなりすぎ、登山靴の中で足を圧迫してしまうこと。そのせいで、歩いているうちに血流が滞り、冷えを引き起こすのです。
同じように、靴ひもの締めすぎ、アイゼンのバンド(テープ)の締めすぎも、圧迫からくる足先の冷えにつながります。締め付けることは凍傷リスクを高めるので注意が必要です。
POINT
冬山・雪山登山を想定して作られた厚手の高機能ソックスは、1枚でも底のかさ高さが十分で保温性に優れ、基本は重ねなくていいように作られています。重ねるとしても薄手のソックスと組み合わせて2枚までが適当です。
靴内に適度な隙間があることで温かい空気の層ができ、ソックス本来の保温性も活きてきます(使用するソックスの厚みを考慮して登山靴を選ぶことも大切です)。
寒い冬山の環境で足先が冷える理由のひとつには、身体の生理作用があります。
寒さを感じると身体は、体内の熱を逃がすまいと、抹消の血管を収縮させます。そうして、血液を身体の中心部へと集中させます。結果、末端の血流が少なくなって、冷えやすくなるのです。これが凍傷を引き起こす原因にもなります。
POINT
末端の冷えを予防したいなら、身体全体の保温を怠らないことが肝心です。また、冷えを感じはじめたら血行促進を意識し、末端の血流を取り戻しましょう。単純ですが、登山靴の中で足指をグーパーするのは、末端に血流を取り戻すのに一定の効果があります。また、温かい飲み物を飲んだりして、身体の中から温め、血流を促すことで、足先を冷やさない効果が期待できます。
以外と見落としなのが、足の蒸れによる冷えです。
こんな経験はないでしょうか。
登山靴を脱いだときにソックスの足先から湯気があがる。
山小屋やテントの床に、濡れたソックスで足跡がついている。
おなかや背中と同じように、足にも多くの汗腺があります。気温の低い冬でも、歩くと必ず足は汗をかきます。
登山用のソックスには吸汗速乾性が備わっていますが、登山靴の密閉性が影響して、速乾性が発揮しきれないのも事実。保温性の高い冬用の登山靴だとなおさらです。そのため足は、常に蒸れにさらされています。
汗と水蒸気が低温下で冷やされ、足先が凍える。これが、蒸れによる足先の冷えのメカニズムです。休憩中や、一日の行動を終えた山小屋やテントの中で足先がキーンとし始めるのはこのためです。
凍傷リスクにつながる深刻な汗冷えに陥らないよう、早めに手を打つのが得策です。
POINT
休憩中に汗を拭きとることができればいいのですが、登山中に登山靴やソックスをいちいち脱いでいられません。そのため冬場は必ず、ソックスが濡れることを想定して、ソックスの着替えを持参しましょう。一日の行動を終えた後や休息時に、乾いた新しいソックスにはき替えることで、汗冷えを防ぐのです。
また登山用具の進化によって、ソックスをはき続けながら汗冷えを軽減する新発想のシステムも生まれています。これについては後ほど紹介します。
最近は、靴底やソックスに貼り付けるタイプの小さな使い捨てカイロが人気です。
山でも使っている人を見かけますが、使い方を誤ると、先に記した「汗冷え」を引き起こす原因になります。
足先の冷え度合いにもよりますが、温めすぎて必要以上に発汗してしまわないように、登山行動中の使用は避け、一日の行動を終えた後の休息時や非常時の備えとして持参するのがスマートなカイロの使い方と言えそうです。
昔から多くの登山者を悩ませてきた足先の「汗冷え」を、新発想で軽減するシステムがあるのでご紹介します。
登山用ソックスの新しい重ねばき方法で、中にはくアンダーソックスに撥水性があるのが特長です。
撥水アンダーソックスは、汗を肌から引き離す特長があり、上に重ねた吸汗ソックスに汗を逃がします。登山靴という密閉空間の中で、足先をドライに保って汗冷えを抑えます。
これは、登山ウエアで取り入れられている方法(撥水アンダーウエアと吸汗速乾ウエアの重ね着)のソックス版です。昔から多くの登山者を悩ませてきた足先の冷えを新発想で解決する方法として、登山者やスキー愛好家にも注目されています。
※撥水アンダーウエアを用いた防寒対策については、こちらの記事に詳しく書いています。
ベテラン登山者は知っている、低予算から始める失敗なしの防寒
足先の冷えを生むさまざまな理由を、その解決ポイントとともに見てきました。
理由によって解決方法もさまざまでしたが、それだけ現代の登山用具は進化し、解決の選択肢が増えている、とも言い換えられます。
参考までに、便利な登山用具がなかった時代から登山を続けているベテランfinetrackスタッフに、足先の冷えをどうやって克服してきたかを聞いてみました。
革の登山靴の中で毛糸のソックスを2枚重ねる、が当時山岳部の基本でした。それでも1日歩くと登山靴の革に雪が浸みてきて足先は常に冷たくなる。ひたすら足指のグーパーを繰り返してしのいだ。いまの登山靴のように保温材など入っていなくて、いまから思えば辛かった・・・
唐辛子を刻んでソックスの中に入れると温かいという民間療法のような方法を本当にやっている仲間もいた。少しは効果があったみたいだけど・・・
冬場にランナーが使う、血行促進用の軟膏を塗っていた。唐辛子成分のカプサイシンが含まれているもので、苦し紛れに塗っていたなぁ
いまではどのスタッフも、保温性に優れた登山靴やウエア選び、そして撥水アンダーソックスのレイヤリング効果で、当時のような苦労をすることなく冬山・雪山を登れています。
登山用具やウエアの選び方、使い方、そして自分に合った足先の防寒対策を身につけて、寒さに震えることなく冬山を楽しみたいですね!
登山中にツラい足先の冷えやベタつき。汗が原因で起きる足の不快感を軽減するために生まれたメッシュの撥水アンダーソックスです。
吸汗速乾ソックスの下に1枚はくだけ。finetrack独自の撥水技術で、汗冷え、ベタつき感、浸水による濡れ冷えの解消に効果があります。
ドライレイヤー®インナーソックスの機能
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